2021年 10月報
倒産件数は512件、10月としてバブル期以来32年ぶり低水準
負債総額は967億2700万円、3カ月連続の前年同月比増
倒産件数 | 512件 |
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前年同月比 | ▲20.9% |
前年同月 | 647件 |
負債総額 | 967億2700万円 |
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前年同月比 | +44.5% |
前年同月 | 669億4800万円 |

主要ポイント
- ■倒産件数は512件(前年同月比20.9%減)と、5カ月連続の前年同月比2ケタ減少となった。また、1999年以前と比較しても、バブル期の1989年(588件)以来32年ぶりの低水準
- ■負債総額は967億2700万円(前年同月比44.5%増)と、3カ月連続の前年同月比2ケタ増
- ■負債額最大の倒産は長田事業(株)(静岡県、破産)の約112億円
- ■業種別にみると、7業種中6業種で前年同月比減少。サービス業(131件、前年同月比13.8%減)、小売業(112件、同31.7%減)など対個人サービス業種を中心に、緊急事態宣言を含む人流抑制策が全国で解除された影響もあり減少が目立った
- ■主因別にみると、「不況型倒産」の合計は397件(前年同月比20.4%減)と、5カ月連続で前年同月を下回った。構成比は77.5%(前年同月比0.4ポイント増)を占める
- ■負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は310件(前年同月比27.9%減)、構成比は60.5%を占める
- ■地域別にみると、全地域で前年同月比2ケタ減少。全地域で減少したのは、10月としては22年ぶり。近畿(120件、前年同月比30.6%減)、北海道(10件、同28.6%減)、北陸(13件、同27.8%減)、中国(20件、同23.1%減)の4地域は、前年同月比20%以上の大幅減
- ■態様別にみると、破産と特別清算を合わせた「清算型」倒産の占める割合が98.2%となり、2017年8月に並び2000年以降で最高。また、民事再生法は施行後初めての一ケタ台
- ■人手不足倒産は12件(前年同月比33.3%増)発生、3カ月ぶりの前年同月比増加
- ■後継者難倒産は41件(前年同月比46.4%増)発生、2カ月ぶりの前年同月比増加
- ■返済猶予後倒産は28件(前年同月比31.7%減)発生、2カ月ぶりの前年同月比減少
■件数・負債総額
倒産件数は512件、10月としてバブル期以来32年ぶりの低水準
倒産件数は512件(前年同月比20.9%減)と、5カ月連続の前年同月比2ケタ減少となった。また、1999年以前と比較しても、バブル期の1989年(588件)以来、32年ぶりの低水準。
負債総額は967億2700万円(前年同月比44.5%増)となり、長田事業梶i静岡県、破産、負債約112億円)など大型倒産の発生もあり、3カ月連続の前年同月比2ケタ増加となった。
■業種別
不動産業を除く6業種で前年同月比減少
業種別にみると、7業種中6業種で前年同月比減少となった。なかでもサービス業(131件、前年同月比13.8%減)では、宿泊業(5件、前年同月15件)などの減少が件数を押し下げた。小売業(112件、同31.7%減)も、特に飲食店(47件)で5カ月連続の前年同月比2ケタ減少。緊急事態宣言を含む人流抑制策が全国で解除された影響もあり、対個人サービス業種を中心に減少が目立った。また、製造業(53件、同15.9%減)、卸売業(65件、同18.8%減)は、5カ月連続で減少が続いた。建設業(99件、同9.2%減)も前年同月を下回ったものの、月次ベースでは3カ月連続の増加となっている。
■主因別
「不況型倒産」は397件、構成比は77.5%
主因別にみると、「不況型倒産」の合計は397件(前年同月比20.4%減)と、5カ月連続で前年同月を下回った。構成比は77.5%(前年同月比0.4ポイント増)を占めた。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を「不況型倒産」として集計
■規模別
負債5000万円未満の構成比60.5%
負債規模別にみると、負債5000万円未満の倒産は310件(前年同月比27.9%減)、構成比は60.5%を占めた。このうち業種別では、サービス業(87件)が構成比28.1%(前年同月比2.8ポイント増)を占め最多、小売業(74件)が同23.9%(同4.9ポイント減)で続く。
資本金規模別では、資本金1000万円未満(個人事業主含む)の倒産が351件(前年同月比23.2%減)、構成比は68.6%を占めた。
■地域別
全地域で前年同月比2ケタの減少、うち4地域は前年同月比20%以上の大幅減
