レポート

TDB景気動向調査2025年10月(近畿ブロック:滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)

■近畿ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.3

0.8

2カ月ぶりに改善、高市政権誕生で「奈良」が急上昇

・概況

AI(人工知能)や環境・エネルギーなどの先端分野は好調との声が目立ち、新政権発足による企業マインドの改善もあって景気DIは上向いた。しかしながら、企業活動には物価や人件費の上昇、円安によるコストアップが重くのしかかる。価格転嫁に伴う値上げ続きで、消費者も生活防衛意識を強めている。先行きに関しても強めの指標が出たが、米国の関税政策の影響に加え、「中国のレアアース輸出規制の影響で原材料の確保が困難」(電気機械製造、兵庫県)といった不透明感も強いままだ。景気は当面、足踏み状態が続くだろう。

・景気DI

『近畿』は前月比0.8ポイント増の43.3と、2カ月ぶりに改善した。大阪・関西万博が閉幕しインバウンド動向に変化が生じるなか、奈良県出身の高市首相が誕生。景気回復への期待感が企業マインドに波及し、改善幅は全国(43.9、同0.5ポイント増)を上回った。府県別では「奈良」「滋賀」など4府県が改善した。

・規模別DI

「大企業」「中小企業」(前月比各0.8ポイント増)とも2カ月ぶりに改善。とりわけ、「大企業」は2024年12月(49.4)以来の水準となった。「中小企業」との格差は6.9ポイントと前月から変動はないものの、依然として高い水準にある。なお、「小規模企業」(同0.1ポイント増)は3カ月連続で改善した。

・業界別DI

新政権発足もあり10業界中7業界が改善した。とりわけ、国土強靭化に向けて公共事業増加が期待される『建設』はコロナ5類移行後の最高を更新。『不動産』も2カ月連続で50を超えるなど、企業マインドが改善した側面が大きい。『サービス』も「飲食店」「情報サービス」は悪化したが、全体では改善した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(前月比0.4ポイント増)は2カ月ぶりに、「6カ月後」(同1.1ポイント増)と「1年後」(同1.4ポイント増)は3カ月連続で改善した。府県別では「京都」「和歌山」以外の4府県、業界別では『農・林・水産』『運輸・倉庫』以外の8業界、規模別では全規模で、それぞれ先行き3指標が改善した。

■大阪府

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.8

0.7

2カ月ぶりに改善、政治安定期待が支え

・概況

多くの観光客を集めた大阪・関西万博が閉幕したことで、人手不足には多少なりとも緩和の兆しが出てきている。政治の面では、当地を地盤とする政党が連立政権入りを果たしたことで、中小企業支援を含む政策進展への期待感が景況感を押し上げた。ただし、足元では物価上昇を受けた消費の伸び悩みが続いており、企業も十分に価格転嫁を進められずにコストアップが経営の重荷になっている。先行きに関しても、インバウンド動向の変化、中国経済減速といった不確実性の高い要素が散見され、当面、景気は足踏み状態での推移となろう。

・景気DI

「大阪」は前月比0.7ポイント増の43.8と、2カ月ぶりに改善した。10月13日に大阪・関西万博は閉幕したものの、政治安定への期待感で持ちこたえた。全国(43.9、同0.5ポイント増)よりも改善幅は大きく、格差(大阪-全国)は▲0.1ポイントまで縮小。都道府県別順位は前月の16位から変わらず。

・規模別DI

「大企業」(前月比0.7ポイント増)、「中小企業」(同0.6ポイント増)ともに2カ月ぶりに改善した。10カ月ぶりに50の大台を超えた「大企業」に対し、「中小企業」は低水準が続く。両者の規模間格差は3カ月連続で7ポイント台と、引き続き高い水準にある。なお、「小規模企業」は3カ月連続で改善した。

・業界別DI

9業界中7業界が改善。戸建て住宅以外の需要は底堅い『建設』が3カ月連続で改善したほか、『製造』は2カ月連続で改善して7カ月ぶりに40台に回復した。『サービス』は判断の分かれ目の50を超える水準をキープしているが、「飲食店」(30.0)がコロナ5類移行後の最低に。『運輸・倉庫』は2カ月連続で悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(前月比0.1ポイント増)は2カ月ぶりに、「6カ月後」(同0.5ポイント増)と「1年後」(同0.9ポイント増)は3カ月連続で、それぞれ改善した。ただし、規模別にみると「大企業」は先行き3指標のうち改善したのは「1年後」のみ。米国による対中関税政策の動向を注視している様子がうかがえる。

