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2008/09/01中小企業のM&A活用法第2回 : M&Aのプロセス(1)〜M&Aの具体的な手順〜

1 M&Aの具体的な手順

一口にM&Aと言っても、目的や企業規模などによって採るべき形態や手法は異なり、目的が明確でも、M&Aによって得られる効果が期待通りのものになるようなスキーム策定をしてから実行に移さないと、結果的に時間と労力を浪費しただけで意味のないものになってしまいます。その意味において、法務面、税務面、会計面、事業面などを多角的に検討して具体的なスキームを描く作業は、M&Aを成功に導くために極めて重要なプロセスと言えるでしょう。

ところで、「いざM&Aを実行しよう」と考えた際に、具体的にはどのようなプロセスを踏んで進めていけばいいのでしょうか。スキームや形態によって違いはありますが、一般的なプロセスは以下のようなステップで進むことが多いです。

M&Aの一般的なプロセス

1. 目的の明確化

まず、当たり前ですが、「そもそも何のためにM&Aを実行するのか」を明確にする必要があります。例えば、事業継承問題を考えた場合、「事業の継続」や「従業員の雇用確保」が目的であれば、後継者候補の育成・採用も選択肢の一つで、必ずしもM&Aを選択する必要がない場合もあります。

2. 買収先(売却先)の選定

M&Aの目的が明確になったら、次は具体的な対象先の選定に入ります。 買収対象の選定には、対象業種、エリア、規模、買収予定額などから対象となる会社のリスト(ロングリスト)を作成し、その中から更に絞り込んだリスト(ショートリスト)を作成する方法や、自社の情報網で入手した売却候補先情報を利用する方法などが考えられます。自社のネットワークで対象先が見当たらない場合は、M&A専門の仲介会社、銀行、証券会社などに情報提供を依頼するのも有効な手段で、近年はこのような紹介によるM&Aが主流になってきているようです。

売却先(買い手)の選定については、一部業種で自ら同業他社にアプローチするケースも聞かれますが、情報漏えいリスクや信用不安リスク、また条件交渉が難しいなどの理由から、M&A専門の仲介会社や銀行、証券会社に候補先の選定を要請するのが一般的です。

3. 対象先に関する情報収集・スキーム策定

対象先の概要、財務状況、事業内容など検討に必要な情報を入手します。仲介会社や金融機関などを利用する場合、これらの会社から情報を入手することができます。また、上場会社であれば、有価証券報告書やホームページの情報、非公開会社であれば調査会社の報告書なども有効な情報となります。

次に、収集した対象先の情報をもとに、M&Aを実行した場合のスキームを策定します。財務情報、税務、法務、そして事業内容などを考慮して最適な方法を検討するほか、買収(売却)金額の算定(企業価値算定)をして投資回収の検討も行います。

4. 対象先とのコンタクト・条件交渉・詳細検討

直接対象先と面談を実施し、事前に入手した情報で不足している部分のヒアリングや現地の様子などを確認し、具体的な条件面のすり合わせを行います。

仲介会社を利用すると、面談の設定など煩雑な作業や直接話しづらい条件面の事前打診など、具体的条件の摺り合わせを進めてくれるため、スムーズに条件交渉を行うには有効なケースが多くなります。

5. 基本合意書の締結

ここまでの交渉でおおむね条件面での合意が得られた場合、基本的な合意事項を文書にまとめて捺印をします。通常この文書は「基本合意書(LOI=Letter of Intent、MOU=Memorandum of Understanding)と呼ばれています。この時点では、まだ正式契約ではないため、法的拘束力を持たない旨を明記されるケースが多くあります。

6. デューディリジェンスの実施

基本合意書を取り交わした後、買収対象に対してデューディリジェンス(=詳細調査、以下DD)を実施して、それまで入手している情報と乖離していないか、隠れた買収リスクはないか、ディスカウント要因となる事実はないかなどの確認を行います。DDは、買収サイドが自社の買収リスクを回避するため実施するのが普通で、中小企業のM&Aにおいては、通常、法務DDや会計DD、事業DDなどを実施します。所要期間は企業規模によってまちまちですが、中小企業のM&Aの場合は2日から1週間程度が一般的です。

7. 最終契約書の締結・譲受(譲渡)の実行

DDの結果判明した事実を考慮して、基本合意書で合意した内容(特に価格)を再度検討し、最終的な条件確定を行って、ようやく譲渡契約書など正式契約書の締結、譲受(譲渡)の実行に至ります。

2 M&Aにおけるアドバイザーの役割

M&Aはおおむね上記のようなプロセスを経て進みますが、実際に進めようとするとそう簡単にはいかないケースが大半です。対象先の選定には広範囲な情報ネットワークが重要であり、具体的な条件の交渉を進める際は当事者同士では合意に至らないことも多いようです。また、M&Aスキームの策定については、法務や税務、会計の知識が必要で、弁護士や税理士、会計士など専門家の力を借りないと難しいのです。

さらに、条件交渉(仲介)や全体のスケジュール管理、契約書や検討資料などドキュメント類の作成、財務内容や事業内容の分析、企業価値の評価、その他さまざまなアレンジメント作業など、案件を進めるために必要な作業内容は多岐にわたります。

このような作業は、M&Aに精通している大企業の財務担当者や専門セクションの担当者ならばともかく、中小企業の経営者や財務担当者にとってはとても厄介な問題です。M&AアドバイザーやFA(ファイナンシャル・アドバイザー)は、このような担当者に代わってM&Aの各プロセスにおいて必要な作業を実行し、案件の成立に向けてアレンジをする役割を果たしています。

3 アドバイザーと仲介業務

M&Aのアドバイザー業務を行う際、アドバイザーの立ち位置には次の2つがあります。

欧米企業や大規模案件、上場会社などの場合、買収(譲渡)金額や条件面での隔たりが大きいと、株主やステークホルダーにとって交渉の行方は大きな問題となります。この場合、売り手と買い手の立場の「利益相反関係」(一方の利益は他方の不利益)は極めて重要なため、基本的に売り手、買い手ともそれぞれのアドバイザーを立て、それぞれの立場で専門的な見地から助言を受けるのが一般的です。

一方、中小企業のM&Aの場合、基本的には売り手と買い手の立場が「利益相反関係」にある点は同じですが、一般的にオーナー(または創業者)の意向が強いため、各々の立場で権利(条件)を主張し続けるより、双方の希望を調整する役割が重要となるのです。そのため、双方の主張を調整してまとめる役割を担う仲介の立場からのアドバイスのほうがうまく案件をまとめる機能を果たせるといえます。

このように、アドバイザーの選定については、案件の規模や状況によって最適な選択をすることがM&A成功の秘訣といえるでしょう。

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