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2011/04/05IFRS実務対応 1 最新情報第11回:IFRSと重要性(1)〜重要性に関する2つの考え方〜

今回はIFRSにおける「重要性」について考えてみたいと思います。
一般的にIFRSはプリンシプル・ベース(原則主義)による会計基準であるといわれ、会計基準上、例外的な処理に関する記述は非常に少なくなっています。このことから、IFRSが適用された場合、「出荷基準による売上の計上は一切認められない」「連結財務諸表上、親会社と子会社の決算日は全て統一しなければならい」「全てのリース資産はオンバランスされなければならない」といった主張もなされています。

しかし、IFRSが原則的な処理のみを記述し例外的な処理を明記していない理由は、「例外を認めない」という事ではなく、概念フレームワークを含めたIFRSの原則の趣旨の範囲内において「経営者の判断」に委ねるという趣旨であるということにあるのです。従って、IFRSに定められた原則的な処理を行わず、例外的な処理を行う場合には「その処理を採用した理由とその合理性」を監査人及び投資者に説明できるようにすることが肝要です。
そこで、この「経営者の判断」を行うにあたってキーとなるのが「重要性」です。
従って、ある会計事象について、原則的な方法を採用するか否かの局面においては、

というロジックが成立することになります。
なお、一般的には「重要性」は金額ベースで表現されることになります。

重要性に関する2つの考え方

では、実際に「重要性」はどのようにして考え、算定すればよいのでしょうか。ここでは、(1)企業価値をベースに考える方法と(2)監査法人が監査上採用する重要性をベースに考える方法の2つの方法をご紹介したいと思います。

■企業価値をベースに考える方法
この方法の基本的な発想は、(IFRSの想定する)投資家が究極的に必要としている情報は「企業価値」であるから、重要性の決定もまた、投資家への意思決定の影響度を考慮して行うべきであるという考え方に基づいています。

IFRSを適用しているEUではこの方法を採用している企業もみられます。

■監査法人が監査上採用する重要性をベースに考える方法
企業価値(投資家の意思決定への影響)をベースに重要性を考える方法以外に、監査法人が監査上採用する重要性を参考にする方法も考えられます。監査法人が採用する重要性は一律に決定されるものではなく、各々の監査法人のメソドロジーによって異なってきます。このメソドロジーは監査法人にとってのトップ・シークレットであることが多いため、直接この重要性を知ることは難しいですが、監査基準委員会報告書等(*1)を参考にすることでどのような考え方をもって監査法人が重要性を決定しているかを理解することができます。
この方法では、基本的に財務諸表の特定の項目(勘定)に対して一定の比率を乗じた金額を重要性として捉えます。

(*1)例えば、監査基準委員会報告書42号「監査の計画及び実施における重要性」(中間報告)や内部統制監査実施基準等を参照してください。

IFRSにおける例外的な処理

さて、IFRSにおいて重要性基準が問題になる例(IFRSの基準通りではない=簡便的or例外的な処理)をいくつか考えてみましょう。

等々、探せばいくらでも出てきます。
これらの処理は、実務上どのように対応すればその採用が認められるのでしょうか? 実務上は、「厳密な処理をした場合とそうでない場合で、どのくらいの金額の影響が財務諸表に出てくると見積もられるのか?」、そして、「その影響は財務諸表全体にとって重要なのか?ひいてはそれが財務諸表利用者である投資者の経済的意思決定に重要な影響を与えるのか?」を考える必要があります。

(*2)ケーススタディ3:連結の範囲を参照してください。

実務上の対応例

上記の例について、原則的でない処理を採用しようとする場合の実務的な対応については次のような対応が考えられます。

(*3)この対応例は企業会計審議会資料「IFRSに関する欧州調査報告」(2010年6月8日)より抜粋したものです。同報告ではこの他にもIFRSの原則的な処理によらない欧州企業のIFRS適用状況がいくつか示されています。
(*4)同上
(*5)企業インタビュー2(後半)でも、インドにおける事例を紹介しています。

まとめ

さて、IFRS適用上の重要性の決定に際しては、監査人と合意を早期に得ておくことが大変重要です。
また、金額的な重要性によると「重要性がない」と判断された項目について、「質的な重要性」の観点からの検討が必要になることもあることに留意が必要です。
さらに、重要性基準は特定の財務数値に対して一定の率を乗じて算定するものですが、その算定方法を頻繁に変更しない(重要性基準採用の継続性)ことも肝要です。

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