■京都府

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.8

-0.3

2カ月連続の悪化、業界間格差は依然として大きい

・概況

「京都」の景気DIは2カ月連続で悪化した。中国の景気減速などを背景に「製造業全体が落ち込んでいる」(製造)との声が強まっている。実質賃金の低下から節約志向が高まり、住宅や衣料品などの販売不振が続く。原材料価格や人件費の高騰が続く一方で価格転嫁は十分に進んでおらず、「中小企業」「小規模企業」は低迷。11月は秋の行楽シーズンを迎え、円安基調が観光業界に追い風となることが期待されるが、円安傾向が続けばコストアップ要因となることから、中長期的には景況感の停滞が続くだろう。

・景気DI

「京都」の景気DIは、前月比0.3ポイント減の41.8に悪化した。『近畿』の順位は5位(前月3位)、都道府県別の順位は31位(同23位)となり、いずれも後退した。『全国』(43.9)との格差は▲2.1ポイント(前月は▲1.3ポイント)に拡大、11カ月連続で『全国』を下回った。

・規模別DI

「大企業」(47.5、前月50.5)、「中小企業」(40.8、同40.6)、「小規模企業」(39.1、同39.1)となった。「中小企業」が改善した一方、「大企業」が悪化し、規模間格差は前月比▲3.2ポイントの6.7に縮小した。小規模企業」は6カ月連続で40を下回った。

・業界別DI

10業界中4業界が改善、4業界が悪化した。『製造』は8カ月連続、『卸売』は12カ月連続で40を下回り、『運輸・倉庫』(36.7)は6カ月ぶりの40割れとなった。一方、『不動産』は59.3と高水準が続き、業界間格差は大きい。

・先行き見通しDI

「3カ月後」44.5(前月44.5)、「6カ月後」45.3(同44.6)、「1年後」45.5(同44.7)となり、「6カ月後」「1年後」は前月を上回った。『不動産』は全指標で改善、『運輸・倉庫』は全指標で悪化見通し。規模別では「中小企業」は全期間で改善見通し。

■兵庫県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.3

1.3

2カ月連続の改善

・概況

「兵庫」の景気DIは2カ月連続の改善。前月まで6カ月連続で前年同月を下回る水準であったが、10月は前年同月と同水準となった。「万博特需の恩恵があった」(製造)、「観光シーズンに伴う効果が大きい」(小売)などレジャー・観光など一部好調な業態がある一方、「人件費、燃料費の高騰で消費が落ち込んでいる」(サービス)など物価高と低迷する個人消費へのコメントも多く、高市政権の経済政策を期待する声も目立った。引き続き、日本の経済政策動向と冬物・年末商戦への個人消費動向が注目される。

・景気DI

「兵庫」の景気DIは前月比1.3ポイント増の43.3で2カ月連続の改善となった。前年同月比では前月まで6カ月連続で下回っていたが今月は同水準。全国順位は21位。『全国』は前月比0.5ポイント増の43.9で5カ月連続の改善、『近畿』は同0.8ポイント増の43.3で2カ月ぶりの改善となった。

・規模別DI

「大企業」は前月比3.7ポイント増の50.0で2カ月ぶりの改善となり7カ月ぶりの50台回復。「中小企業」は同1.0ポイント増の42.4、うち「小規模企業」は同0.1ポイント増の40.2となった。規模間格差は7.6ポイント(前月4.9ポイント)と前月比で2.7ポイントの拡大となった。

・業界別DI

10業界中6業界で改善となった。『運輸・倉庫』は前月比3.7ポイント増の48.9で3カ月連続の改善。『卸売』は、同1.4ポイント増の41.4で4カ月ぶりの改善だった。他方、『小売』は同1.2ポイント減の38.1で2カ月ぶりの悪化で唯一の30台だった。

・先行き見通しDI

3カ月後は前月比1.0ポイント増、6カ月後は同1.9ポイント増、1年後は同2.2ポイント増と全指標で改善。業界別では『金融』『建設』『不動産』『卸売』『運輸・倉庫』の5業界で全指標改善となった。規模別では「大企業」「中小企業」で全指標改善となった。

■滋賀県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.5

2.7

2カ月ぶりに改善し、近畿ブロック内順位は1位となる

・概況

「滋賀」の景気DIは前月比2.7ポイント改善した。企業からは「インボイス制度により個人事業者の廃業が増え、人手不足が加速しそう」(専門サービス業)といった声がある一方、「観光シーズンに入りお土産販売が好調」(専門商品小売業)、「高市政権に対する期待が大きい」(運輸・倉庫業)などの声が聞かれ、政権交代による景気マインドの回復が見受けられるが、しばらくは動向について注意したい。

