レポート

TDB景気動向調査2025年10月(南関東ブロック:埼玉・千葉・東京・神奈川)

■南関東ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

46.4

0.5

全国トップを維持し、緩やかな持ち直しへ

・概況

『南関東』の景気DIは46.4と前月から0.5ポイント増となり、全国10地域のなかでトップを堅持した。従前から活況を呈している『不動産』『建設』や、デジタル関連の設備投資などにともなう資金需要に加え、過去最高を更新した株高が景気マインドの押し上げ要因となった。また、先行き見通しでは「3カ月後」「6カ月後」「1年後」の全てで前月を上回り、高市政権の経済政策による実質購買力の回復が期待される。一方で、トランプ関税の影響や人手不足など課題は多く、一進一退をはさみながら緩やかな持ち直し基調が見込まれる。

・景気DI

『南関東』の景気DIは前月から0.5ポイント増の46.4となり、全国順位は8カ月連続でトップを維持した。都県別では、「神奈川」が5カ月連続、「東京」が4カ月連続、「埼玉」は2カ月ぶりの改善となった。一方で、「千葉」は2カ月連続で悪化した。

・規模別DI

「大企業」は49.5と、前月から0.3ポイント悪化したものの、「中小企業」は45.7と同0.6ポイント改善、「小規模企業」も45.4と同0.7ポイント改善したことから、規模間格差は3.8ポイント、前月から0.9ポイント縮小した。

・業界別DI

業界別では7業界で改善、1業界で横ばい、2業界で悪化。『金融』は3カ月連続の改善。また『製造』、『卸売』、『小売』、『運輸・倉庫』が改善に転じた。『不動産』は横ばいとなったものの、高水準を維持した。一方で、『農・林・水産』(51.5)は前月から1.8ポイント、『その他』(38.9)は同4.9ポイント悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は47.7(前月47.6)、「6カ月後」は48.1(同47.3)、「1年後」は48.7(同47.6)となり、いずれも前月から改善した。また、業界別では、『建設』『サービス』で「3カ月後」「6カ月後」「1年後」全てにおいて50を上回った。

■埼玉県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44

1.4

2カ月ぶりに改善

・概況

埼玉県の景気DIは前月比1.4ポイント増の44.0となり、2カ月ぶりに改善した。ここ1年ほどは小幅な変化が多かったが、当月はやや幅の大きなプラス。背景として、「高市政権の経済再生策に期待する」(製造)といった意見にあるように、新政権に対する期待の声は多く、先行きも漸次上昇の見通しに戻っている。ただし、マイナスの見方が減っているわけではなく、物価高騰や人手不足、その価格転嫁の困難さを指摘する企業では、特に収益面での苦戦の様子がうかがえる。また、「様子見」「買い控え」といった慎重な声も依然多い。

・景気DI

景気DIは44.0となり、前月比1.4ポイント増で2カ月ぶりに改善した。全国、『南関東』ともに微増で、管内都県は「千葉」を除いて改善。改善した都県で「埼玉」は唯一の1.0ポイント超えで、これは2025年6月(前月比1.5ポイント増)以来4カ月ぶり。「埼玉」の全国順位は12位と前月(21位)から9ランク上昇。

・規模別DI

「大企業」は前月比0.6ポイント増の46.1、「中小企業」は同1.5ポイント増の43.7、「小規模企業」は同1.2ポイント増の43.2となり、いずれの規模でも改善した。「大企業」の改善幅が「中小企業」のそれを下回り、規模間格差は2.4ポイントで、前月より0.9ポイント縮小した。

・業界別DI

前月と比較可能な8業界中、前月比改善は5業界、悪化が3業界。改善業界における最大幅は『運輸・倉庫』で前月比5.2ポイント増、『製造』が同3.4ポイント増で続く。悪化業界では、サンプル数少ないものの『金融』が同9.2ポイント減と大きく下げた。『製造』が40台を回復するのは2024年12月以来10カ月ぶり。

・先行き見通しDI

「3カ月後」45.6、「6カ月後」46.3、「1年後」47.8となり、前月(45.2、45.1、46.8)と比べ全ての指標で上回った。前月は、「6カ月後」に一旦落ち込み最も低くなっていたが、当月は、先へ行くほど上昇していく傾向に戻った格好。全国や『南関東』、管内都県いずれも同様の見通し。

■千葉県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.5

-0.4

2カ月連続で悪化

・概況

「千葉」の景気DIは43.5となり、2カ月連続して悪化した。企業からは、「工事の発注や進捗の遅れで、実績は前年割れ」(建設)、「物価高にともなう消費不振により、原料出荷が低調」(食品製造)などの声が聞かれた。一方で、「新政権誕生や株価上昇などを背景に、マインドは上向き」(化学品卸売)、「顧客から値上げが許容される環境になってきた」(専門サービス)などの声もあがった。足元の景況感には厳しさがうかがえるものの、新政権による経済政策に期待を寄せる声もあり、先行き好転するとの見方が強まっている。

