レポート

TDB景気動向調査2025年10月(東北ブロック:青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)

■東北ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

39.5

0.3

2カ月ぶりの改善

・概況

景気DI(39.5)は、農作物の価格高騰により『農・林・水産』が全体を押し上げた一方、スーパーなどの『小売』では、こうした状況を受けて消費者の節約志向が強まり、改善は小幅にとどまった。『製造』は、原材料価格の高騰による影響が大きく最下位に落ち込んだほか、建築コストの高止まりにより住宅用土地の取引に停滞感がみられた『不動産』が前月比減少。さらに、紅葉シーズンを迎えるなか、『サービス』はクマ被害の影響により、旅館・ホテルなどでキャンセルが発生しており、今後も様々な業種で膠着状態が続くと予想される。

・景気DI

景気DI(39.5)は前月比0.3ポイント増加し、2カ月ぶりに改善した。『全国』(43.9)との格差は4.4で前月比0.2ポイント拡大した。県別では、改善4県(「岩手」「宮城」「山形」「福島」)、悪化2県(「青森」「秋田」)となった。

・規模別DI

「大企業」(42.5)が前月比0.2ポイント減少し、「中小企業」(39.2)が同0.3ポイント増加した。その結果、「大企業」と「中小企業」の格差は3.3となり、同0.5ポイント縮小した。

・業界別DI

改善が『農・林・水産』『金融』『運輸・倉庫』などの6業界、悪化が『不動産』『製造』『サービス』などの4業界となった。『その他』を除く9業界では『農・林・水産』(58.7)が最も高く、『製造』(34.6)が最も低かった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は41.1(当月比1.6ポイント増)、「6カ月後」は41.4(同1.9ポイント増)、「1年後」は42.7(同3.2ポイント増)となった。前月との比較では3指標全てで改善した。

■青森県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.5

-2.4

2カ月ぶりに悪化

・概況

「青森」の景気DIは41.5となり、前月から2.4ポイント低下し、2カ月ぶりに悪化した。産業別で高い比率を占める『建設』が悪化したほか、紅葉シーズンに例年多くの観光客を迎える奥入瀬渓流が、夏場の記録的大雨による復旧作業に時間を要したため客入りが落ち込み、「飲食料品卸売」や「飲食店」が前月比で悪化した。全体としては、物価高のほか最低賃金の高まりなど、コスト上昇圧力が強まっており、今後もしばらくは一進一退の足踏み状態が続く可能性が高い。

・景気DI

景気DIは41.5となり、前月から2.4ポイント悪化した。都道府県別順位は34位と前月の11位から大幅にダウンしたが、東北6県の中では引き続きトップとなった。公共工事の発注量が減少するなか、『建設』のほか一部関連する「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」が悪化した。

・規模別DI

「大企業」は、50.0ポイントと前月比横ばいとなった一方、「中小企業」と「小規模企業」がともに悪化した。「大企業」がここ数カ月改善傾向にある一方、年明けから改善傾向にあった「小規模企業」ではここ数カ月悪化トレンドにあり、規模別で差が生じている。

・業界別DI

業界別では、公共投資の減少により主要産業の1つである『建設』の悪化に加え、10月に観光シーズンを迎え例年多くの観光客が訪れる奥入瀬渓流が、8月に発生した記録的大雨からの復旧に時間を要したこともあって観光客数が減少し、関連して「飲食料品卸売」と「飲食店」がそれぞれ悪化した。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは、3カ月後、6カ月後、1年後のいずれも前月と比べて悪化した。特に、『建設』と『卸売』、『サービス』が全体を押し下げる構図となっている。

■岩手県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

38.9

1.3

2カ月ぶりに改善

・概況

景気DIは2カ月ぶりに改善したが、2カ月連続で40を下回った。「大企業」は判断の分かれ目となる50を11カ月連続で下回り、「中小企業」は13カ月連続で40を下回った。業界別では引き続き『卸売』や『小売』の苦境が目立つ。先行き見通しの「1年後」はブロック最低の40.2にとどまる。物価高や人件費上昇などの影響を受け、県内企業の倒産件数は増加基調にあり、当面は一進一退の景気動向が続くと見込まれる。

・景気DI

景気DIは前月比1.3ポイント増の38.9となり、2カ月ぶりに改善したが、2カ月連続でDIは40を下回った。過去1年間で40を上回ったのは2回のみ。都道府県順位は全国43位(前月は全国45位、前年同月は全国43位)。

