レポート

TDB景気動向調査2025年10月(北関東ブロック:茨城・栃木・群馬・山梨・長野)

■北関東ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.9

0.6

2カ月連続で改善

・概況

『北関東』の景気DIは41.9となり2カ月連続で改善した。『建設』『製造』『小売』など6業界が改善した。引き続き物価高騰や人手不足による影響を訴える声は多く、自動車産業や周辺業界からは依然として受注が上向かないとの声もある。他方で、「年末に向けて活性化が見られる」との声や、新総裁が決まったこことで前向きな政策への期待の声もあった。今年に入ってからの景気DIの推移は、前月から悪化・改善が各5回と、まさに一進一退の状況で、景気に力強さはなく、今後も同様の状況が続くものと思われる。

・景気DI

『北関東』の景気DIは前月比0.6ポイント増の41.9となり、2カ月連続で改善した。域内5県では「茨城」「群馬」「山梨」が悪化し、なかでも「山梨」は3カ月連続で悪化した。他方、「栃木」「長野」は、それぞれが1ポイント以上の改善となり全体を押し上げた。全国10地域での順位は前月と同じ8位だった。

・規模別DI

「大企業」(48.0)、「中小企業」(41.1)、「小規模企業」(39.4)となり、全ての区分が改善した。全区分が改善するのは4カ月ぶり。規模が大きいほどDIが高い傾向に変わりないが、「大企業」の改善幅を「中小企業」「小規模企業」が共に上回り、規模間格差は6.9となり、前月比0.1ポイント縮小した。

・業界別DI

全10業界中、悪化は『不動産』や『卸売』など3業界、改善は『建設』『小売』など6業界だった。なかでも『建設』(48.8)は3カ月連続で改善し、昨年12月(49.0)に迫る水準となった。また、DIが最も改善したのは『運輸・倉庫』(43.4)の前月比3.5ポイント増で、2カ月ぶりに40台を回復した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(44.0、前月43.7)「6カ月後」(45.5、前月44.5)「1年後」(46.7、前月45.5)となり、全ての区分で前月より改善した。業界別でみると1年後の見通しDIが最も高いのは『不動産』(50.0)。また、現状(10月調査)より1年後のDIが悪化するのは『建設』など3業界だった。

■茨城県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.4

-0.9

2カ月ぶりの悪化

・概況

「茨城」の景気DIは、前月比0.9ポイント減の42.4となり、2カ月ぶりに悪化した。物価高による消費の停滞が続くなか、原材料やエネルギー価格の上昇分を販売価格に転嫁できない中小企業の収益環境は厳しさを増している。収益性の低下と消費不振が企業マインドを冷え込ませてしまい、景況感の改善に結びつかない。高市新政権の誕生により経済政策への期待はあるものの、現時点で県内企業の景況感に目立った好影響はみられない。景気DIは当面、40台前半でのもみ合いが続くとみられ、力強い回復には時間を要する見通しだ。

・景気DI

「茨城」の景気DIは前月比0.9ポイント減の42.4となり、再び悪化に転じた。10月4日に実施された自民党総裁選挙を経て、高市早苗氏が憲政史上初の女性首相として指名されるなど政局に大きな動きがあったものの、県内経済に与える影響は限定的と判断され、物価高の継続もあり、マインド改善には結びつかなかった。

・規模別DI

「大企業」は前月比3.5ポイント減の41.7となり、2カ月ぶりに悪化。「中小企業」も同0.6ポイント減の42.5で、2カ月ぶりの悪化。「小規模企業」は同0.7ポイント減の40.2となり、3カ月ぶりの悪化。「大企業」「中小企業」「小規模企業」すべてが揃って悪化するのは、2025年7月以来、3カ月ぶり。

・業界別DI

『農・林・水産』『小売』など6業界が悪化した一方で、『不動産』『運輸・倉庫』の2業界は改善。『金融』は横ばい。悪化幅が最も大きかった『農・林・水産』は、飼料価格の高騰や夏場の猛暑による出荷減が影響。一方、大きく改善した『不動産』は、TX沿線および県南地区の常磐線沿線における土地需要の拡大が追い風に。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は45.1となり、前月比1.3ポイント減。一方、「6カ月後」は45.9と同0.8ポイント増、「1年後」は45.8で同0.3ポイント増となった。企業からは「案件が入り始めているが人手が足りず対応が難しい」との声が聞かれるなど、足元では人手不足から受注を抑制せざるを得ない様子がうかがわれる。

