レポート

TDB景気動向調査2025年10月(九州ブロック:福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)

■九州ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

45.5

0.9

2カ月連続で改善

・概況

『九州』の景気DIは、45.5と2カ月連続で改善した。企業からは「運賃値上げで、売上はUPしたが、2024年問題で、高速料金負担増、人件費負担増、加えて燃料費負担増があり、働いても利益が増えない」(長崎県、運輸・倉庫)などの声が聞かれる。DI50台は、業界別で『金融』『その他』、県別では「沖縄」のみ。原燃料高、人件費負担増に対し、価格転嫁も十分ではないが、インバウンド需要に加え、TSMC第二工場着工など期待材料もあり、当面、一進一体の推移が見込まれる。

・景気DI

『九州』(45.5、前月比0.9ポイント増)は2カ月連続で改善した。10業界中5業界、8県中4県で改善。『九州』8県中10位以内は4県。先行き見通しDIは「3カ月後」が3カ月ぶりに悪化したものの、「6カ月後」、「1年後」は3カ月連続で改善。ブロック別では8カ月連続で全国2位。

・規模別DI

「大企業」(47.6、前月比1.9ポイント減)は2カ月ぶりに悪化。「中小企業」(45.2、同1.3ポイント増)は2カ月ぶりに改善。31カ月連続で「大企業」が「中小企業」を上回ったが、規模間格差は前月から3.2ポイント縮小。「小規模企業」は44.3(同2.2ポイント増)と2カ月ぶりに改善。

・業界別DI

『建設』(48.5、前月比0.6ポイント減)など10業界中5業界で悪化したものの、『農・林・水産』(45.4、同5.9ポイント増)『金融』(50.0、同3.5ポイント増)など5業界で改善。DI50台は『金融』『その他』の2業界。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(47.0、前月比0.1ポイント減)は、3カ月ぶりに悪化したが、「6カ月後」(47.5、同0.7ポイント増)、「1年後」(47.7、同0.7ポイント増)は3カ月連続改善。業界別では『建設』『製造』が全指標悪化、『農・林・水産』『金融』『不動産』『卸売』『小売』『その他』が全指標改善した。

■福岡県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

45.8

1.4

3カ月ぶりの改善

・概況

「福岡」の景気DIは、個人消費などの伸び悩みなどはあるが、インバウンド需要や都市再開発事業などが追い風となり、、3カ月ぶりに改善した。企業からは「賃貸・売買ともに動きはあるが成約数が少ない」(不動産)などのコメントがある一方、「新首相の舵取りに期待して景気も良い方向に向かうと期待している」(卸売)などの声があった。物価の上昇などが多くの業界にマイナスとなっているものの、インバウンド効果などによって一部の業界は好調な推移を維持しており、今後も一進一退ながら改善も期待されよう。

・景気DI

「福岡」(45.8、前月比1.4ポイント増)は、3カ月ぶりの改善。業界別では、『建設』『運輸・倉庫』『サービス』の3業界で悪化した。『その他』は横ばい。『不動産』『製造』など6業界で改善。都道府県別順位は5位で前月(9位)からアップ。『九州』8県での順位は前月と同じ4位。

・規模別DI

「大企業」47.2(前月比2.5ポイント減)は2カ月ぶりの悪化。「中小企業」45.5(同2.1ポイント増)、「小規模企業」46.2(同4.7ポイント増)はいずれも3カ月ぶりに改善した。規模間格差は「大企業」が「中小企業」を1.7ポイント上回った。

・業界別DI

『その他』(50.0)は横ばい。『建設』(49.0、前月比1.0ポイント減)、『運輸・倉庫』(45.2、同4.8ポイント減)など3業界で悪化。『農・林・水産』(50.0、同16.7ポイント増)、『金融』(60.0、同10.0ポイント増)など6業界で改善した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(48.1、前月比1.1ポイント増)、「6カ月後」(48.9、同1.3ポイント増)、「1年後」(49.5、同1.4ポイント増)の全てで改善。業界別では、『農・林・水産』『金融』『不動産』『卸売』『小売』で3指標すべてが改善。『建設』『運輸・倉庫』ですべて悪化した。

■佐賀県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.3

-0.6

悪化と改善を繰り返し足踏み状態

・概況

「佐賀」の景気DIは43.3と前月より0.6ポイント悪化し、4月以降、改善と悪化を繰り返し、足踏み状態となっている。2025年の10カ月の内6カ月が悪化と負け越しており、『九州』の景気DIには追い付かず、『全国』の景気DIよりも下回る傾向となっている。業種別では改善もみられ、ここ2カ月は「中小企業」が「大企業」を上回っているものの、県内の消費や経済活動は鈍く、停滞感から後退局面に転じる懸念もみられ、今後の行方が注視される。

