レポート

TDB景気動向調査2025年10月(東海ブロック:愛知・岐阜・三重・静岡)

■東海ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.4

0.6

2カ月ぶり改善

・概況

『東海』の景気DIは2カ月ぶりの改善で、トランプ関税への不安感後退がプラス材料となった。一方で、全国を下回るのは8カ月連続で、回復の足取りが本格化しているとまでは言い難い状況だ。物価高の影響で選別消費が進み、売れるモノと売れないモノの明暗が分かれており、格差の拡大が懸念される。半導体不足で生産が停滞した記憶もまだ新しいなか、オランダ半導体メーカー・ネクスペリアの動向も気になるところ。景況感は引き続き一進一退が続きそうだが、先行き見通しが改善傾向にある点には期待したい。

・景気DI

トランプ関税不安の後退や、自動車関連での復調の声が聞かれ、『東海』の景気DIは43.4と前月から0.6ポイント改善した。「静岡」の改善が6カ月連続となるのは2021年7月以来。全国10地域中の『東海』の順位は、前月から1ランクアップの3位。

・規模別DI

5カ月ぶりの悪化となった「大企業」は前月比0.8ポイント減少したのに対し、「中小企業」は同0.9ポイント、「小規模企業」は同0.5ポイントそれぞれ改善。「大企業」と「中小企業」の格差は5カ月ぶりに縮小した。

・業界別DI

10業界中、改善は4業界、悪化は4業界、横ばいが2業界。自動車関連の復調が好感され『製造』は2カ月ぶりの改善でDIが40を上回るのは7カ月ぶり。一方、物価高による選別消費が懸念される『小売』は2カ月連続で悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は45.2と前月比0.7ポイント、「6カ月後」は45.8と同1.1ポイント、「1年後」は47.1と同1.5ポイントそれぞれ改善。すべての指標が改善となるのは3カ月連続で、先行き見通しには明るさも出始めている。

■愛知県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.0

0.5

わずかながら改善

・概況

「愛知」の景気DIは、前月比0.5ポイント改善の44.0。米国との関税問題の一服に加え、「成長産業の設備投資案件の引き合いが増えてきた」との声もある製造業の堅調が景況感の改善につながった。しかし、値上げが続く原材料や食品などの物価高の影響は企業収益に痛手であり、人手不足問題も不安材料だ。また、停滞する個人消費には回復の兆しがみられず、新政権による経済政策への期待感から日経平均株価は上昇したが実際の政策効果は未知数だ。海外情勢も不安定な状況が続いており、景況感は力強さを欠いた展開が続きそうだ。

・景気DI

「愛知」の景気DIは44.0と横ばいの月を挟んで3カ月連続の改善となった。トランプ関税の一応の決着に加えて、自動車関連の製造が堅調だったことから景況感は回復した。都道府県別の順位は前月から2ランクアップの12位。

・規模別DI

「大企業」(48.2)は2カ月連続の悪化となったものの、「中小企業」(43.1)は前月から0.8ポイント、「小規模企業」(41.7)は同0.7ポイント改善した。また、規模間格差は5.1ポイントとなり2カ月連続で縮小した。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界中、改善が3業界、悪化が5業界、横ばいが1業界。自動車や設備投資関連の機械生産などが堅調だったことで『製造』が改善したほか、「夏季に比べて、観光客が増えている」との声がある『サービス』も改善。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は45.5(前月44.6)で前月比0.9ポイント、「6カ月後」は46.1(同45.0)で同1.1ポイント、「1年後」は47.2(同46.1)で同1.1ポイントそれぞれ改善。1年後は全国を上回っており、先行きへの改善が期待されている。

■岐阜県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.7

-0.8

2カ月連続悪化

・概況

岐阜県内企業の景気DIは前月比0.8ポイント減の40.7となり、2カ月連続悪化した。「引き続き案件を多くもらっている」(情報関連サービス)といったプラスの声はあったが、依然原材料高騰による価格転嫁の難しさを指摘する声が複数聞かれたほか、物価高による観光業への悪影響や、米価暴落のリスクを懸念する声も聞かれた。また、日経平均株価は過去最高を更新するなど株式市場は活況で、新政権に期待する向きもあるが、円安の影響による懸念は払拭されていない点を勘案すると、県内企業の景況感はシビアな推移が予想される。

・景気DI

岐阜県内企業の景気DIは前月比0.8ポイント減の40.7となり、2カ月連続で悪化した。東海4県で悪化したのは岐阜県のみであり、東海4県で最下位。また全国順位は39位(前月28位、前年同月33位)に後退したほか、13カ月連続で全国DIを下回った。

・規模別DI

「大企業」は前月比2.5ポイント減の41.3で2カ月ぶりに悪化。「中小企業」は同0.5ポイント減の40.6で2カ月連続悪化。「中小企業」のうち「小規模」は同1.1ポイント減の37.0で2カ月連続悪化。いずれの指標も悪化する中、規模間格差は同2.0ポイント減の0.7に縮小した。

