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2013/11/29IFRS実務対応 1 最新情報第32回:企業会計審議会 IFRS関連会議(1)

最新情報の第32回、第33回では2回にわたり、2013年3月26日に開催された、金融庁企業会計審議会総会・企画調整部合同会議の内容(*1)を取り上げます。
今回の会議では、IFRS関連の議題として、(1)カナダ及び韓国におけるIFRSの適用状況の検討、(2)IFRS財団のガバナンス改革等、(3)日本経済団体連合会(経団連)からのIFRS対応の検討状況についての報告がなされました。

第32回では、このうち(1)カナダ及び韓国におけるIFRSの適用状況と(3)経団連からのIFRS対応の検討状況のうち、総論的な部分を取り上げます。

経団連からの報告では、実際のIFRS適用企業の実務対応参考事例が示されており、非常に有益ですので、最新情報の第33回で各論の部分を取り上げることとします。

(*1)同会議の資料については金融庁ホームページからダウンロードすることができます。
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/soukai/20130326.html

カナダ・韓国におけるIFRSの適用状況

金融庁は2012年10月の審議で、委員から「IFRS適用から1年が経過するカナダと韓国の実態の検証」を求められたため、これに答える形で、2011年からIFRSを適用している両国の現状と課題について説明しています。
まず、カナダに関する説明の中では、2012年8月29日に公表された、カナダ会計基準審議会(AcSB)報告書を引用しつつ、次のような課題があると指摘しています。

カナダだけではなく、料金規制業種企業(例:電力会社)の会計処理に関する特定のガイダンスがないことがIFRS採用の重大な障壁となっている国があります。料金規制業種企業へのIFRSへの適用については、「規制上の繰延(又は差異)勘定」(規制資産及び負債)の認識が大きな論点ですが、我が国でも大きな論点となることが想定されます(*2)。

また、ガイダンスの欠如については、IFRS適用時の各国共通の課題(下記、経団連からの報告も参照)ですが、この点については、IFRS解釈指針委員会(IFRS IC)と各国の基準設定主体の関係が今後どのように発展していくかに依存している面もあります。

他方、韓国におけるIFRSの適用状況については2012年6月に韓国金融監督院(FSS)が公表した報告書を引用しつつ、次のようなIFRS適用による実務上の影響があると指摘しています。

この中で興味深いのは、IFRSを任意適用する非上場企業数が増加したという報告です。FSSの分析では、2011年の1142社から2012年は1403社へ増加したと報告されています。この点については、我が国のIFRS任意適用の要件を考えるにあたり(下記経団連からの報告も参照)大いに参考になる点かと思います。

(*2)なお、IASBは料金規制業種企業に関する情報要請を公表していました。
https://www.ifrs.org/Current-Projects/IASB-Projects/Rate-regulated-activities/Request-for-information-March-2013/Pages/Request-for-Information-and-comment-letters.aspx

経団連報告 IFRS適用の意義と課題(総論)

経団連は、2012年8月に設置したIFRS実務対応検討会の中で、「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)」(2012年7月)の中で示された「IFRS適用の実例の積み上げ」や「任意適用企業において新たに把握される問題点等」を議論しており、今回の会議では、その報告書を提示するとともに、意見を述べています。
IFRS実務対応検討会の検討で明らかになった事項として、以下の3点が報告されています。

上記1.の点については、プリンシプルベースで詳細な実務指針・適用指針のないIFRSにおいて、現行J-GAAPにおける適用指針等を一つの考え方の拠り所とする実務があるのではないでしょうか(*3)。さらに、経団連からは、ASBJの機能強化による運用・解釈が困難なものへのタイムリーなガイダンスの作成、実務のデータベース化による実務の共有の仕組みの構築の要望が出されています。
また、上記3.の開示負担に関しては、IASBに対するIFRS自体の注記開示負担の簡素化と併せて、金融商品取引法上の単体開示の廃止を求めています。
これらの検討課題と併せて、経団連からはIFRSの任意適用に関する要件の緩和について要望が出されました。任意適用要件についてはメールマガジン第72号でご紹介していますが、任意適用の要件が非常に厳しく、このために現実的に任意適用できる企業が限定されてしまうことへの懸念から、このような要望が出されているものと考えられます。

(*3)例えば、繰延税金資産の回収可能性に関する監査委員会報告第66号など。この点について「繰延税金資産の回収可能性」も参照してください。

経団連報告 IFRS適用の意義と課題(総論)

さて、経団連からの報告では、IFRS適用企業が考える対外的及び内部管理上の観点からの意義が報告されています。
まず、対外的な観点からのIFRS適用の意義として、投資家からも好意的な反応を受け、導入当初としては一定の効果が得られたという肯定的な意見が報告されています。他方、内部管理上の観点からはいくつかの課題が挙げられました。

例えば、業績管理に関する実務上の課題として、PL表示区分に、従来日本企業の多くが管理指標として用いてきた経常損益区分がないことからこれに変わる経営管理指標の検討、OCIのノンリサイクリングに伴う当期純利益概念の変質、連単分離項目の業績管理上の取扱いを課題として挙げる企業が多いと報告されています。
この業績管理に係る課題への対応として、IFRS税引き前当期純利益から一部補正した損益を経営管理指標として活用するといった独自の対応を検討している企業もあるという対応が報告されています。この点については例えばメールマガジン71号でご紹介した、中外製薬社の「Core営業利益」という経営管理指標が参考になると思います。
なお、開示項目の増大や基準のアップデートに関する問題への対応については、多くの企業が監査法人とアドバイザリー契約を締結して課題の解決を図っていると報告されています。

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