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2013/02/25IFRS実務対応 1 最新情報第29回:IFRS13公正価値測定に関する教育マテリアル(非上場株式の評価(その5) )

IFRS財団が2012年12月21日に公表したIFRS13に関する教育マテリアル「IFRS9号『金融商品』の範囲に含まれる市場価格のない資本性金融商品の公正価値の測定」(“Educational material on fair value measurement Measuring the fair value of unquoted equity instruments within the scope of IFRS 9 Financial Instruments(*1) ”)(以下、マテリアル)を、IFRS13「公正価値測定」と併せて取り上げます。

この公正価値測定に関する教育マテリアルは、IFRS13の適用について、章ごとに公表される予定となっていますが、今回公表されたマテリアルでは公正価値で測定される市場価格のない資本性金融商品(いわゆる、非上場株式)の評価を取り上げています。

ここでは、IFRS13の基本的な考え方を紹介したうえで、今回公表されたマテリアルの骨子をご紹介します。

※次回は、マテリアルで示されている公正価値評価のアプローチについて、設例も参照しながら具体的にご紹介します

(*1)原文はIFRS財団のウェブサイトを参照して下さい。

IFRS13「公正価値測定」の概観

マテリアルの内容に入る前に、まずはIFRS13「公正価値測定」の内容について、マテリアルの内容を理解する上で必要な点を簡単にレビューしたいと思います。

IFRS13「公正価値測定」は2011年5月に公表(*2) され、IFRSの各基準書における測定の基礎や開示情報として求められる公正価値の概念や算定手法について共通のガイダンスを提供しています。IFRS9も公正価値の測定に関してはIFRS13を参照しており、マテリアルはこの具体的な適用に際してのガイダンスとみることもできます(*3) 。

IFRS13は、資本性金融商品について市場価格が存在しない場合には、公正価値の測定に際して評価アプローチを用いることを求めています。そして、IFRS13は以下の評価アプローチのうちの1つ又は複数の整合した方法を用いることを求めています。

また、IFRS13では以下のような「公正価値ヒエラルキー」を規定しています。

これはいわば公正価値を算出する際の情報や仮定(インプット)の信頼度を示すもので すが、公正価値ヒエラルキーでは、適用する評価技法の優先順位は定められておらず、評価技法の適用において使用するインプットのヒエラルキーが示されています。これは、特定の評価技法が、ある状況において他の評価技法よりも適切となる可能性があるためです。よって、適用する評価技法を選択する際には、資産又は負債の出口市場と、評価対象である資産又は負債の性質を考慮する必要があります。

IFRS13はこのように公正価値測定にあたっての評価アプローチや情報のヒエラルキーを示しているものの、逆に言うと、IFRS13は、公正価値で測定すべき資産・負債の対象や、いつの時点で公正価値測定を行わなければならないかに関して具体的なガイダンスを提供していないということになります。

このような観点からも今回公表されたマテリアルは実務上の参考となると言えます。

(*2)なお、適用開始時期は2013年1月1日以後開始年度ですが、早期適用は可能となっていました。

(*3)ただし、マテリアルはIFRS13の解釈指針となることを意図するものではないことがマテリアルの冒頭に明記されています。

マテリアルの概要(1)−評価アプローチ・評価技法

それでは、今回公表されたマテリアルの概要をみていきます。

まず、マテリアルでは、非上場株式の公正価値測定にあたって一般的に用いられる評価アプローチ・評価技法として以下を挙げています。

マテリアルは上記の評価アプローチ及び評価技法について、特定の方法を使用することを定めるのではないとしていますが、ここでは、上記IFRS13の概要で示したコスト・アプローチの採用は想定されていないという点に注目する必要があります。

なお、IFRS13においては米国基準ASC820「公正価値測定」において簡便法として容認されている一部のヘッジファンドやプライベートエクイティファンドに対する投資の純資産価値法(NAV)の使用を認めていません。

マテリアルの概要(2)−評価アプローチ・評価技法の選択

マテリアルは企業が評価アプローチ・評価技法を選択するに当たって特に考慮すべき事項として(a)投資先の非上場株式の特徴、(b)企業が合理的に利用可能な情報を挙げています。

例えば、投資先の将来キャッシュ・フローに関する情報を入手できない場合でも、比較対象会社に関する情報を入手できる場合には、ディスカウント・キャッシュ・フロー法よりもマルチプル法の適用が適切となる場合があり得ること(マーケット・アプローチ)、投資先からの配当がある場合には配当割引法(DDM)(インカム・アプローチ)の適用が適切となる場合もあることが示されています。

マテリアルの概要(3)−投資者が有する情報が限られている場合の適用

マテリアルは投資者が有する情報が限られている場合(例えば、投資者が有する情報が不完全で陳腐化しているような場合)であってもIFRS13の公正価値測定の目的は達成できるとしています。すなわち、情報が限定的な場合であっても、上記のような評価アプローチ・評価技法を適用して非上場株式の測定を行うことができるということが示されています。

【参考文献】

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