レポート

2026年3月の景気動向調査

国内景気は中東情勢の緊迫化で大きく悪化 ~ 2年6カ月ぶりにすべての規模・業界・地域がそろって悪化 ~

■調査結果のポイント

  1. 2026年3月の景気DIは前月比1.4ポイント減の42.9となり、2カ月ぶりに悪化した。国内景気は、緩やかな回復基調をたどっていたが、原油価格の高騰とそれにともなう燃料価格の上昇と先行き不安から、大幅に下落した。今後の景気は、高まる不確実性のなかで下振れリスクをともないつつ、弱含みで推移するとみられる。

  2. 2年6カ月ぶりに全10業界および全10地域で悪化した。中東情勢による原油価格の高騰が運輸コストの増大を招き、幅広い業種で悪材料となった。さらに、原油由来の材料の供給が不安定化したことも悪影響となった。規模別では、11カ月ぶりに全規模がそろって悪化した。「中小企業」は『製造』や『運輸・倉庫』の不調が目立った。

  3.   [今月のトピックス]原油価格上昇による負担増のほか、関連資材の調達難や荷動きの停滞、消費者の生活防衛などを心配する声は多い。

< 2026年3月の動向 : 大幅に下落 >

2026年3月の景気DIは前月比1.4ポイント減の42.9となり、2カ月ぶりに悪化した。国内景気は、緩やかな回復基調をたどっていたが、原油価格の高騰とそれにともなう燃料価格の上昇や先行き不安から、大幅に下落した。

3月は、中東情勢の緊迫化を受けた原油高と供給不安が燃料費や物流費、原材料コストを押し上げ、すべての規模・業界・地域で景況感が悪化した。運輸・倉庫や小売は厳しく、価格転嫁の遅れや人手不足による収益環境の悪化もマイナス要因だった。一方で、悪材料の多かった3月としては売り上げや生産・出荷量は底堅さを残したほか、インバウンドや春休み需要は下支え要因となった。

< 今後の見通し : 弱含み >

今後は、原油高が企業収益や物流費、家計負担を下押しし、政策金利の引き上げや長期金利の上昇も設備投資の重荷となろう。他方、政府の成長投資や賃上げの継続が家計の実質購買力を支えることができれば、景気は底堅さを保つ見込み。ただし、急激な円安進行や株価の急落、中東情勢や日中関係の不安定化が強まれば、景況感は下振れする可能性が高い。

今後の景気は、高まる不確実性のなかで下振れリスクをともないつつ、弱含みで推移するとみられる。

業界別:全10業界が一斉に悪化、原油調達の不安定化が大きな悪材料

  • 2023年9月以来、2年6カ月ぶりに全10業界で悪化した。中東情勢による原油価格の高騰が運輸コストの増大を招き、幅広い業種で悪材料となった。さらに、原油由来の材料などの供給が不安定化していることも悪影響だった。また、深刻化する人手不足を背景とした労務費の上昇に加え、円安進行による輸入額の増加なども重なり、企業の収益環境を厳しく圧迫している。

  • 『運輸・倉庫』(38.5)…前月比5.3ポイント減。2カ月ぶりに悪化。3年1カ月ぶりに30台に落ち込んだ。トラック業界からは、「中東情勢が起因の原油高騰による燃料コストの増加」(一般貨物自動車運送)といった声が多数寄せられた。さらに、海運では、ペルシャ湾周辺の地政学的な緊張の影響により不安定な運航状況が続いている。そのため、滞船や迂回運航による航海日数の延長が発生するなど、陸運・海運の双方で深刻な悪影響が生じている。

  • 『小売』(37.7)…同2.5ポイント減。2カ月ぶりに悪化。ガソリンスタンドを含む「専門商品小売」(同5.4ポイント減)は大きく落ち込んだ。3月中旬の寒の戻りを受け、「春物の動きが悪い」(婦人・子供服小売)といった声が聞かれる「繊維・繊維製品・服飾品小売」(同2.0ポイント減)は再び下落した。
    他方、「医薬品・日用雑貨品小売」(同2.3ポイント増)は、インフルエンザや花粉症などで来局者も多く、3カ月ぶりに改善した。

