レポート

2025年10月の景気動向調査

国内景気は5年ぶりに5カ月連続で改善 ~ 株高と設備投資が下支え、今後は新政権の経済政策が焦点に ~

■調査結果のポイント

  1. 2025年10月の景気DIは前月比0.5ポイント増の43.9となり、5カ月連続で改善した。国内景気は、新政権への期待などを受けた株高を追い風に、設備投資の高まりやメーカーの生産拡大を含め、幅広い業種で景況感が持ち直す動きが続いた。今後の国内景気は、一進一退を繰り返しつつ、緩やかな持ち直し基調をたどると見込まれる。
  2. 調査開始以降で景況感が最高となった『農・林・水産』や、『製造』『不動産』など9業界で改善した。規模別では、「中小企業」「小規模企業」のどちらも改善し、2025年で最高水準となった。一方で、「大企業」は悪化、中小企業との規模間格差はやや縮小した。地域別では、10地域中9地域が改善、不動産・建設需要が地域経済を後押しした。
  3. [今月のトピックス]農・林・水産業界の景況感について企業からは、農畜産物の価格上昇を好材料と捉える声など複数寄せられた。

< 2025年10月の動向 : 改善傾向 >

2025年10月の景気DIは43.9となり前月から0.5ポイント増加した。2020年10月以来5年ぶりに5カ月連続で改善。国内景気は、新政権への期待などを受けた株高を追い風に、幅広い業種で景況感が持ち直す動きが続いた。

10月は、日経平均株価が5万円を突破して連日過去最高値を更新し、為替レートはおおむね150円台で推移した。デジタル関連の設備投資意欲は強く、自動車の生産も堅調だった。さらに、農畜産物の価格上昇が生産者心理を下支えし、公共工事の発注増もプラスに働いた。一方で、原材料や物流にかかるコスト負担の増加や人手不足は、改善の勢いをやや抑える要因となった。

< 今後の見通し : 緩やかに持ち直し >

今後は、高市政権の経済政策に関心が集まり、ガソリン等の暫定税率の廃止など物価高対策による実質購買力の回復が焦点となる。底堅い旅行需要は関連業種に波及し、半導体を含むAI関連の設備投資も追い風となり得る。他方、財政拡大にともなう長期金利の上昇や日銀の政策金利の引き上げ、為替レートの変動、トランプ関税の影響には注視が必要だ。人手不足もなお重い課題である。

景気は一進一退を繰り返しつつ、緩やかな持ち直し基調をたどると見込まれる。

業界別:10業界中9業界で改善、『農・林・水産』の景況感は過去最高に

  • 調査開始以降で景況感が最高となった『農・林・水産』や、『製造』『不動産』など9業界で改善した。農産物の価格上昇や、好調な一部自動車メーカーがけん引役となり関連する業種へと波及した。加えて、前月と同様に不動産や建設関連の需要が景気を押し上げたほか、日経平均株価が史上初の5万円超えを記録するなど、良好な投資環境も景気の下支えとなった。

  • 『農・林・水産』(51.8)…前月比5.2ポイント増。2カ月ぶりに改善。鶏卵価格の上昇や米価の高止まりなどは生産業者にとってプラスに作用した。加えて、鶏肉などの食肉価格の上昇も景気を後押しした。また、国内外での国産農産物への関心の高まりも追い風となり、底堅い需要から2004年12月(50.7)以来20年10カ月ぶりに50を超え、過去最高となった。

  • 『製造』(40.3)…同1.1ポイント増。2カ月ぶりに改善。「輸送用機械・器具製造」(同2.0ポイント増)は、一部メーカーの好調な販売にけん引されたほか、新モデルの投入なども好材料となった。「自動車用のゴム部品の売り上げが順調」(工業用ゴム製品製造)との声が聞かれる「化学品製造」(同0. 9ポイント増)も2カ月ぶりに回復。加えて、「機械製造」(同2.5ポイント増)も設備投資の再開や自動化ニーズを背景に持ち直すなど、12業種中10業種で改善した。
    他方、卸売や小売も低迷する「繊維・繊維製品・服飾品製造」(同2.2ポイント減)は、例年以上の残暑から秋物販売の遅れが響き4カ月ぶりに悪化した。

  • 『不動産』(49.9)…同0.6ポイント増。3カ月連続で改善。引き続き首都圏など大都市における取引は活況を呈しており、商業施設の賑わいなども景気を押し上げた。また、実需に加え「投資物件に対するファンドなどの購買意欲も高い」(建物売買)との声も寄せられている。さらに、昨今の物価上昇にともない、契約更新時の賃料引き上げが実現するなど価格交渉の成果も表れてきた。

  • 『サービス』(48.6)…同0.1ポイント増。2カ月連続で改善。紅葉の時期と重なった「旅館・ホテル」(同2.0ポイント増)は、3カ月連続で上向いた。「情報サービス」(同0.2ポイント減)は人材確保など厳しい面もありながら、IT関連への投資意欲が高く50台を維持した。
    他方、「仕入れ価格の高騰で利潤が取れない」(一般食堂)といった声が複数聞かれる「飲食店」(同1.5ポイント減)は、2カ月連続で落ち込んだ。「娯楽サービス」(同1.6ポイント減)は、天候不順のためキャンセル発生が各所で響き2カ月ぶりに下向いた。