・景気DI

「滋賀」の景気DIは44.5と前月比2.7ポイント改善した。業界別では改善が4業界、悪化が2業界、横ばいが3業界となった。近畿ブロック内の2府4県別順位は1位まで良化したほか、全国においては10位(前年同月は9位)となった。

・規模別DI

「大企業」が46.4と前月比5.4ポイント、「中小企業」が44.2と同2.3ポイント、「小規模企業」は45.7と同1.8ポイントそれぞれ改善した。また、「大企業」は2カ月ぶりに「中小企業(うち小規模含む)」を上回った。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界中4業界で改善、3業界で前月比横ばい、2業界で悪化した。『卸売』『運輸・倉庫』が悪化した一方で、『小売』『建設』が大幅に良化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が45.7(前月43.6)、「6カ月後」が45.2(前月43.4)、「1年後」が46.9(前月43.6)だった。高市早苗氏の首相就任により、滋賀県における成長投資やデジタル化推進で製造業・観光業の活性化が見込まれ、インフラ整備や人材育成も加速するとみられるが、財源確保や物価高対策には注意を要する。

■奈良県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.8

5.3

前月比5.3ポイント改善

・概況

奈良の景気DIは前月から5.3ポイント改善し43.8となった。米国の関税問題や日本国内の政策方針など懸念点はある一方で、県内観光客の増加に伴うインバウンド消費が観光業界周辺の受注回復に寄与しており、好感を持たれている。また、今後は、アジア圏など海外市場への輸出の増加も見込んでおり、中期的な売上高の増加、収益率の改善が期待されている。

・景気DI

奈良の景気DIは前月から5.3ポイント改善し43.8となった。都道府県別順位は16位と前年同月順位の39位から上昇。近畿では京都、和歌山が前月と比較し悪化したが大阪、兵庫、滋賀、奈良は前月から改善した。近畿では前月比0.8ポイント改善し43.3、全国でも同比0.5ポイント改善し43.9となった。

・規模別DI

「大企業」は45.2と前月比5.6ポイント、「中小企業」は43.7と同5.3ポイント、「小規模」は40.9と同0.8ポイント、それぞれ改善した。「大企業」「中小企業」「小規模」のいずれも改善しているが、規模間格差(「大企業-中小企業」)は1.5と前月の1.2から0.3ポイント拡大している。

・業界別DI

『不動産』(36.7)は前月比6.6ポイント悪化したが、『建設』(52.1)は前月比9.7ポイント、『卸売』(53.0)は同17.8ポイント、『運輸・倉庫』(58.3)は同25.0ポイント、『サービス』(45.8)は同4.1ポイント、『製造』(37.8)は同1.0ポイント改善した。

・先行き見通しDI

3カ月後は44.6(前月40.6)、6カ月後は45.6(同40.6)、1年後は45.1(同42.4)で、すべての期間で改善見通しとなった。特に6カ月後は前月比5.0ポイント上昇しており、景気改善を見込んでいる企業が多いことを示している。

■和歌山県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.8

-2.3

4か月ぶりに悪化

・概況

「和歌山」は前月比2.3ポイント減の40.8と4カ月ぶりに悪化した。県内の新設住宅着工戸数は建築基準法改正による建築確認申請の厳格化の影響や戸建て価格の上昇等もあって、4月~9月の上半期で1,755戸(前年比307戸減)と建設業の景況感悪化の要因なった。また、公共工事は累計金額では概ね前年並みながらも件数では3%前後の減少となっている。一方で、県外に商流を持つ企業では業績が堅調な企業もあり、企業ごとに創意工夫の努力や新規開拓力の差もあって、当面は一進一退の動向が続く可能性が高い。

・景気DI

「和歌山」は、前月比で2.3ポイント減の40.8と4カ月ぶりに悪化した。前月まで3カ月連続で持ち直しの動きが出てきていたものの力強さを欠き、『全国』(43.9)と『近畿』(43.3)を下回った。

・規模別DI

「大企業」が前月比7.5ポイント減の44.4、「中小企業」が同1.7ポイント減の40.3と「大企業」「中小企業」ともに悪化し、とりわけ「大企業」の悪化幅が大きかった。

・業界別DI

『運輸・倉庫』(50.0)、『卸売』(40.5)は前月比で改善した一方で、『建設』(46.4)、『サービス』(39.6)、『製造』(37.3)、『小売』(29.2)が前月比で悪化し、悪化業種では低水準が目立った。

・先行き見通しDI

3カ月後が42.5(前月45.6)、6カ月後が44.0(同44.4)、1年後が45.3(同44.0)となった。1年後についてはやや改善をしたが、当面の景気動向に関してはやや保守的な見通しが多かった。

「近畿ブロック(2025年10月)」の詳細(近畿ブロック:滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)