・景気DI

「佐賀」の景気DIは43.3と前月より0.6ポイント悪化した。この約半年間、改善と悪化を繰り返し、足踏み状態が続いている。九州地区では8県中4件が悪化し、「佐賀」の落ち幅は小さかったものの『全国』の43.9を下回り、「佐賀」の都道府県別順位は前月の11位から21位に後退した。

・規模別DI

「大企業」は42.4と前月と同値を維持したが、「中小企業」は43.6と前月より0.6ポイント悪化した。そのうち「小規模企業」では40.6と前月より4.8ポイントと大幅に落ち込んだことから規模間格差は▲1.2となり、2カ月連続でマイナスとなった。

・業界別DI

『運輸・倉庫』『サービス』は前月同値と堅調に推移し、『製造』『卸売』は改善がみられた。ただ、『建設』は政治の行く末や資材高など先行き不透明感が影響し前月より7.0ポイント、『小売』では一般消費の買い控えなどから同16.6ポイントと大幅に悪化し、全体を引き下げた。

・先行き見通しDI

「3か月後」は45.2(前月45.6)と前月より悪化したが、「6か月後」は46.4(同46.2)、「1年後」は45.8(同45.3)とわずかに改善した。年末年始の需要に比較して、年度末から新年度にかけての需要の高まりや次年度の景気回復に期待を寄せた結果とみられる。

■長崎県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.1

3.1

2カ月連続で改善

・概況

「長崎」の景気DIは前月比3.1ポイント増と2カ月連続で改善した。造船業を中心とした製造業や観光関連の業種は引き続き好景況感を維持している。また、「高市総理に期待する」(サービス業)など新政権へ期待する声も複数聞かれた。他方で物価高や最低賃金引き上げによる人件費の負担増加、さらには人口減少による市場縮小の懸念も聞かれた。「長崎」の景況感は、今後も各業界ともに外部環境に影響を受けながら、一進一退の状況が続くと見込まれる。

・景気DI

「長崎」の景気DIは前月比3.1ポイント増の44.1と2カ月連続で改善した。『九州』8県中、本県を含めて4県が改善し、さらに本県の改善幅が大きかったため、九州ブロック内順位は前月から順位を2つ上げて5位となった。都道府県別順位は前月の34位から23も上がり11位となった。

・規模別DI

「大企業」は前月比2.7ポイント減の36.7、「中小企業」は同3.7ポイント増の45.0、「中小企業」のうち「小規模企業」は同6.4ポイント増の45.5となった。「大企業」が悪化した一方、「中小企業」が改善したことで、規模間格差は前月比6.4ポイント拡大して▲8.3となった。

・業界別DI

前月から改善した業界は『建設』『不動産』『製造』『卸売』『小売』『運輸・倉庫』『サービス』の7業界と前月と同じ推移となった。とりわけ『小売』『運輸・倉庫』は前月から大幅に改善した。なお、悪化した業界はなかったが、『農・林・水産』『金融』は前月と同水準であった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」44.4(前月45.2、前月比0.8ポイント減)「6カ月後」44.3(同44.7、同0.4ポイント減)「1年後」45.0(同46.0、同1.0ポイント減)といずれも前月を下回った。業界別でみると『製造』『卸売』は先へ行くほど改善見通しだが、『建設』『小売』は逆に悪化見通しとなった。

■熊本県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

47.6

1.8

2カ月ぶりに改善

・概況

「熊本」の景気DIは前月比1.8ポイント増の47.6と2カ月ぶりに改善した。「収穫期が終わり昨年より収穫量・作柄ともに良い状況にあり米価の買い取り価格が高値となっている」(農・林・水産)など明るい話題が見られたが、「世帯数や飲食店の減少と原材料費の高騰」(小売)など引き続き不安を示す声は多い。日経平均株価が過去最高値を更新したが、暮らしの中でその恩恵は感じにくく、中小零細企業にとっては人件費や資材価格の上昇による負担が依然として大きな問題となっているため、景気は一進一退の状況が続くだろう。

・景気DI

「熊本」の景気DIは47.6で前月比1.8ポイント増と2カ月ぶりに改善した。また、『九州』(45.5)も前月比0.9ポイント増となり、「全国」(43.9)も同0.5ポイント増となった。なお、「熊本」の都道府県別順位は第2位(前月第5位、前年同月第3位)と前月から3ランク上がった。