・規模別DI

「大企業」は前月から変動なく41.7となり、判断の分かれ目となる50を11カ月連続で下回った。「中小企業」は同1.3ポイント増の38.6となったが、13カ月連続で40を下回った。「大企業」と「中小企業」の格差(大企業-中小企業)は3.1(前月は4.4)。

・業界別DI

『建設』は前月比4.0ポイント増の44.2とやや持ち直したが、『製造』は37.5に悪化、『小売』も28.9に悪化した。また、『卸売』は32.1、『サービス』も37.7と、総じて低水準にとどまった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が41.1、「6カ月後」が40.4、「1年後」が40.2と、いずれも40を下回った前月よりやや改善した。前月すべての項目で40を下回ったのは、『東北』の中で「岩手」のみであったが、今回は『東北』全県がすべての項目で40を超えた。

■宮城県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

38.5

0.8

3カ月連続の改善

・概況

景気DI(38.5)は3カ月連続で改善したものの、10カ月連続で40台を下回リ、都道府県別順位は46位と下位で推移している。業界別では、コメの出荷が始まリ『農・林・水産』が大幅に改善、先行きも好調な一方、『小売』は2カ月連続で30台を下回り、業界間格差が拡大している。10月には県知事選挙が行われ、現職が5選目を果たした。知事が進めてきた半導体産業の誘致による地域経済の後押しに期待がかかるが、目先では賃金上昇や物価高騰が企業に与える影響も大きく、しばらく低調な推移となることが見込まれる。

・景気DI

景気DI(38.5)は前月比0.8ポイント増と3カ月連続で改善したものの、10カ月連続で40台を下回った。『全国』(43.9)との比較では5.4ポイント下回ったものの、格差は前月から0.3ポイント縮小した。都道府県別順位は前年同月44位から46位へ下落し、依然として下位で推移している。

・規模別DI

「大企業」(45.8)は前月比3.1ポイント増加した一方、「中小企業」(37.8)は同0.5ポイント増にとどまった。その結果、「大企業」と「中小企業」の格差は8.0で同2.6ポイント拡大した。

・業界別DI

改善は『農・林・水産』『卸売』『運輸・倉庫』などの5業界、悪化は『不動産』『小売』『製造』などの4業界となった。『その他』を除く9業界では『農・林・水産』(50.0)が最も高く、『小売』(27.2)が最も低く、業界別の格差は同2.1ポイント拡大した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は40.3(当月比1.8ポイント増)、「6カ月後」は41.7(同3.2ポイント増)、「1年後」は43.5(同5.0ポイント増)となった。前月との比較では3指標全てで改善した。

■秋田県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.0

-0.9

3カ月ぶりに悪化

・概況

景気DIは、『東北』が前月比0.3ポイント、『全国』が同0.5ポイントそれぞれ改善した。『東北』では、本県と「青森」が悪化したが、その他4県がやや改善した。米価高騰により農家の収入が増え、これまで抑えていた農機具等の需要が増加し、これに関連し恩恵を受けている企業もある。反面、10月から食品、飲料水等のさらなる値上げにより消費は伸び悩んでおり、企業間格差が拡がってきているとの見方も多く、先行きの景気動向は依然として不透明と言わざるを得ない。

・景気DI

「秋田」の景気DIは41.0と9月を0.9ポイント下回り、3カ月ぶりに悪化した。『東北』6県では前月の第2位のままで『東北』を1.5ポイント上回ったものの、『全国』(43.9)を2.9ポイント下回り、都道府県順位は前月の第26位から第35位に後退した。

・規模別DI

規模別では、「大企業」が前月比1.1ポイント減の45.2、「中小企業」が同0.8ポイント減の40.7とそれぞれ悪化した。これにより、「大企業」と「中小企業」の格差はやや縮まった。

・業界別DI

業界別では、『農・林・水産』『小売』の2業界が前月比で改善したものの、『運輸・倉庫』が横ばい、『建設』『不動産』『卸売』『製造』『サービス』『その他』の6業界が前月比で悪化した。悪化したなかでは、『不動産』(37.5)の前月比5.8ポイント減が目立った。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは、「3カ月後」41.0、「6カ月後」43.4、「1年後」42.0と依然として低位で推移する見方に変化はない。物価高の中で消費の伸び悩みが顕著であるほか、秋田県内では来年3月末の最低賃金のアップを控えて、設備投資等を抑える動きもあり、先行きの景況は不透明と言わざるを得ない。

