ビジネス講座

2008/08/15中小企業のM&A活用法第1回 : 中小企業とM&A

中小企業におけるM&Aの現状

従来M&Aとは、大企業や上場会社の実行する特別な経営手法として理解されていました。2005年初頭のライブドアによるニッポン放送買収騒動や、村上ファンドなど投資ファンドの台頭により、マスコミでの露出度も飛躍的に増加し、一時はワイドショーでもM&Aの手法が取り上げられるほどでした。

その結果、中小・零細企業の経営者にとっても「M&A」という言葉自体が身近なものとなり、幾度にも及ぶ商法改正の集大成である会社法の施行も追い風となって、近年、M&Aは重要な経営戦略として認識されつつあります。

実際には、従前から関連会社の子会社化や、取引先・同業者の救済合併、マーケットリーダーによる代理店の整理などに、「株式譲渡」や「吸収合併」、「営業権譲渡」を主体とした企業の合併や買収は行われてきましたが、近年においては、M&A専門仲介会社や、メインバンク、さらに証券会社などを情報源として、戦略的に買収先(譲渡先)を探すケースが目立って増加しています。

今後は、中小・零細企業においても、従来の自社のみの情報によるM&Aではなく、経営戦略の一環として、このような外部情報機関を効果的に利用したM&Aが増加していくものと考えられます。

M&Aが必要になるケースとは

中小・零細企業の経営者にとって、後継者問題の解決は大きな経営課題のひとつとなっています。これは、現在60才を越えてなお経営の第一線にとどまらなければならない創業オーナー兼経営者にとっては深刻な経営課題です。

しかしながら、人材確保が難しい中小・零細企業にとって適切な後継者候補を確保するのは容易ではありません。一般求人誌への掲載や人材紹介会社の利用は人材採用コスト負担が大きいほか、自社で収集できる人材情報の不足もあって、親族など身近な人材が確保できる場合を除き、いざ後継者の育成を考え始めても会社の経営を任せられる人材がいないという悩みはTDBフュージョンにも多く寄せられています。

一方、若い経営者にも後継者の問題に直面する場合があります。若くして事業が軌道に乗り会社が成功し、会社(事業)を売却したい場合や、別の事業への転換を図りたい場合、いわゆる「アーリーリタイアメント」のケースなどです。この場合、多くの会社では社内に「ナンバー2社員」が育っているものですが、オーナーとして会社を引き継ぐ、すなわち「会社の株式を買い取る」となると、経営者としての資質が備わっていない場合が多いことに加えて、資金的負担が大きく、容易に解決できません。

また、これらのケースに共通の問題として「借入金の個人保証」の問題があります。多くの中小・零細企業は出資・増資による「直接金融」ではなく、金融機関からの融資による「間接金融」に頼った経営をしています。この場合、会社の経営者=代表者が個人保証をしていることが多く、後継者が巨額の債務を肩代わりすることが事業承継をより困難なものにしています。

このようなさまざまな経営課題を抱えている中小・零細企業のオーナー経営者にとって、M&Aは極めて大きな威力を発揮します。

実際にTDBフュージョンが手がけたM&Aを例にとって、具体的ケースで説明します。

後継者難の解決への適用例

R社は、設立からおよそ50年を超える社歴を有する塗料の商社で、特殊な塗料や接着剤を主たる商材として運営されてきました。数年前に会社の経営が苦しくなっていた際、外部より会社立て直しに社長として招かれたX氏が、その手腕を発揮して経営を立て直してきましたが、同氏も65歳を超えて後継者問題に頭を悩ませていました。数人の後継者候補はいずれも問題があり、経営を任せるには至らず、株主(創業者ほか)からも会社の譲渡を迫られるなどひっ迫した状況にありました。

TDBフュージョンへ相談が持ち込まれた際、会社は次の2つの選択肢を検討していました。

事業継承の選択肢

(1)会社の清算

この場合は、株主の手取りが少なくなることに加え、従業員の雇用や事業の継続、お客さまの引き継ぎが大きな問題です。

(2)株式の譲渡

この場合は、(1)に比較して株主の税金負担が軽く、法人もそのまま残ります。

当然(2)を選択し、買収してくれる候補先を選定しました。

数社とのマッチングを経て、紆余曲折の末に機械類の商社Y社への100%株式譲渡を進めることとなり、株主の同意を得て円満に株式譲渡が実行されました。

このケースでは、経営者=創業オーナーではありませんでしたが、典型的な「後継者難によるM&A」の実例と言えます。R社の場合、内部留保に厚く、借入負担も数百万円程度でしたが、この借入についての個人保証問題もあり、社内での後継者選びは難しい状況でした。また、経営を任せるべく外部から採用した人材も期待した通りの役割を果たすに至らず、結果的に自社単独での事業継承ではなく、M&Aによる株式譲渡を選択しましたが、経営の後継者問題はY社から人材を得ることで解決し、株主も売却益を得ることができました。社員も継続雇用となり、顧客も守られただけでなく、Y社のネットワークを利用してさらなる事業展開が見込める状況となりました。

事業継承にM&Aを利用して成功した一例といえるでしょう。

このように、経営課題の解決のためにM&Aを活用すると、さまざまなメリットがあることがお分かりいただけたと思います。

次回は、M&Aを実行する具体的プロセスについて説明します。

お問い合わせ先

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