■栃木県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.9

1.6

8カ月連続で43を割り込み、低迷続く

・概況

1~2カ月ごとに改善と悪化を繰り返す状況がすでに2年以上になる。何より懸念されるのは、DIが43に満たない状況で一進一退を繰り返しており、一般的には不況状態が長引いているというのが率直な評価である。企業マインドの低迷は、設備投資など経済指標の悪化に直結しており、一般消費の低迷にも繋がり、負のスパイラルが続くことになる。加えて、業績好調企業と不振企業の格差が広がる傾向にあり、倒産や休廃業・解散を誘発させることにもなりかねない。新政権は財政出動に積極的と評されており、期待が寄せられている。

・景気DI

10月の景気DIは42.9と2カ月ぶりに改善するも、8カ月連続で43を割り込む低水準が続いている。物価高に加えて米国の関税政策の影響も出始め、一方で価格転嫁は思うように進んでおらず、中小企業の厳しい経営環境を反映した結果と言えるだろう。全国(43.9)との比較では1ポイント低く、『北関東』も全国を下回った。

・規模別DI

「大企業」50.8(前月49.3)、「中小企業」41.4(同39.6)、「小規模企業」39.7(同38.3)と、全てのカテゴリーで改善が見られたが、県内企業の大半を占める中小・小規模企業の低調が目立つ。規模間格差も9.4と高い水準であり、大企業と中小・小規模事業者の経営環境は明らかに違うようだ。

・業界別DI

業界別では、主要6業界全てが改善し、『運輸・倉庫』などで受注量の一時的な回復も見られるようだ。ただし、短いスパンで改善と悪化を繰り返す環境は構造的に変わっていないようで、設備投資や一般消費の改善も短期間でまた低迷期に入る傾向が強い。不況下では、企業間格差も広がる傾向にあり、不振企業の悪化が激しい。

・先行き見通しDI

「3カ月後」45.1(前月43.1)、「6カ月後」44.4(同43.8)、「1年後」45.0(同43.5)と、改善基調が見られた。しかし、「物価高」や「人手不足」など、懸念材料は全て構造的で、一朝一夕に改善する問題ではない。先行き不透明感も恒常的に蔓延っており、小規模企業の支援体制は急務とみられる。

■群馬県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.2

-0.6

5カ月ぶりに悪化

・概況

群馬県内企業からは「様子見だった工事案件が動き出した」(建設)、「工場等の設備投資案件が多い」(製造)との明るい声が聞かれる。一方、「中小の製造業に仕事がまわっていない」(卸売)、「原材料価格が高騰、最低賃金の上昇に対して、価格転嫁が追いついていない」(小売) など厳しい意見も出ている。高市新政権の積極財政への期待があるものの、円安による輸入コストの増加と物価高、最低賃金の引き上げによる企業収益の下押圧力、価格転嫁の停滞など、企業業績の足かせ要因が山積しており、景気は一進一退の推移が見込まれる。

・景気DI

景気DIは前月比0.6ポイント減の40.2と5カ月ぶりに悪化した。一方、『全国』は前月比0.5ポイント増と改善した結果、「群馬」の47都道府県別順位は41位(前月35位)に低下した。40台を維持したものの、『北関東3県』においては「茨城」「栃木」より低位にある。

・規模別DI

「大企業」 は前月比1.1ポイント減の47.6で、2カ月ぶりに悪化した。「中小企業」は同0.6ポイント減と5カ月ぶりに悪化。「小規模企業」は同1.9ポイント増と横ばいを挟んで2カ月連続改善した。「大企業」の悪化幅が「中小企業」よりも大きく、「大企業」と「中小企業」の規模間格差は8.1に縮小した。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界では、 『小売』『卸売』など4業界が悪化、『サービス』『製造』など4業界が改善した。『金融』は横ばいだった。『製造』は30台にとどまっているが、横ばいを挟んで4カ月連続改善した。『建設』は3カ月連続で改善、8カ月ぶりに50台となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が41.9(前月42.4)、「6カ月後」が44.8(前月44.0)、「1年後」が46.3(前月44.4)となった。「3カ月後」が前月より悪化、「6カ月後」「1年後」の2指標は改善した。先に行くほどDI は高く、現在3.7ポイントある全国との格差は、 「1年後」には0.6ポイントまで縮小している。