  • 『製造』(40.5)…同1.3ポイント減。6カ月ぶりに悪化。原油由来の材料の調達難から「化学品製造」(同3.1ポイント減)は2カ月ぶりに下落した。さらに、大手自動車メーカーが中東向けに減産した影響を受け、「輸送用機械・器具製造」(同1.1ポイント減)は、7カ月ぶりに悪化した。また、半導体関連は堅調さを維持しつつも「電気機械製造」(同1.9ポイント減)も5カ月ぶりに下向いた。加えて、「飲食料品・飼料製造」(同1.8ポイント減)は、仕入れコストが上昇するなか、価格転嫁が十分にできず2カ月ぶりに落ち込んだ。

  • 『サービス』(47.8)…同0.8ポイント減。2カ月ぶりに悪化。燃料価格の高騰により「電気・ガス・水道・熱供給」(同5.8ポイント減)は大きく落ち込んだ。「教育サービス」(同2.8ポイント減)は、固定費の増加や物価の先高感による教育支出の見直しから2カ月連続で下落。人件費負担が重くのし掛かる「メンテナンス・警備・検査」(同1.3ポイント減)も2カ月ぶりに悪化した。
    他方、春休み需要などから「旅館・ホテル」(同5.8ポイント増)は50台へ回復した。

規模別:11カ月ぶりに全規模がそろって悪化、「中小企業」は『製造』が不調

  • 「大企業」「中小企業」「小規模企業」が11カ月ぶりにそろって悪化。「中小企業」では、中東情勢の影響を受け、「化学品製造」など『製造』が悪化に転じたほか、『運輸・倉庫』は3年1カ月ぶりに30台に落ち込んだ。

  • 「大企業」(47.3)…前月比1.5ポイント減。5カ月ぶりに悪化。中東情勢による原料費の上昇を危惧する声が聞かれた『建設』が7カ月ぶりに50を下回った。また、燃料コスト高騰が直撃した『運輸・倉庫』の悪化も重しとなった。

  • 「中小企業」(42.1)…同1.4ポイント減。2カ月ぶりに悪化。中東情勢の悪化を背景とした原料費高騰や品薄が生じている「化学品製造」を含む『製造』に加え、3年1カ月ぶりに30台に落ち込んだ『運輸・倉庫』が全体を押し下げた。

  • 「小規模企業」(41.0)…同1.6ポイント減。2カ月ぶりに悪化。「価格高騰による需要の減少」といった声が聞かれた「ガソリンスタンド」など『小売』は30台前半に落ち込んだ。「建材・家具、窯業・土石製品製造」を含む『製造』も押し下げ要因だった。

地域別:2年6カ月ぶりに全10地域が悪化、原油高騰などが悪材料

  • 2023年9月以来2年6カ月ぶりに10地域すべてが悪化した。都道府県別では、悪化が40、改善が6、横ばいが1だった。中東情勢による原油価格の高騰などの影響や懸念が、各地域に広がった。

  • 『南関東』(46.3)…前月比0.9ポイント減。2カ月ぶりに悪化。「ガソリンスタンド」を含む『小売』は6カ月ぶりに40を下回った。また、物価高騰とそれにともなう消費低迷の影響が続く「専門サービス」など『サービス』も全体を押し下げた。

  • 『近畿』(41.7)…同1.8ポイント減。2カ月ぶりに悪化。「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」で「中東方面に貨物を送れない」といった声が聞かれた『卸売』のほか、「化学品製造」が大きく下落した『製造』は、いずれも30台へ落ち込んだ。

  • 『四国』(40.4)…同2.3ポイント減。2カ月ぶりに悪化。「教育サービス」など『サービス』が大幅に低下した。また、原材料の確保を懸念する声があがった「化学品製造」を含む『製造』もマイナス材料となった。