■山形県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

38.3

1.6

3カ月ぶりに改善

・概況

「国内旅行が盛んになっている。人的交流が盛んで、旅行客の姿をよく見るようになった」(小売、中小企業)など、前向きな声も聞かれる。一方で「山形県では12月より最低賃金改定となり、77円アップは中小企業にとって非常に厳しい。冬季賞与の引き下げなどの対応を考慮」(小売、大企業)、「人口減と人手不足」(サービス、中小企業)、「資材価格高騰、円安」(製造、中小企業)など、山形県の企業から、人口問題、人件費や物価高、為替問題を背景とした厳しい声が多数聞かれ、実態としては回復途上にあるとの見方が多い。

・景気DI

「山形」の景気DIは38.3となり前月比1.6ポイント上昇し、3カ月ぶりの改善となった。『全国』は43.9と0.5ポイント上昇した。『東北』は同0.3ポイント改善の39.5となった。「山形」のDIは前月比改善したものの、値としては40を下回り他県との比較では低調な水準となった。

・規模別DI

「大企業」は前月比3.0ポイント悪化し38.1を示した一方、「中小企業」は同2.2ポイント改善して38.4と3カ月ぶりに改善、うち「小規模企業」は同2.1ポイント改善の37.2となり、2カ月ぶりの改善を示した。

・業界別DI

業界別では『金融』を除く比較可能な8業界において『農・林・水産』『建設』『卸売』『小売』『サービス』は前月比改善を示したが、『不動産』『製造』『運輸・倉庫』の3業界は前月比悪化した。なかでも『製造』は3カ月連続の悪化、『不動産』『運輸・倉庫』は2カ月連続の悪化を示した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は前月比0.5ポイント悪化の40.4となり3カ月連続で悪化した。「6カ月後」は同0.6ポイント悪化し41.1、「1年後」は同0.8ポイント悪化の43.8を示し、いずれも2カ月連続で悪化した。引き続き厳しい見通しにあることを反映したようだ。

■福島県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.4

0.3

2カ月連続で改善

・概況

2業界が改善して「福島」の景気DI(40.4)は前月比0.3ポイント上昇し、2カ月連続で改善した。しかし、企業からは「公共工事が少ないうえ補正予算も決まらない」(建設)、「受注も少ないうえ見積もり依頼も減少」「賃金の引き上げや物価上昇を吸収できる案件確保に苦慮」(各製造)、「物価の高騰分を転嫁しづらい」(卸売)、「熊の出没ニュースで予約がキャンセル」(サービス)などの声が届いた。物価高による節約志向定着への懸念など、厳しいコメントが大多数を占めている。引き続き今後の景気動向は弱含みで推移する可能性が高い。

・景気DI

「福島」の景気DIは、40.4と9月を0.3ポイント上回って、2カ月連続で改善した。『全国』の景気DIは、前月(43.4)を0.5ポイント上回り、43.9となった。「福島」の都道府県別順位は、前月の第37位から第40位に低下した。

・規模別DI

「大企業」(39.7)は前月比0.3ポイント低下、「中小企業」(40.5)は同0.3ポイント上昇、「小規模企業」(38.9)は同2.7ポイント上昇した。格差(大企業-中小企業)は▲0.8となり、2カ月連続で「中小企業」が「大企業」を上回った。

・業界別DI

『不動産』『小売』『卸売』『サービス』『運輸・倉庫』は悪化したが、『建設』『製造』の2業界が改善した。『建設』は6カ月連続で40台を維持したものの、『小売』は14カ月連続、『製造』においては21カ月連続で30台にとどまった。

・先行き見通しDI

「1年後」の先行き見通しDIは7業界が当月からの改善を見込んでいる。特に『製造』は当月(36.6)から7.5ポイント、『運輸・倉庫』も同(39.6)から4.2ポイントの改善を見込んでいる。一方、業界比率の突出している『建設』の「1年後」が、同(43.8)から4.9ポイント悪化の38.9を見込んでおり、やや懸念される。

「東北ブロック(2025年10月)」の詳細(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)