倒産集計

2023年 1月報

「賃上げ」倒産 今後表面化の可能性
9カ月連続の倒産増加、リーマン後で最長に

倒産件数は546件、9カ月連続の前年同月比増加
負債総額は507億6900万円、1990年1月以来33年ぶりの500億円台

倒産件数 546件
前年同月比 +13.3%
前年同月 482件
負債総額 507億6900万円
前年同月比 ▲25.3%
前年同月 679億7000万円

概況・主要ポイント

  • ■倒産件数は546件(前年同月482件、13.3%増)と、9カ月連続で前年同月比増加。500件台と低水準で推移しているものの、1月としては3年ぶりの前年同月比増加となった
  • ■負債総額は507億6900万円(前年同月679億7000万円、25.3%減)と、2カ月連続で前年同月から減少。1990年1月以来33年ぶりの500億円台を記録した
  • ■業種別にみると、7業種中4業種で前年同月比増加。サービス業(前年同月120件→143件、19.2%増)は11カ月連続で前年同月から増加し、この連続増加期間は2009年8月以来13年5カ月ぶりの長さ。また、小売業や製造業では食品関連の倒産増加が続く
  • ■態様別にみると、破産は508件発生。約14年ぶりに5カ月連続の前年同月比2ケタ増
  • ■規模別にみると、中小零細規模で増加。一方、「100億円以上」の倒産は8カ月ぶりに0件
  • ■業歴別にみると、業歴10年未満の新興企業は166件発生し、6カ月連続で大幅増が続く
  • ■地域別にみると、9地域中6地域で前年同月比増加。近畿(前年同月123件→154件、25.2%増)や中部(同50件→84件、68.0%増)を中心に増加目立つ

  • ■業種別

    7業種中4業種で前年同月比増加 食品関連産業で増加が続く

    業種別にみると、7業種中4業種で前年同月を上回った。サービス業(前年同月120件→143件、19.2%増)は11カ月連続で前年同月比増加となり、この連続増加期間は2009年8月以来13年5カ月ぶりの長さとなった。特に老人福祉事業では、年度ベースで累計115件に達し、すでに過去20年で最多を更新した。小売業(同90件→109件、21.1%増)では、洋品雑貨・小間物などの織物・衣服・身の回り品小売(同13件→22件)で増加したほか、食品スーパーなど飲食料品小売(同13件→18件)は6カ月連続で増加した。製造業(同46件→62件、34.8%増)でも食料品・飼料・飲料製造(同4件→13件)が大幅に増加するなど、総じて食品関連の倒産増加が目立っている。一方、卸売業(同59件→54件、8.5%減)では、5カ月連続の2ケタ増加から一転、6カ月ぶりに前年同月比減となった。

    ■倒産主因別

    「不況型倒産」は436件、構成比は79.8%

    主因別にみると、「不況型倒産」の合計は436件(前年同月388件、12.4%増)で9カ月連続の増加、構成比は79.8%(対前年同月0.7ポイント減)だった。
    最多は「販売不振」の430件(前年同月382件、12.6%増)で、構成比は78.8%(対前年同月0.5ポイント減)を占めた。販売不振を業種別にみると、サービス業(前年同月88件→111件、26.1%増)が最多、小売業(同79件→93件、17.7%増)と続く。
    このほか、前年同月から40%以上の大幅減となった「その他の経営計画の失敗」(前年同月24件→13件、45.8%減)は、2019年8月以来3年5カ月ぶりに3カ月連続で減少した。一方、「経営者の病気、死亡」(同22件→23件、4.5%増)は4カ月ぶりの増加となった。

    ※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計

    ■倒産態様別

    破産は508件発生、約14年ぶりに5カ月連続で前年同月比2ケタ増

    倒産態様別にみると、破産と特別清算を合わせた「清算型」倒産は526件(前年同月466件、12.9%増)で、10カ月連続の前年同月比増加となった。また、民事再生法と会社更生法を合わせた「再生型」倒産は20件(同16件、25.0%増)で、2カ月ぶりに前年同月から増加した。
    破産は508件(前年同月441件、15.2%増)で、2009年2月以来約14年ぶりとなる5カ月連続での前年同月比2ケタ増を記録した。一方、特別清算は18件(同25件、28.0%減)と2カ月連続で前年同月比2ケタ減少となった。
    このほか、民事再生法は20件(前年同月16件、25.0%増)発生した。このうち、17件を個人事業主が占め、法人は3件のみにとどまった。