■山梨県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.3

-0.3

3カ月連続悪化

・概況

「山梨」の景気DIは3カ月連続で悪化した。企業からは、「インバウンドが再び前年を上回る状況に回復し、国内客も秋の行楽シーズンに向けて期待が高まる」(サービス)などの声が聞かれた。一方、「更なる材料価格高騰でジュエリーの消費に一段と押し下げ感が強まった」(卸売)、「上場企業は良さそうだが、末端までは回ってきていない」(製造)などマイナスの声も多い。先行きについては、インバウンド消費の経済効果 は続いているが、半導体関連、自動車関連とも受注の回復が遅れているため、景況感の悪化傾向は続くとみられる。

・景気DI

「山梨」の景気DIは前月比0.3ポイント減の42.3となり、3カ月連続で悪化。全国は同0.5ポイント増の43.9だった。「山梨」は全国を1.6ポイント下回り、都道府県別順位は前月の21位から27位に下がった。

・規模別DI

「大企業」は前月比0.1ポイント減の48.5、「中小企業」は同0.3ポイント減の41.6、「小規模企業」は同3.4ポイント減の37.3となった。「大企業」と「中小企業」との規模間格差は、「中小企業」が3カ月連続悪化し、前月より0.2ポイント拡大して6.9ポイント差となった。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界中、4業界が改善、3業界が悪化、2業界が横ばいとなった。『小売』はインバウンド需要が堅調で前月比4.6ポイント改善した。判断の分かれ目となる50以上だったのは、『農・林・水産』『金融』『建設』『サービス』の4業界。

・先行き見通しDI

「3カ月後」45.4(前月45.2)、「6カ月後」46.8(同45.0)、「1年後」48.1(同46.5)となった。3指標とも前月を上回り、先に行くほどDIは高くなっている。「1年後」に50以下となっているのは、『卸売』『小売』の2業界のみ。

■長野県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.9

1.8

3カ月ぶりに改善、

2023年11月以降で最高

・概況

「長野」の景気DIは、2018年10月から50を下回る状況が続いているものの、2023年10月の42.0以来最高水準となった。「インバウンド好景気が継続中」(広告関連)など引き続き観光業の好調が聞かれる一方で、「節約志向から、客数は変わらないが、客単価が落ちている」(旅館・ホテル)と鎮静化を感じる企業もある。また、後ろ向きの声が大半を占めていた前月に比べ、「高市政権による小規模事業者、個人事業者への経済対策に期待している」(建設)など政権交代により期待を含めた前向きのコメントが増えている。

・景気DI

「長野」の景気DIは41.9と、前月比1.8ポイント上昇し3カ月ぶりに改善。前年同月も2.0ポイント上回り、2023年11月以降で最高になった。「全国」を2.0ポイント下回ったが、格差は前月から1.3ポイント縮まり、都道府県別順位は30位と前月比7ランク上昇し、2023年5月以降で最高順位となった。

・規模別DI

前月比で「大企業」は2.3ポイント、「中小企業」は1.8ポイント、「小規模企業」は1.7ポイントそれぞれ改善。改善幅は規模に比例し大きかった。規模間格差は「大企業」と「中小企業」は0.5ポイント、「大企業」と「小規模企業」は0.6ポイント、「中小企業」と「小規模企業」は0.1ポイントいずれも拡大。

・業界別DI

『運輸・倉庫』は前月比8.5ポイント、『建設』は同1.1ポイント、『製造』も同1.1ポイントそれぞれ3カ月ぶりに改善。『小売』は同6.6ポイント、2か月ぶりに改善した。一方、『卸売』は2カ月連続、『サービス』は2カ月ぶりにそれぞれ同0.3ポイント悪化。主要業界中で悪化は2業界となり、同3業界減少した。

・先行き見通しDI

「長野」、業界別の『製造』『卸売』、規模別の「中小企業」「小規模企業」は長期になるほど改善を予想。『サービス』は横ばいのうえ改善、『建設』は改善の後悪化を予想している。「大企業」『小売』『運輸・倉庫』はそれぞれ一進一退を見込む。「長野」としては、34カ月連続で長期になるほど改善を予想する状況が続く。

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