レポート

TDB景気動向調査2026年3月(近畿ブロック:滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)

■近畿ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.7

-1.8

中東情勢の緊迫化で、現況・先行きとも大幅悪化

・概況

中東情勢の緊迫化が景気の重荷になっている。特に、原油・石油製品の供給不安は『運輸・倉庫』『製造』など、多方面の業界にマイナスの影響を及ぼし始めているうえ、「中東向けの船が止まり、コンテナ輸出ができなくなった」(飲食料品卸売、兵庫県)といった声のように、輸出面にも支障が出てきている。先行きについても、全面的に見通しが悪化。経済に甚大な打撃を与えた深刻な危機を彷彿とさせるインパクトを秘めている。今春も高い賃上げ率となる見通しも伝えられるなか、企業の景況感は下方圧力が強まっている。

・景気DI

『近畿』は前月比1.8ポイント減の41.7と、2カ月ぶりに悪化した。府県別では「京都」以外の5府県、規模別では全規模が悪化した。悪化幅は全国(42.9、同1.4ポイント減)より大きく、コロナ禍の2022年1月(▲2.5ポイント)以来の大きさとなったが、ブロック別順位は前月と同じ4位をキープした。

・規模別DI

「大企業」(48.0、前月比1.2ポイント減)、「中小企業」(40.6、同1.9ポイント減)とも2カ月ぶりに悪化した。コロナ5類移行後の最低となった「中小企業」の悪化が目立ち、規模間格差は7.4ポイントと再び7ポイント台に。「小規模企業」(39.2、同2.0ポイント減)は7カ月ぶりに40を下回った。

・業界別DI

『その他』を除く9業界が悪化。悪化幅が最大となった『金融』をはじめ、『運輸・倉庫』『小売』『卸売』『サービス』の5業界は直近1年の最低に。中東情勢の緊迫化に関連し、燃料価格上昇の影響が大きい『運輸・倉庫』は4カ月連続で悪化。受注面に変調が生じた『製造』は5カ月ぶりに40を下回った。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(前月比4.3ポイント減)、「6カ月後」(同4.2ポイント減)、「1年後」(同3.6ポイント減)の3指標とも2カ月ぶりに悪化した。悪化幅は、東日本大震災発生後(2011年3月)や、コロナ禍初期(2020年2~4月)以来の大きさ。全府県・全規模・全業界で先行き3指標が悪化した。

■大阪府

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.9

-2.2

中東情勢緊迫化で、景況感が大幅悪化

・概況

中東情勢悪化の影響が色濃く表れた。原油高の影響が顕著な『運輸・倉庫』の悪化幅が大きかったほか、サプライチェーンの『製造』『卸売』『小売』などに悪化が目立った。「ホルムズ海峡が封鎖され、紅海でも運航が厳しいため、中東方面に貨物を送れない」(機械・器具卸売)など、すでに影響が表面化し始めた企業の声も聞かれる。円安が進行するなか、今後は日銀の利上げ観測が強まる可能性もある。物価高による個人消費の低迷も続いており、先行き不透明感が高まるなか、景気はさらに悪化するおそれもある。

・景気DI

「大阪」は前月比2.2ポイント減の41.9と、2カ月ぶりに悪化した。中東情勢悪化に伴う原油高の影響を受け、景況感が大幅に悪化。悪化幅は2023年6月(▲1.9ポイント)以来、最大となった。全国(42.9)との格差(大阪-全国)は▲1.0ポイントに拡大。都道府県別順位は16位から22位に低下した。

・規模別DI

「大企業」は前月比0.1ポイント減の48.5となり、3カ月連続で悪化。「中小企業」も同2.7ポイント減の40.4となり、悪化幅はコロナ禍の2020年4月(▲6.3ポイント)に次ぐ水準となった。「大企業」と「中小企業」との格差は8.1ポイントとなり、統計を開始した2002年5月以降で過去最大となった。

・業界別DI

9業界中7業界で悪化した。『運輸・倉庫』は前月比8.1ポイント減の33.9となり、上海ロックダウンがあった2022年5月(33.8)以来の水準となった。原油高に伴う物価高騰が懸念される『小売』『卸売』『製造』『サービス』も悪化。金利上昇の影響が懸念される『不動産』は6カ月連続で悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(前月比4.9ポイント減)、「6カ月後」(同4.3ポイント減)、「1年後」(同3.9ポイント減)の3指標とも、2カ月ぶりに悪化した。悪化幅は2020年4月(▲4.5~▲6.2ポイント)以来の大きさとなった。規模別では「大企業「中小企業」で3指標とも悪化した。