・業界別DI

前月と比較できる8業界中、3業界で改善、4業界で悪化。『農・林・水産』は前月比8.3ポイント増の58.3、『サービス』は同4.8ポイント増の53.3と改善が目立った。一方『建設』は同2.2ポイント減の34.9、『卸売』は同6.0ポイント減の37.8に悪化。『小売』『運輸・倉庫』は2カ月連続悪化。

・先行き見通しDI

「3カ月後」42.9(前月44.0)、「6カ月後」42.7(同43.3)、「1年後」45.0(同43.3)で、全ての指標が全国DIを下回ったほか、東海4県でも最も低い水準に留まった。日経平均株価は過去最高を更新しているが、実体経済を反映しているとはいえず、県内企業の先行き見通しは厳しさが窺える。

■三重県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.9

2.5

2カ月ぶりに改善

・概況

「三重」県内企業の景況感は2カ月ぶりに改善。運輸倉庫業や製造業を中心に回復が進み、中小企業にも波及した。企業からは「トランプ関税不況から脱し、成長産業からの設備投資案件が増加」(機械製造)、「夏季に比べて観光客が増加」(飲食)など前向きな声が聞かれた。ガソリンの暫定税率廃止や手取り増加などを含む総合経済対策が議論され、今後の進行が地域経済を下支えする期待がもてる。一方、企業にとっては為替や物価高の影響が長びくと見られ、外部環境の変動によっては不確実性も残ることから県経済は依然一進一退が続くとみる。

・景気DI

三重県内企業の景気DIは前月比2.5ポイント増の43.9と2カ月ぶりの改善。全国平均にも並び、都道府県別順位は14位と、前月の29位から15ランク上昇した。東海4県の中では愛知県に続いて僅かな差で2番目となった。

・規模別DI

「大企業」は前月比1.1ポイント減の48.9と5カ月ぶりに悪化。一方、「中小企業」は同2.9ポイント増の43.1、このうち「小規模企業」も同3.7ポイント増の42.3とそれぞれ2カ月ぶりの改善。この結果、「大企業」と「中小企業」の格差が縮まり、その差は5.8ポイントとなった。

・業界別DI

前月と比較可能な8業界では、最も高いDI(52.8)の『不動産』や前月から大幅な上昇(+8.3)を示した『運輸・倉庫』など5業界が改善した。『農・林・水産』は横ばい。一方、各業界で唯一DI40未満となった『卸売』、および『サービス』の2業界が悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」45.6(前月44.2)、「6カ月後」48.0(同44.7)、「1年後」48.9(同45.1)と、景気DIの先行き見通しは全期間で改善し、中長期的な回復期待が強まっている。今後は、政策効果の持続性と外部環境の変化を注視する必要がある。

■静岡県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.4

0.6

6カ月連続で改善

・概況

「静岡」の景気DIは43.4と6カ月連続で改善した。企業からは、「仕事は手が足りず、断るくらいの状況にある」(建設)との明るい声もあったが、一方で「車載系はあまり減産していないが、一般民生・産業機器とも回復の見込みが立たない」(製造)など厳しい声も多くあがった。景気DIは緩やかに改善してはいるものの、円安傾向に歯止めがかからず、輸入品の価格高騰を懸念する声も多く、特に企業体力が脆弱な小規模企業への影響が懸念される。

・景気DI

「静岡」は前月比0.6ポイント増の43.4となり、6カ月連続で改善した。全国(43.9)との比較では0.5ポイント下回り、全国順位では第19位となり、前月の第18位より低下した。なお、東海4県のなかでは、「愛知」の44.0、「三重」の43.9に次いで3番目に高くなった。

・規模別DI

「大企業」は前月比0.3ポイント増の49.6となり、良否判断の分かれ目となる50を8カ月連続で下回った。「中小企業」では同0.7ポイント増の42.3となった。「大企業」と「中小企業」の規模間格差は前月より0.4ポイント縮まり、7.3ポイント差となった。

・業界別DI

主要6業界では『建設』が前月比2.2ポイント増の53.0となり、2カ月連続でトップ。一方で、『小売』は同3.7ポイント減の36.7にとどまり、6カ月ぶりに最下位となった。なお、改善した業界は『製造』『建設』『運輸・倉庫』の3業界、悪化した業界は『小売』『卸売』『サービス』の3業界となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は45.8(前月44.9)、「6カ月後」は46.2(同45.0)、「1年後」は47.2(同45.9)となり、3カ月連続で3指標ともに前月を上回った。なお、規模別では「大企業」「中小企業」は3指標の何れも前月を上回ったが、「小規模企業」では3指標の何れも前月を下回った。

■山梨県、長野県は、北関東エリアに含んで集計しています。


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