    【今月のトピックス】
    中東情勢に関する企業の見解

  • 原油価格上昇によるコスト負担のほかにも、関連資材の調達難や荷動きの停滞、消費者の生活防衛などを心配する声は多い
  • エネルギー多消費産業にとどまらず、重油や化学肥料を活用する農林水産業、塗料を使用する建設関係といった分野にも波及している
  • 帝国データバンクの調査から原油価格の急騰が、企業や家計にとって大きな負担となることが予想されている
  • 【調査先企業の属性】

1.調査対象(2万3,349社、有効回答企業1万312社、回答率44.2%)

2.調査事項

  • 景況感(現在)および先行きに対する見通し
  • 経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について

3.調査時期・方法

2026年3月17日~3月31日(インターネット調査)

【景気動向指数(景気DI)について】

■TDB景気動向調査の目的および調査項目

全国企業の景気判断を総合した指標。国内景気の実態把握を目的として、2002年5月から調査を開始。景気判断や企業収益、設備投資意欲、雇用環境など企業活動全般に関する項目について全国2万4千社以上を対象に実施している月次統計調査(ビジネス・サーベイ)である。

■調査先企業の選定

全国全業種、全規模を対象とし、調査協力の承諾が得られた企業を調査先としている。

■DI算出方法
DI(ディフュージョン・インデックス〈Diffusion Index〉)は、企業による7段階の判断に、それぞれ以下の点数を与え、これらを各選択区分の回答数に乗じて算出している。

景気DIは、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる(小数点第2位を四捨五入)。また、企業規模の大小に基づくウェイト付けは行っておらず、「1社1票」で算出している。

■企業規模区分

企業の多様性が増すなか、資本金や従業員数だけでは計りきれない実態の把握を目的に中小企業基本法に準拠し、全国売上高ランキングデータを加え下記の通り区分している。

■景気予測DI

景気予測DIは、ARIMAモデルと構造方程式モデルの結果をForecast Combinationの手法で算出。破線は予測値の幅(予測区間)を示している

地域別はこちら】

北海道(道東・日胆)

東海(岐阜・静岡・愛知・三重)

東北(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)

近畿(滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)

北関東(茨城・栃木・群馬・山梨・長野)

中国(鳥取・島根・岡山・広島・山口)

南関東(埼玉・千葉・東京・神奈川)

四国(徳島・香川・愛媛・高知)

北陸(新潟・富山・石川・福井)

九州(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)


各種DI】

項目

DI

前月比

売り上げDI(対前月)

51.9

4.4

売り上げDI(対前年同月)

49.2

0.7

生産・出荷量DI(対前年同月)

47.9

0.7

仕入れ単価DI(対前年同月)

68.2

3.1

販売単価DI(対前年同月)

59.7

1.3

在庫DI(対前年同月)

51.0

0.5

設備稼働率DI(対前年同月)

48.8

0.4

時間外労働時間DI(対前年同月)

50.1

0.8

従業員数DI:正社員(対前年同月)

49.4

-0.2

従業員数DI:非正社員(対前年同月)

49.4

0.0

雇用過不足DI:正社員

60.2

-0.1

雇用過不足DI:非正社員

54.8

0.0

設備投資意欲DI

46.5

-1.5

金融機関の融資姿勢DI

53.6

-0.5

【TDB景気動向調査ご協力企業さま募集】

当調査は全国で2万4千社を超える企業にご協力いただいている、月次の景況調査では国内最大の統計調査です。
ご協力いただける企業さまは、当調査の主旨をご一読のうえ、ご登録フォームから必要事項をご入力してください。

※ご協力企業さまは当調査の「各種DI推移表」や「企業の声一覧」などをご覧いただけます(特典の詳細はこちら

次回発表日は5月8日(金)13時30分を予定しております。

PDFダウンロード

Contact Usお問い合わせ先

担当部署

株式会社帝国データバンク 情報統括部 TEL:03-5919-9343 Email:keiki@mail.tdb.co.jp