■京都府

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.0

0.1

2カ月連続の改善も、 規模間格差は4カ月連続の2桁台

・概況

「京都」の景気DIは2カ月連続で改善したが、「中東情勢による仕入価格(石化製品)の大幅値上げや調達難」(卸売)が発生し始めており、今後は幅広い業界への悪影響が懸念される。規模間格差は4カ月連続の2桁台となり、取り巻く環境の変化に対応しきれない中小零細企業の低迷は顕著である。円安や物価高、人手不足といったこれまでの経営リスクに加え、今後は調達難やさらなる物価高、より一層の消費低迷などが予想されるため、景況感は後退局面となる可能性がある。

・景気DI

「京都」の景気DIは、前月比0.1ポイント増の43.0に改善した。『全国』(42.9)との格差は+0.1ポイント(前月▲1.4ポイント)となり、16カ月ぶりに『全国』を上回った。『近畿』では唯一の改善となり、順位は2位(同4位)に上昇、都道府県別の順位も13位(同26位)に上昇した。

・規模別DI

「大企業」は52.7(前月52.3)、「中小企業」は41.4(同41.3)、「小規模企業」は38.9(同41.8)となり、「小規模企業」のみ悪化した。「大企業」と「中小企業」の規模間格差は11.3(同11.0)に拡大、4カ月連続の2桁台となった。規模間格差が4カ月連続で2桁となるのは、2002年の調査開始以降、初めて。

・業界別DI

堅調な観光需要で宿泊施設など『サービス』が改善したほか、地価上昇が追い風となる『不動産』は60に迫る水準に上昇した。一方、物価高の煽りを受ける『卸売』は17カ月連続40割れとなるなど、業界間の格差は大きい。

・先行き見通しDI

「3カ月後」41.9(前月45.4)、「6カ月後」42.3(同46.6)、「1年後」43.4(同46.7)となり、全期間で前月を下回った。業界別では『建設』『製造』『卸売』『小売』『運輸・倉庫』『サービス』は全期間で悪化見通し。規模別では全規模・全期間で悪化見通しとなった。

■兵庫県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.3

-2.0

2カ月ぶりの悪化

・概況

「兵庫」の景気DIは2カ月ぶりの悪化となった。米国・イスラエルによるイラン攻撃の影響を受け、業種別・規模別・先行きなど多くの指標でマイナス判断が顕著となった。「製造コストの高騰のため利益率が減少」(製造)など従来の物価高に加え、さらなる原油高に関するコメントが目立った。また「石油製品が入手しづらくなっている」(建設)や「取引先の生産計画が弱含んでいる」(小売)など物資不足による生産活動や投資計画にも影響が出始めている模様。今後は中東情勢に伴う原油・為替相場と物価動向などの影響が注目される。

・景気DI

「兵庫」の景気DIは前月比2.0ポイント減の41.3で2カ月ぶりの悪化となった。前年同月比では1.8ポイント下回った。全国順位は24位(前年同月20位)。『全国』は前月比1.4ポイント減の42.9で2カ月ぶりの悪化、『近畿』は同1.8ポイント減の41.7で2カ月ぶりの悪化となった。

・規模別DI

「大企業」は前月比3.4ポイント減の45.5で3カ月連続の悪化となった。「中小企業」は同1.8ポイント減の40.7、うち「小規模企業」は同0.9ポイント減の39.3で再び40割れとなった。規模間格差は4.8ポイント(前月6.4ポイント)と前月比で1.6ポイントの縮小となった。

・業界別DI

10業界中9業界で悪化。横ばいだった『農・林・水産』を除いてすべて悪化となった。『製造』は、前月比0.6ポイント減の40.6で4カ月連続の悪化、『運輸・倉庫』は同0.4ポイント減の39.3で3カ月連続の悪化。『建設』も同2.5ポイント減の2カ月連続の悪化となった。

・先行き見通しDI

3カ月後は前月比4.2ポイント減、6カ月後は同4.1ポイント減、1年後は同3.8ポイント減と全指標で悪化。業界別では『農・林・水産』『建設』『不動産』『製造』『卸売』『小売』『サービス』などの7業界で全指標悪化。規模別でもすべての規模で全指標悪化となった。

■滋賀県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.3

-1.6

2か月ぶりに悪化

・概況

「滋賀」の景気DIは前月比1.6ポイント悪化した。企業からは「資材・原油・人件費など色々なものが高騰続きのため、将来の経済情勢が見通せない」(飲食料品小売業)といった声があるなかで、「米国関税の不透明さ、原油価格の不透明さなどで先を見通すことが難しい」(機械・器具卸売業)、「人件費高騰、人材不足、原油値上げや各商品価格の高騰に直面しており、業界の変容も見受けられる」(建材・家具、窯業・土石製品卸売業)などの声が聞かれ、今後の景気動向は一進一退が続くものとみられる。

・景気DI

「滋賀」の景気DIは43.3と前月比1.6ポイント悪化した。業界別では悪化が5業界、改善が2業界、横ばいが2業界となった。近畿ブロック内の2府4県別順位は1位を堅持したなか、全国においては12位(前年同月は7位)となった。