・規模別DI

「大企業」の景気DIは56.1と前月から0.6ポイント減となったが、「中小企業」は46.7と同1.9ポイント増となった。27カ月連続で「大企業」が「中小企業」の景気DIを上回ったが、規模間格差(大企業-中小企業)に関しては「大企業」が悪化して「中小企業」が改善したため、差は9.4ポイントに縮まった。

・業界別DI

9業界中、改善した業界は『農・林・水産』『金融』『建設』『製造』『卸売』『サービス』の6業界となった。一方で悪化した業界は『不動産』『小売』の2業界となり、『運輸・倉庫』は横ばいだった。新たな政権が発足し、積極財政と緩和的な金融政策に対する期待値が高まり、改善した業界が多かった。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは「3カ月後」が48.0(前月47.7)、「6カ月後」は47.8(同47.7)、「1年後」は48.3(同47.4)となった。TSMC第2工場の着工が開始されたことにより、県内における半導体産業の集積が加速することへの期待感が高まり、いずれの指標においても前月から改善した。

■大分県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

46.6

-1.2

3カ月ぶりに悪化

・概況

10月はインバウンドによる観光需要が堅調であったほか、秋のイベントが多かったことから『サービス』のDIは前月に続き「50」を上回った。一方、物価上昇の影響から節約志向が高まり、自動車や生活用品等の販売は伸び悩み『小売』は悪化した。公共工事の発注量減少等から『建設』も悪化した。今後はガソリン暫定税率の廃止など景気の押上げ要因もあるが、米国の高関税政策など外需の悪化が景気の重荷であることに変わりはなく、中小・零細企業の先行き不透明感は変わらず、県内の景気動向は一進一退の状況が続くと予想される。

・景気DI

「大分」は前月比1.2ポイント減の46.6となり、3カ月ぶりに悪化した。全国順位は第4位(前月第2位・前年同月第2位)となり、前月と比べて低下した。判断の分かれ目となる「50」を10カ月連続で下回った。

・規模別DI

「大企業」は前月比2.1ポイント減の45.8となった。「中小企業」は同1.1ポイント減の46.7、「中小企業」のうち「小規模企業」は同2.6ポイント減の45.8となった。規模間格差は▲0.9となり、4カ月ぶりに「中小企業」が「大企業」を上回った。

・業界別DI

業界別では『製造』『卸売』が前月より改善した。『製造』は前月比3.6ポイント増の51.2となり、7カ月ぶりに「50」を上回った。一方で、『建設』『小売』『サービス』は前月より悪化した。特に『小売』は同7.2ポイント減の35.7となり、過去1年間で最も低い水準となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」49.2(前月51.3)、「6カ月後」49.2(同50.0)、「1年後」48.4(同48.9)となり、3指標とも前月から悪化し、「50」を下回った。業界別では、『製造』『サービス』が3指標ともに「50」を上回り、『建設』『卸売』『小売』『運輸・倉庫』は3指標ともに「50」を下回った。

■宮崎県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

39.4

-0.5

3カ月ぶりに悪化

・概況

「宮崎」の景気DIは39.4で3カ月ぶりに悪化した。10月は月の中旬に季節外れの記録的な暑さがあった一方、下旬には秋雨前線の影響で雨が降り、気温が下がった時期もあった。また9月と比べると連休が少なかったことや「物価の値上げで注文の数が極端に減った」(サービス・飲食店)などで人流が鈍化、来店客数が伸び悩んだようだ。一方で、「高市政権」に期待する意見が増え、「経済活性化に重点が置かれ現在の物価高にブレーキをかけてもらえる期待感がある」(サービス・人材派遣・紹介業)などの声があがった。

・景気DI

「宮崎」の景気DIは39.4で、前月比0.5ポイント減と3カ月ぶりに悪化した。『九州』(45.5)と比較して6.1ポイント減、全国(43.9)と比較しても4.5ポイント減となった。他県の景気改善もあり変動幅が小幅だった「宮崎」 の全国順位は前月の40位から42位と低迷した。

・規模別DI

「大企業」は53.3で前月比2.3ポイント減、「中小企業」は38.3で同0.9ポイント減となった。規模間格差(大企業-中小企業)は15.0となり、同1.4ポイント縮小した。「小規模企業」は33.9で同3.9ポイント減となり、規模別に見ても前月より悪化した。