規模別:「中小企業」「小規模企業」が改善、2025年で最高水準に

  • 「中小企業」「小規模企業」のどちらも改善し、2025年で最高水準となった。設備投資の再開にともない、『建設』や『製造』が上向き、景況感を押し上げる要因となった。一方で、「大企業」は悪化し、中小企業との規模間格差はやや縮小した。

  • 「大企業」(48.0)…前月比0.2ポイント減。6カ月ぶりに悪化。『不動産』はDIが50台後半と高水準ながらも、「価格に落ち着き感が出てきた」などのコメントが寄せられ、景況感の押し下げ要因となった。『サービス』も2カ月ぶりに悪化した。
  • 「中小企業」(43.1)…同0.6ポイント増。2カ月ぶりに改善。『製造』では、「大企業の設備投資が始まった」との声が聞かれた「機械製造」など、12業種中10業種が上向き、全体をけん引した。それに連動して『卸売』も好調を維持した。
  • 「小規模企業」(42.2)…同0.7ポイント増。2カ月ぶりに改善。米価の高止まりや鶏卵価格の上昇により『農・林・水産』が大幅に改善した。設備の老朽化対応にともなう設備投資の再開などで好調な『建設』も全体を押し上げた。

地域別:10地域中9地域が改善、不動産・建設需要が地域経済を後押し

  • 10地域中『近畿』『四国』『九州』など9地域が改善、『北海道』のみ悪化した。都道府県別では、改善が30、悪化が17だった。不動産や建設関連の需要が地域経済の改善を後押しした。
  • 『近畿』(43.3)…前月比0.8ポイント増。2カ月ぶりに改善。インバウンドなど人流の増加にともなう商業地・観光地の活況を受け、『不動産』(51.5)は2018年5月以来の高水準となった。13日に閉幕した大阪・関西万博の効果をあげる声も聞かれた。
  • 『九州』(45.5)…同0.9ポイント増。2カ月連続で改善。「化学品卸売」や「紙類・文具・書籍卸売」など『卸売』が大きく寄与した。また、高い購買意欲がみられる『不動産』は同5.2ポイント改善し、50台に迫った。
  • 『北海道』(43.4)…同1.0ポイント減。3カ月ぶりに悪化も、10地域中3位を維持した。水揚げ量の不足が影響した飲食関連や、「機械・器具卸売」を含む『卸売』の低迷が響いた。
    一方で、堅調な『不動産』などが下支え役となった。

    【今月のトピックス】
    農・林・水産業界の景況感

  • 企業からは、農畜産物の価格上昇を好材料と捉える声や、関連商材の売上増加に寄与しているとの声が複数寄せられた
  • 2025年における農畜産物の価格は、米の小売価格ほか、鶏卵や食肉などで高止まり傾向がみられる



    【調査先企業の属性】

1.調査対象(2万5,111社、有効回答企業1万427社、回答率41.5%)

2.調査事項

  • 景況感(現在)および先行きに対する見通し
  • 経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について

3.調査時期・方法

2025年10月20日~10月31日(インターネット調査)

【景気動向指数(景気DI)について】

■TDB景気動向調査の目的および調査項目

全国企業の景気判断を総合した指標。国内景気の実態把握を目的として、2002年5月から調査を開始。景気判断や企業収益、設備投資意欲、雇用環境など企業活動全般に関する項目について全国2万6千社以上を対象に実施している月次統計調査(ビジネス・サーベイ)である。

■調査先企業の選定

全国全業種、全規模を対象とし、調査協力の承諾が得られた企業を調査先としている。

■DI算出方法
DI(ディフュージョン・インデックス〈Diffusion Index〉)は、企業による7段階の判断に、それぞれ以下の点数を与え、これらを各選択区分の回答数に乗じて算出している。

景気DIは、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる(小数点第2位を四捨五入)。また、企業規模の大小に基づくウェイト付けは行っておらず、「1社1票」で算出している。

■企業規模区分

企業の多様性が増すなか、資本金や従業員数だけでは計りきれない実態の把握を目的に中小企業基本法に準拠し、全国売上高ランキングデータを加え下記の通り区分している。

■景気予測DI

景気予測DIは、ARIMAモデルと構造方程式モデルの結果をForecast Combinationの手法で算出。破線は予測値の幅(予測区間)を示している

地域別はこちら】

北海道(道東・日胆)

東海(岐阜・静岡・愛知・三重)

東北(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)

近畿(滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)

北関東(茨城・栃木・群馬・山梨・長野)

中国(鳥取・島根・岡山・広島・山口)

南関東(埼玉・千葉・東京・神奈川)

四国(徳島・香川・愛媛・高知)

北陸(新潟・富山・石川・福井)

九州(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)


【TDB景気動向調査ご協力企業さま募集】

当調査は全国で2万6千社を超える企業にご協力いただいている、月次の景況調査では国内最大の統計調査です。
ご協力いただける企業さまは、当調査の主旨をご一読のうえ、ご登録フォームから必要事項をご入力してください。

※ご協力企業さまは当調査の「各種DI推移表」や「企業の声一覧」などをご覧いただけます(特典の詳細はこちら

次回発表日は12月3日(水)13時30分を予定しております。

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