    ■規模別

    中小零細規模で増加目立つ 「100億円以上」の倒産は8カ月ぶりに0件

    負債規模別にみると、負債「5000万円未満」の倒産は334件(前年同月294件、13.6%増)で、構成比は61.2%を占めた。また、「1億円未満」は84件(同69件、21.7%増)、「5億円未満」では107件(同94件、13.8%増)発生するなど、中小零細規模での増加が目立った。一方、10億円以上の倒産は減少したなか、「100億円以上」は8カ月ぶりに発生しなかった。
    資本金規模別では、「個人+1000万円未満」が378件(前年同月321件、17.8%増)発生。

    ■業歴別

    業歴10年未満の新興企業は166件、6カ月連続で前年同月比2ケタ増加

    業歴別にみると、業歴「30年以上」が176件(前年同月181件、2.8%減)で最多、構成比は32.2%(対前年同月5.4ポイント減)を占めた。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は4件(前年同月1件)発生した。
    また、「3年未満」(前年同月19件→36件、89.5%増)、「5年未満」(同37件→39件、5.4%増)、「10年未満」(同68件→91件、33.8%増)など業歴10年未満の新興企業(同124件→166件、33.9%増)は、2009年4月以来13年9カ月ぶりに6カ月連続の前年同月比2ケタ増となった。新興企業を業種別にみると、小売業(同24件→45件、87.5%増)が最多、このうち飲食料品小売(同1件→11件)や飲食店(同12件→20件)で増加が目立った。

    ■地域別

    9地域中6地域で前年同月比増加、近畿や中部を中心に増加目立つ

    地域別にみると、9地域中6地域で前年同月を上回った。近畿(前年同月123件→154件、25.2%増)は、大阪(同70件→80件)をはじめ京阪神3府県での大幅増による影響もあり、4カ月連続の増加となった。また、中部(同50件→84件、68.0%増)は、愛知(同22件→46件)や静岡(同10件→16件)などが増加し、全体でも2007年5月以来15年8カ月ぶりに前年同月比60%以上の増加となった。九州(同40件→51件、27.5%増)は、建設業(同9件→12件)や製造業(同4件→8件)の増加もあり、2008年10月以来14年3カ月ぶりとなる4カ月連続での前年同月比2ケタ増を記録した。
    一方、関東(前年同月190件→172件、9.5%減)など3地域では前年同月から減少した。

    注目の倒産動向-1

    ■「従業員退職型」人手不足倒産動向

    「賃上げ倒産」急増の前兆 従業員の転退職で倒産、3年ぶり増加
    高まる賃上げ機運 賃上げ難の企業で人材流出進み、経営に行き詰まる懸念も

    コロナ禍からの経済再開が進むなか、従業員を自社につなぎとめることができずに経営破綻した倒産が足元で増加傾向に転じた。2022年に判明した人手不足倒産140件のうち、従業員や経営幹部などの退職・離職が直接・間接的に起因した「従業員退職型」の人手不足倒産は、少なくとも57件判明した。多くの産業で人手不足感がピークに達した2019年以来、3年ぶりの増加となった。22年の人手不足倒産に占める「従業員退職型」の割合は40.7%となり、21年(46件/111件、41.4%)に続き高水準で推移した。
    2022年の「従業員退職型」を業種別にみると、人手不足倒産に占める割合が最も高いのは建設業で50.0%と半数を占めた。建築士や施工管理者など、業務遂行に不可欠な資格を持つ従業員の離職により、事業運営が困難になった企業などが目立つ。人手不足感が高止まりするサービス業も、人材の獲得競争が激しいソフトウェア開発や老人福祉などの業種で多い。
    2023年も既に1万品目超の食品で値上げが予定されるなど物価上昇が止まらず、労働者からは賃上げを求める声が強まっている。賃金アップを求め人材流動性も高まり、大手のみならず中小企業でも月額5000円の大幅ベアで呼応するケースも出てきた。他方、賃上げしたくても収益力に乏しく「無い袖は振れない」中小企業も多い。厳しい経営に嫌気がさして役員や従業員が退職したケースもあり、動向は二極化の様相を呈している。転職市場などを筆頭に、賃上げによって良い人材を高給で囲う動きが強まるなか、満足に賃上げされないことを理由に従業員が辞めることで経営に行き詰まり、倒産する中小企業の増加が懸念される。