・規模別DI

「大企業」が44.9と前月比5.1ポイント、「中小企業」が43.1と同1.0ポイント、「小規模企業」は42.6と同1.4ポイント悪化した。また、「大企業」は4カ月連続で「中小企業(うち小規模含む)」を上回った。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界中5業界で悪化、2業界で改善、2業界で前月比横ばいとなった。『製造』『卸売』『小売』『運輸・倉庫』『サービス』が悪化した一方で、『建設』『不動産』が改善を果たした。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が41.4(前月44.6)、「6カ月後」が42.1(前月46.0)、「1年後」が43.6(前月45.3)だった。イラン情勢が長引きホルムズ海峡封鎖による影響で原油価格高騰が収まる時期が見通せず、世界的に不安定な経済状況に陥っていることから動向には注視が必要であろう。

■奈良県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

38.1

-4.0

2カ月ぶりの悪化

・概況

奈良の景気DIは前月から4.0ポイント悪化し38.1となった。2月28日に始まった米国とイスラエルのイランへの軍事攻撃による中東情勢の悪化などで、原材料の不足や価格高騰が影響しているが、米国が短期終戦を示唆したことで、情勢の安定化や、高市政権の財政拡張政策を背景とした景気回復に期待が寄せられる。一方、足元では「中東情勢の影響」(建設、製造)、「中国人観光客が見込めない」(サービス)との声が寄せられ、不安定な状況が続くとみられる。

・景気DI

奈良の景気DIは前月から4.0ポイント悪化し38.1となった。都道府県別順位は前月の30位から44位に下降した。近畿は前月比1.8ポイント悪化の41.7、全国では同1.4ポイント悪化の42.9となった。

・規模別DI

「大企業」は45.2と前月比横ばい、「中小企業」は37.2と同4.5ポイント悪化、「小規模企業」は34.4と前月比横ばいとなった。なお、規模間格差(「大企業ー中小企業」)は8.0と前月の3.5から4.5ポイント拡大している。

・業界別DI

『不動産』(41.7)は前月比横ばいを維持した。一方、『卸売』(34.7)は同13.4ポイント、『建設』(45.0)は同5.0ポイント、『小売』(33.3)は同3.4ポイント、『サービス』(45.8)は同2.3ポイント、『製造』(34.8)は同1.6ポイントそれぞれ悪化した。

・先行き見通しDI

3カ月後は38.4(前月44.1)、6カ月後は38.4(同45.4)、1年後は42.1(同46.7)となった。前月に比べると先行き見通しDIはいずれも悪化しているものの、前月に続き当月のDI(38.1)と比較して短期的・中期的にやや改善見通しとなっている。

■和歌山県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

39.2

-1.1

2カ月ぶりに悪化

・概況

「和歌山」は前月比1.1ポイント減の39.2と2カ月ぶりに悪化した。ホルムズ海峡の事実上の封鎖の影響は、プラスチックや合繊繊維など幅広い製品の原料であるナフサおよびナフサ由来のベンゼン・エチレンなど和歌山の強みの産業である石油化学基礎原料を活用する化学品関連業、アパレル関連業(繊維製品加工業)、海南市に集積する日用品雑貨関連業に特に影響を与えそうだ。さらに、石油製品由来の商品は他業種にわたり、4月以降の値上げ通告や供給懸念を伝えられている先もあり、企業業績および生産活動への影響が強く懸念される。

・景気DI

「和歌山」は、前月比で1.1ポイント減の39.2と2カ月ぶりに悪化し、40ポイントを割り込んだ。『全国』(42.9)と『近畿』(41.7)の平均にも及ばず、落ち込みが目立っている。

・規模別DI

「中小企業」が前月比0.1ポイント減の38.7となったほか、「大企業」が同8.1ポイント減の43.8まで下がり、先月50ポイント台を回復した「大企業」がDIを大きく落とし、全体を押し下げる結果となった。

・業界別DI

『建設』(42.2)『サービス』(44.4)『卸売』(36.7)は改善、『運輸・倉庫』(33.3)は前月並みに留まり、『製造』(36.7)と『小売』(27.8)が悪化した。とりわけ、『小売』は前月比8.9ポイント悪化し、現場の販売動向の悪化が懸念される。

・先行き見通しDI

3カ月後が40.9(前月43.9)、6カ月後が41.4(同44.1)、1年後が42.4(同45.1)と前月に比べて全ての見通しが悪化した。他府県に比べて安かったガソリン価格が、和歌山県内でも一時的に190円台の水準に迫るなど、中東情勢の緊迫化の影響が生活面にまでおよび、先行きは不透明感が高まっている。

「近畿ブロック(2026年3月)」の詳細(近畿ブロック:滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)