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筑波大学との共同研究により「事業所間取引データ」を構築

帝国データバンクでは、企業信用調査をもとに構造化された企業間取引データを用いたビッグデータ解析に着手してきました。一般的に企業は本社で決済を行うため、「カネ」の流れは企業の「本社間」の取引によって捉えます。一方で、企業は事業所ごとに経済活動を行っており、事業所は「物流」の面で重要な機能を有しています。「商流」に加えて「物流」の視点からも企業活動を把握することにより、世の中の経済実態をより正確に捉えようという考えのもと、帝国データバンクは筑波大学との共同研究によって、企業の事業所間取引データを構築しました。



  • 本社間取引=商流:カネの流れ
    事業所間取引=物流:モノの流れ

  • 本社間取引と事業所間取引のイメージ

    本社間取引と事業所間取引のイメージ

    事業所間取引データとは

    事業所間取引データは、事業所間の取引によるつながりを推定し再現したデータです。現在(2017年11月時点)2009年〜2016年の年次データ開発が完了し、各年350万件ほどの事業所間取引データを保有しています。
    本社以外に拠点を持たない企業であれば、カネだけではなくモノのやり取りも本社で行われます。しかし、大企業のように複数の事業所を構える企業の場合は、取引関係を考える上で、事業所の存在を考慮しなければなりません。実際に、本社間と事業所間の取引データを比較したところ、全取引データのおよそ3分の1に相当する34.1%の取引が、事業所間で行われているという推定結果が出ています。

    カネは企業の本社間、モノは企業の事業所間で取引される

    企業と企業が取引を行う際に、一方がモノやサービスを提供し、他方がその対価としてお金を支払います。その取引の流れは、カネの流れ(商流)とモノの流れ(物流)に大別されます。前述の通り、カネは企業の本社間でやり取りされるのに対し、モノは多くの場合、本社と異なる場所にある工場で製造され、取引先の工場や倉庫へと運ばれていきます。つまり、モノは本社間ではなく工場などの事業所間でやり取りされます。そのため、カネの流れを捉えたい場合には本社間の取引関係に、モノの流れを捉えたい場合には事業所間の取引関係に着目する必要があります。


    商流・物流


    帝国データバンクが保有しているデータベースは、企業の信用力(≒支払い能力)を測る目的で行われる調査が元となっているため、必然的に「カネ」の視点から作成されており、事業所間での取引関係や物流量に関しては、既存のデータから推定する必要があります。そこで、帝国データバンクが保有する企業間取引データと、各企業の事業所の所在地情報等を組み合わせて、事業所間の取引関係を推定しました。

    取引関係を推定する上で「企業間取引は取引に伴う輸送費などの取引コストを削減するため、互いに近接した事業所間で行われている」という仮説を設定しています。企業間取引において近接性が働いていることは、学術的な理論だけではなく経済産業省等が実施している工業立地動向調査などのアンケート調査からも明らかとなっています。それに加え、帝国データバンクの信用調査時に、取引先企業のどの工場と取引をしているかが判明した事例が816件あり、そのうち85.7%に相当する699件の取引において、最近接事業所と取引をしていることがわかりました。

    現在、この推定をより確かなものとすること、そして事業所間取引データの活用方策についての検討を主眼に、研究を進めています。

    大企業の事業所は地域経済を支える重要な存在

    企業の本社間の取引関係に加え、事業所間の取引関係が推定によって把握されると、「地域から大企業の工場が撤退した際に、どれだけの取引が失われたのか」ということがわかるようになります。

    一般的に、多くの大企業は本社以外に複数の事業所を構えています。そして、それら大企業の事業所は、地域経済を支える中核的な存在でもあり、地元の中小企業にとって重要な納品先でもあります。さらに、地域から見た場合、大企業の事業所は、雇用を創出している源泉であり、例えば大企業の工場が閉鎖や撤退した場合は大量の雇用が地元から失われることになります。事業所ごとの従業員数を算出できれば、どれだけの雇用が失われたのかを定量的に評価することが出来ると考えられ、その点は今後の研究課題として取り組んでいきます。

    事業所間取引データの活用と今後 

    事業所単位での企業間のつながりを見るためには、本社間の取引関係だけではなく事業所間の取引関係も併せて見ていく必要があります。実際に、自治体の方々からも、事業所単位での取引関係を把握したいというニーズが非常に多くあり、事業所間取引データがRESAS(地域経済分析システム)※に搭載されるきっかけにもなりました。

    事業所間の取引関係は、推定によって構築されたものではありますが、我が国の経済を支える企業活動を、商流だけでなく物流の観点からも分析できるようになります。また、国および地方自治体の職員の方々が現地で企業に対してヒアリングを行う際に、データを元に効率よく対象を選定できるようなるなど、事業所間取引データの登場によって新たな価値が生まれることが期待されており、用途開発を含め、今後も共同研究を通じて社会への貢献を目指して取り組んでいきます。

    ※RESAS(地域経済分析システム)とは、“まち・ひと・しごと創生本部(内閣官房)”より提供される情報支援ツールで、地方自治体における地方版総合戦略を策定される際に活用されています。

    筑波大学 堤盛人研究室
    データソリューション企画部 先端データ分析サービス課 菊川 康彬

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