    ■コロナ融資後倒産

    「コロナ融資後倒産」、本格返済始まる3月を目前に急増 月間最多の45件

    コロナ融資後倒産は、2023年1月に月間最多の45件(前年同月16件、181.3%増)発生し、利息も含めた元本返済が本格スタートする3月を目前に大幅な増加となった。また、2022年度累計は354件と、前年度(156件)を大幅に上回っている。「焦げ付き」に相当するコロナ融資損失総額は推計で358億円を超え、国民一人約300円の負担が発生している計算になる。

    ■人手不足倒産

    2023年1月は12件発生 2022年度は前年度超え確実

    人手不足倒産は、2023年1月において12件(前年同月10件、20.0%増)発生し、7カ月連続で前年同月を上回った。業種別にみると、「建設業」が6件と全体の半数を占めたほか、「運輸・通信業」、「製造業」での倒産が目立った。また、2022年度累計(2022年4月-23年1月)は116件に達し、前年度(118件)からの増加が確実となった。

    注目の倒産動向-2

    ■「放課後デイサービス(放デイ)事業者」倒産動向

    障がい児支援、ずさん経営で倒産相次ぐ 求められる“質“の壁
    「放デイ」事業者の倒産急増、昨年は過去最多に

    障がいを持つ子どもへの「福祉の在り方」が問われている。障がいのある就学児童の支援を目的とした「放課後デイサービス(放デイ)」運営企業の倒産は、2022年に14件発生し、前年の6件から2倍超に急増。民間企業が本格的に参入し始めた12年以降、最多を更新した。
    放課後デイサービスは、何らかの障がいを抱える6〜18歳までの子どもが利用可能な福祉施設で、夏休み・冬休みなどの長期休暇等で利用できる施設を指す。2012年の児童福祉法改正以後、支援が必要な子どもの増加を背景にニーズが拡大し、参入する企業が相次いだ。一方、営利目的に走る施設の増加が問題視され、サービスの質を上げる目的で18年に報酬改定が行われた。その結果、利用者獲得競争が激化していた上に、有資格者の人員配置やサービス面で課題のあった企業では報酬が減額され経営が行き詰るケースが増加。また、収益を重視した結果、利用者や職員数などを水増しした不正請求などが発覚し、事業継続を断念したケースも増えている。実際に、これまでに倒産理由が判明した放デイ事業者29社のうち、利用者の低迷が原因となった倒産は34.5%を占め最多だった。一方、水増し請求のほか、不適切な職員配置などに起因した施設内の怪我やトラブルが原因で行政処分を受けた「法令違反」によるものも31.0%を占め、ずさんな経営体制により事業継続が立ち行かなくなったケースも多い。
    足元では、2024年の法改正で、子どもの障がい特性を踏まえた適切な発達支援を促さない放デイ事業所は、公費による支援対象から除外される見通しなど、経営環境はさらに変化する。質の高い支援やサービスが提供できない放デイ事業者の淘汰がさらに進む可能性がある。

    ■物価高(インフレ)倒産

    2023年1月は50件発生 集計開始後初の50件に到達

    物価高(インフレ)倒産は、2023年1月において50件(前年同月6件、733.3%増)発生した。最多であった前月の48件を上回り、7カ月連続で過去最多を更新、初の50件に達した。業種別にみると、「製造業」(12件)が最多、特に食品関連の業種が多くみられた。そのほか、燃料高や資材価格高騰の影響が続く「運輸・通信業」や「建設業」で倒産が目立った。

    ■後継者難倒産

    2023年1月は49件発生 過去最多件数と同水準に達するペースで推移

    後継者難倒産は、2023年1月に49件(前年同月29件、69.0%増)発生し、3カ月ぶりに前年同月比2ケタ増となった。業種別では、「製造業」が12件と最多となり、「卸売業」や「サービス業」が続く。また、2022年度(2022年4月-23年1月)は405件に達し、現状のペースで推移した場合、過去最多の2019年度(479件)と同水準に達する見込み。