・業界別DI

『製造』は35.2で前月比0.2ポイント増、『非製造』は40.0で同0.8ポイント減で『非製造』が悪化した。『製造』は「鉄鋼・非鉄・鉱業」が改善する一方で、「器械製造」が悪化、『非製造』は「医療・福祉・保健衛生」、「飲食料品小売」など改善する一方で「家具類小売」、「情報サービス」などが悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は39.6で前月比1.6ポイント減、「6カ月後」は42.8で同1.9ポイント増、「1年後」は43.7で同0.3ポイント増とした。『九州』の「3カ月後」、「6ヶ月後」、「1年後」、『全国』の「3カ月後」、「6ヶ月後」、「1年後」のいずれと比較しても、それらを下回った。

■鹿児島県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.1

1.1

2カ月ぶり改善

・概況

「鹿児島」の景気DIは43.1と2カ月ぶりの改善となった。企業からは「異常気象」や「物価高」、「人口減少」、「消費減退」といったキーワードが多く上がり、特に「仕入単価・人件費の高騰」に関連する不安・不満の声が多く聞かれる形となった。景況感において「どちらとも言えない」とする意見が多数を占めたことで、先行き見通しは改善が見られたものの、プラス要因の声は少なく、厳しい見方をする企業の声が多いことからも、今暫くは同様の推移が続くものと推察される。

・景気DI

「鹿児島」の景気DIは43.1と前月比1.1ポイント改善した。『九州』は0.9ポイント改善の45.5、『全国』は0.5ポイント改善となる43.9だった。全国的に改善が見られるなか、「鹿児島」の改善幅は平均値を上回ったが、都道府県別順位は前月から横ばいとなる24位とした。近時は悪化と改善を繰り返しており、一進一退の状況が続いている。

・規模別DI

「大企業」は前月比3.3ポイント悪化となる50.0となった一方、「中小企業」は同1.7ポイント改善の42.4、「中小企業」のうち「小規模企業」も41.4と同0.2ポイント改善した。「大企業」の悪化に対し「中小企業」の改善が進んだことで、規模間格差(大企業-中小企業)は5.0ポイント縮小した。

・業界別DI

改善は『農・林・水産』、『不動産』、『製造』、『卸売』、『運輸・倉庫』の5業界、横ばいは『金融』のみの1業界、『建設』、『小売』、『サービス』の3業界が悪化となった。前月悪化した5業界のうち4業界で改善となるなど、改善と悪化を繰り返す業界が多く、依然として一進一退の状況にあると言えよう。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は43.9と前月比1.8ポイントの悪化、「6カ月後」は44.7と同0.3ポイントの改善、「1年後」も同0.5ポイント改善の44.9となるなど、中長期では改善が目立つ形となった。前月は中長期での悪化が目立っていたなど、景気DI同様に先行きに対しても、不安定な状況が続いている。

■沖縄県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

53.3

-1.0

2カ月連続で悪化

・概況

「沖縄」の景気DIは、2カ月連続で悪化した。観光業、公共投資が引き続き好調との声はあるが、物価高による買い控えの影響や、人手不足、物価・人件費上昇などへの対応ができずに苦戦を強いられている企業が多いようである。また、政権が代わり期待と不安が入り交じる中、海外情勢の動向などにより営業環境が不安定な点は否めず、景況感の動向は注視していく必要がある。

・景気DI

「沖縄」の景気DIは前月比1.0ポイント(以下、P)減の53.3となった。業種別では8業界中、5業界が悪化した。また、都道府県別順位は31カ月連続で全国1位となり、『全国』(43.9)、『九州』(45.5)を上回っている。

・規模別DI

「大企業」(66.7、前月比5.5P減)で2カ月振りの悪化、「中小企業」(52.5、前月比0.9P減)で2カ月連続の悪化、「中小企業」のうち「小規模企業」(50.7、前月比1.3P増)は2カ月振りの改善となった。

・業界別DI

前月と比較可能な8業界中、『金融』(16.7P増)、『卸売』(4.2P増)、『運輸・倉庫』(8.4P増)の3業界が改善したが、『建設』(0.4P減)、『不動産』(2.5P減)、『製造』(4.2P減)、『小売』(8.4P減)、『サービス』(2.1P減)の5業界が悪化した。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは、「3カ月後」が54.8(前月54.5)、「6カ月後」は51.8(前月51.3)で前月より改善、「1年後」は48.8(前月49.2)で前月より悪化となった。特に「1年後」は4カ月連続悪化が続き、多くの企業が先行きについて予測し難いと感じている。

「九州ブロック(2025年10月)」の詳細(九州ブロック:福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)