与信管理の基礎の基礎第1回: 信用リスクとは? 与信とは?
信用リスクとは?
世の中にはたくさんのリスクがあります。火事になるリスク、交通事故に遭うリスク、いろいろなことに失敗するリスク。
それでは、会社における「リスク」にはどういうものがあるでしょうか? 災害によるリスク、為替リスク、カントリーリスク、オペレーショナルリスク、今だと情報漏洩も話題になっています。
あと、もうひとつ大きなリスクが「信用リスク」です。 これは取引先が倒産して、売上債権の全額が回収できなくなって、損失を出してしまうことをいいます。
最近では、取引先が突然廃業になって、商品の材料が手に入らなくなるといったリスクも注目されています。
例えば、次のような会社があります。
工作機器メーカーのA社
年商10億円
経常利益5000万円
その会社には、こんな販売先のお客さまがいます。
電機メーカーのB社
取引1000万円(全体から見れば1%の小口取引先)
売上債権500万円
このお客さまB社が倒産した場合には、売上債権500万円が損失となってしまいますので、それを補填するためには、売上をあと1億円も伸ばさなくてはいけなくなります。
また、信用リスクは3つの要素から成り立っています。
それは、「どれくらいの期間の中で」「どのくらいの割合で起こって」「どれくらいの損失を出すのか」ということです。
「あの取引先は、資金繰りが厳しくなっていて、あと1年ぐらいで、倒産する可能性が高いな。当社が売っているのは毎月少しだけど、支払が遅れているから2ヵ月分が溜まっている。大丈夫かなあ。」と、こんな感じになります。
まずは、それぞれのお客さまが、どれくらい倒産する可能性が高いか低いかを把握することと、売上債権残高を常に把握しておくことが、最初の一歩であり、重要となります。
少し、話は広がりますが、
A社の仕入先に部品メーカーC社があります。A社はC社から自社の工作機器を作る上で重要な部品を仕入れていましたが、実はそのC社の取引先社長が、後継者がいないため会社をたたむことになってしまいました。
部品メーカーのC社
A社にとって重要な部品の供給元
後継者がおらず、事業譲渡先も見当たらないため廃業を決意
倒産ではないものの、重要部品の供給が危ぶまれる危機に陥ってしまいました。
与信管理というと、債権回収がきっちりとできるかが今までのポイントでしたが、今後は安定したサービス提供が継続できるかという点で、サプライチェーン管理も与信管理と同じようにリスクを計測し対処する必要が生じています。
与信とは?与信管理とは?
それでは、危ない会社と、安全な会社、どのように対応すれば良いのでしょうか?
ひとつは、取引をする、しないです。 しかしながら、簡単に取引を止めるわけにもいきません。売上が減って利益もなくなるかもしれませんし、さまざまな事情で止められないかもしれません。
危ない会社と、安全な会社のように、しっかり区分けできれば苦労しませんが、取引先の数だけ安全度のレベルはあるといっても過言ではありません。どの段階になったら、取引を止める・止めないと判断するだけでは、ぎりぎりのところで取引をしている先に対して大きな損失を出す可能性を抱えてしまいます。
そこで考えられる有効な方法は、「与信管理」です。
ここで出てくる「与信」とは、一般的に「商取引において取引相手に信用を供与すること」を指します。
たとえば、商品を販売する場合、商品を先に渡して代金は後で回収することが行われる場合があります。この取引において、販売先に対して商品の代金を回収するまで「信用を与える」ことを「与信」といいます。
この信用を与える間の売上債権を管理することを「与信管理」といい、取引先の危なさの状態に応じて、取引可否や取引の規模を考える方法です。取引先が倒産した場合、具体的な損失となるのは、売掛金や手形などの売上債権の金額分ですから、この残高をコントロールするのです。
安全な会社に対しては、この売上債権残高の上限として許される信用枠を大きく取り、危ない会社に対しては、この信用枠を小さくするという考えです。また、相手の企業規模なども考えて、その信用枠を調整します。
取引先のリスクを管理する時には、この「与信管理」という管理方法が最も簡単であり、効果も大きいので、実務では幅広く採用されています。
次回は、「具体的な与信管理とは?」をお送りします。