    今後の見通し

    ■倒産は9カ月連続増加 リーマン後で最長、14年ぶりの増加局面へ

    2023年1月の企業倒産は546件発生した。前年に続いて低水準でのスタートとなったものの、9カ月連続で前年同月を上回った。増加期間はリーマン・ショック後の08年6月−09年8月(15カ月間)以来約14年ぶりの増加局面が続いている。負債総額は507億6900万円となり、前年同月から25.3%の大幅減となるなど、企業倒産は一層の小規模化が進んだ。  
    ただ、今後もこうした低水準での推移が続くかは不透明だ。倒産発生が抑制されている背景には、「私的整理ガイドライン」をはじめ、企業の再生や整理の場面で「法的整理の回避」が可能な選択肢が豊富に揃った点が、結果的にプラスとなった側面もあろう。ただ、大多数はコロナ融資など「資金繰り破綻の延命」政策によって支えられた部分が大きい。足元では今春にピークを迎えるコロナ融資の返済に加え、原材料価格の高騰、実質賃金の減少による内需の冷え込み懸念もある。今年3月以降、企業倒産の増勢がさらに強まる可能性は拭い切れない。

    ■値上げ相次ぐ食品産業、バリューチェーン全体で「値上げは悪」からの脱却急務

    ケチャップ、ソース、冷凍食品、チルド麺…2023年も値上げラッシュが止まらない。2023年中に判明した、食品主要195社の値上げ品目数は、1月末時点で累計1万2000品目に達した。値上げ幅は数%から40%超まで様々。前年より3カ月早い4月中に1万品目を突破することが確定するなど、値上げペースが加速している。前年同時期の値上げに比べると、23年は2倍超のペースで推移しており、「値上げラッシュ」は月を追うごとに常態化の兆しをみせている。  
    値上げした食品の99%は、原材料高騰など外的なコストアップが要因だ。こうした局面では、原料調達から製造、中間流通、販売を含めた食品産業のバリューチェーン(VC)全体で価格転嫁が欠かせない。ただ、現状では最終消費者の抵抗感が強く、コストアップと価格転嫁の間で板挟みとなっている。昨年12月時点で、100円のコストアップに対し販売価格へいくら転嫁できたか調査した結果、食品産業のVCで最も転嫁が進んでいたのは飲食料品卸売で50円だった。他方、食品スーパーなど川下の食料品小売では37円と低く、食品製造では36円、飼料や燃料などのコストが急増している野菜、畜産など川上の農林水産では25円、物流を担う運輸・倉庫は全産業でワースト3位の20円にとどまる。こうした状況を重く見た政府は、正当な理由がない値上げ交渉の拒否は「買いたたき」や「優越的地位の濫用」に当たるとして、強く是正を迫っている。とはいえ、特に消費者に近接する食品産業では、値上げが消費者の買い控えを招き、却って売上減につながるのではという恐怖感が根強い。「値上げは悪」という意識の緩解が先決だ。
    昨年は食品製造業の倒産が3年ぶりに増加したほか、コスト増を価格に転嫁できない物価高倒産も食品産業が総じて上位を占める。増加したコストを売価に反映し、得た利益を従業員の給与に回す、公正なVCの構築が食品産業こそ急務だ。適正な価格転嫁を受け入れなければ、賃上げどころか食品産業、生産農家などVC全体の萎縮を招き、低い食料自給率が課題として残る日本の食糧事情をさらに悪化させる遠因にもなることに留意しなければならない。

    ■「従業員離職型」の人手不足倒産に「賃上げ」倒産、今後表面化する可能性も

    インフレ圧力が強まるなか、例年以上に注目されるのが「賃上げ」だ。リクルートによれば、昨年10−12月期に前職比10%以上の賃金アップとなった転職者の割合は過去最高の33.4%を記録した。物価上昇を契機に「人材流動性」が高まり、賃金を押し上げる好循環がようやく訪れようとしている。実際に、最大40%の年収アップを表明した大手アパレル、5%超の賃上げや、パートも含めた時給アップを行う企業も表れ、優良人材を高賃金で獲得する機運が高まっている。  
    ただ、賃上げ可能な企業は、業績堅調な大企業や、高い市場シェアを持ち価格コントロールで優位な業界トップ企業、独自技術で高い付加価値を生み出す企業などに限られ、価格転嫁すらままならない多くの中小企業では賃上げ余力に限度がある。高い賃金を支払う企業へ人材が移動するなか、人材確保のために賃上げしたものの収益確保が見合わず、最終的に経営困難に陥った「賃上げ」倒産も、過去にも複数発生している。従業員の退職で事業が傾いた「従業員退職型」の人手不足倒産とともに、賃上げが絡んだ倒産が今後表面化する可能性がある。

    詳細はPDFをご確認ください 2023年度1月報 別紙号外リポート

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