・景気DI

「千葉」の景気DIは43.5となり前月比0.4ポイント低下、2カ月連続で悪化した。『南関東』の1都3県では唯一、前月比悪化した。全国は前月から0.5ポイント増の43.9となり、「千葉」は全国を0.4ポイント下回り、全国順位は前月(11位)から18位へと後退した。

・規模別DI

「大企業」は44.0で前月比0.6ポイント減少、3カ月連続で悪化した。「中小企業」は同0.4ポイント減の43.4となった。「大企業」と「中小企業」との規模間格差は0.6ポイント(前月0.8ポイント)へと0.2ポイント縮小した。

・業界別DI

『その他』を除く9業界のうち、『卸売』『サービス』の2業界は前月比改善したが、『農・林・水産』『金融』『建設』『不動産』『製造』『小売』『運輸・倉庫』の7業界は悪化した。『建設』は5カ月ぶりに悪化した一方で、『サービス』は2カ月ぶりに改善し50を超えた。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は45.1(前月45.7)、「6カ月後」は45.5(同44.4)、「1年後」は46.5(同44.7)となり、「6か月後」「1年後」は前月比改善し、先へ行くほど高くなっている。不安定な政治を懸念する声もあるが、高市新政権への期待感を示す声もあがっている。

■東京都

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

47.6

0.3

4カ月連続で改善

・概況

「東京」の景気DIは47.6で、4カ月連続で改善し、前年同月水準まで緩やかに改善傾向にある。『金融』では、「不動産業の資金需要が旺盛である」「政府が推進しているキャッシュレス決済市場の普及」といった理由から前月比4.7ポイント増と大幅改善となった。過去最高を更新した株高が景気マインドを押し上げたほか、高市新政権の誕生による積極財政を期待する声もあがっている。一方で、従前からの物価高騰や人手不足、これから本格化するトランプ関税の影響など、先行きの不透明感は払しょくされず、一進一退の景況感が続くとみられる。

・景気DI

「東京」の景気DIは47.6(前月47.3)で、4カ月連続で改善し、今年最高値を記録した。都道府県別順位は2位となり、前月(3位)から1ランク上昇、『南関東』の1都3県で突出した数値となっている。

・規模別DI

「大企業」は50.4(前月比0.1ポイント増)、「中小企業」は46.7(同0.3ポイント増)、「小規模企業」は47.1(同0.6ポイント増)とすべて上昇した。規模間格差は3.7ポイントで、乖離幅は直近1年で最小となった。

・業界別DI

全10業界中7業界が改善、2業界が悪化、1業界が横ばいだった。不動産価格の上昇が続く『不動産』(56.5)や、それにともなう資金ニーズに対応する『金融』(53.3)はいずれも直近10年で最高値を記録した。一方で、『卸売』(42.2)は同0.1ポイント減と2カ月連続で悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(48.7、前月48.7)は前月から横ばい、「6カ月後」(49.0、同48.4)、「1年後」(49.2、同48.5)はいずれも改善した。業界別では、『金融』『建設』『不動産』『サービス』は3指標ともに50.0を上回り、高市政権に期待する声が聞かれた。

■神奈川県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

45.6

0.7

5カ月連続の前月比改善

・概況

「神奈川」のDIは5カ月連続の前月比改善となった。「年末に向けてお客さまの動きが活発になっている」(建設)、「IT需要とDX投資が活発」(情報サービス)などの一方で、「消費者がコストに敏感」(その他の卸売)、「新車の動きが悪いことに引きずられるように、中古車流通も落ち込んできた」(運輸・倉庫)など、厳しい環境にある企業は依然多く、取引先のシステム障害の影響も聞かれた。「経済の回復機運が高まる予感はするがまだ様子見」(自動車・同部品小売)など、今後の経済政策に対する期待と不安の声が入り混じっている。

・景気DI

「神奈川」の景気DIは45.6と前月(44.9)から0.7ポイント増加し、5カ月連続の前月比改善となった。45.0を超えたのは今年3月(45.3)以来7カ月ぶりで、今年の最高値で改善幅も最大だった。全国順位は7位となった。

・規模別DI

「大企業」は48.8(前月比4.0ポイント減)と悪化したのに対し、「中小企業」は45.2(同1.2ポイント増)、「小規模企業」は43.1(同0.5ポイント増)とそれぞれ改善した。「中小企業」は今年の最高値となり、「大企業」と「中小企業」の格差は3.6ポイントで、乖離幅は今年最小となった。

・業界別DI

9業界中、5業界で前月比改善となった。『サービス』が7カ月ぶり、『建設』が4カ月連続で50.0を上回り、『卸売』は4カ月ぶりの改善となった。一方で、『小売』は2カ月連続で改善したものの依然として低水準にとどまっており、『運輸・倉庫』は4カ月ぶりの悪化となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は47.3(前月46.3)、「6カ月後」は47.7(同46.4)、「1年後」は48.5(同46.8)でそれぞれ前月から1.0ポイント以上改善した。『金融』『建設』は3指標ともに50.0を上回った。高市政権に期待する声が聞かれた。

「南関東ブロック(2025年10月)」の詳細(埼玉・千葉・東京・神奈川)