地域別にみると、全地域で前年同月比2ケタの減少となった。全地域で減少したのは、10月としては22年ぶり。関東(193件、前年同月比16.8%減)は、栃木県を除く1都5県で減少。特に東京都(90件)は、飲食店(7件、同42.0%減)などの減少により、10月としては32年ぶりの100件割れとなった。近畿(120件、同30.6%減)では、製造業(11件、同38.9%減)の減少や、小売業(21件、同58.0%減)が半減したこともあり、全体も大きく減少した。また、近畿に加え、北海道(10件、同28.6%減)、北陸(13件、同27.8%減)、中国(20件、同23.1%減)の計4地域で、前年同月比20%以上の大幅減となった。
■態様別
「清算型」倒産の割合は2000年以降最高、民事再生法が施行後初めての一ケタ台
態様別にみると、破産は474件(構成比92.6%)、特別清算は29件(同5.7%)となった。この結果、破産と特別清算を合わせた「清算型」倒産の占める割合が98.2%となり、2017年8月に並び2000年以降で最高だった。
また、民事再生法は9件で、2000年4月の施行後初めて一ケタ台を記録した。
■特殊要因倒産
人手不足倒産
12件(前年同月比33.3%増)発生、3カ月ぶりの前年同月比増加
後継者難倒産
41件(前年同月比46.4%増)発生、2カ月ぶりの前年同月比増加
返済猶予後倒産
28件(前年同月比31.7%減)発生、2カ月ぶりの前年同月比減少
※特殊要因倒産では、主因・従因を問わず、特徴的な要因による倒産を集計
■景気動向指数(景気DI)
景気DIは41.5、個人消費関連が大きく改善
2021年10月の景気DIは前月比1.6ポイント増の41.5となり、2カ月連続で改善した。
10月の国内景気は、緊急事態宣言等が対象となっていたすべての地域で解除され、人流抑制の緩和による人出の増加が押し上げ要因となった。ワクチン接種の普及とともに、小売業や個人向けサービス業など個人消費関連の景況感が大きく改善。半導体製造装置などの好調が続いたほか、住宅ローン減税の期間延長やグリーン住宅ポイントの駆け込み需要などは不動産業のプラス材料となった。他方、半導体不足や海外の感染拡大などによる供給制約は自動車産業などに悪影響を及ぼした。また燃料価格の上昇も下押し材料だった。
国内景気は、個人消費関連などが大きく改善するなか、2カ月連続で上向いた。
今後は回復傾向で推移
今後の国内景気は、緊急事態宣言等の解除にともなう人流の増加とともに、設備投資意欲の高まりなどで生産・消費両面の経済活動が緩やかに正常化へと向かうとみられる。また5Gを含む通信インフラの環境整備や旺盛な自宅内消費の継続、SDGsへの対応もプラス材料である。さらに半導体関連需要の増加や政府の経済対策も見込まれる。特に自動車の挽回生産の動きが強まることも景気の押し上げ要因となろう。他方、感染拡大防止と経済活動の活発化に向けたバランスが重要となる。また半導体不足の長期化や原油価格の動向、供給制約にともなう収益力の二極化の動き、外国為替の動向も注視する必要がある。
今後は、経済活動の正常化への動きが見込まれるなか、回復傾向で推移するとみられる。
今後の見通し
■長引く自動車の減産、下請企業の経営に打撃 部品製造などで経営破綻が顕在化
2021年10月の倒産件数は、前年同月から20.9%減の512件となった。10月としてはバブル期の1989年以来32年ぶりの低水準、2021年の10カ月中9カ月で前年同月比2ケタ減を記録しており、倒産の発生は大幅に抑制された状態が続いた。各金融機関による万全の資金繰り対策で多くの中小零細企業に資金が行き渡り、「手元資金の枯渇」という最悪の事態はひとまず回避できていることが要因として大きい。負債総額は967億2700万円で前年同月から44.5%の大幅増となったが、一部の大型倒産が全体を押し上げたためで、小規模企業の倒産が圧倒的多数を占める状況に変化はない。
ただ、注意したい動きもある。その一つが、大手自動車メーカーの大規模な減産にともなう中小企業への影響だ。国内の自動車生産は半導体不足などから大幅な減産が続き、そのしわ寄せは下請企業にも波及。日本クラント(栃木県、民事再生、負債31億8500万円)をはじめ、部品メーカーの経営破綻も表面化した。部品メーカーでは工場の稼働率が低い状況でも、増産に備えて人員を抱えるなど厳しい経営環境を強いられるケースが少なくない。状況が好転しなければ、全国3万社にも上る自動車サプライチェーンにさらなる影響を及ぼしかねない。
■じわじわ進む円安、「経営上のリスク」として対応せざるを得ない状況が迫る
東京外国為替市場では11月1日、終値で1ドル=114円台を記録した。今年に入り、10カ月で10円近い円安が進んだことになる。円安は輸出企業の利益を押し上げ、海外子会社の収益を増加させるなどのプラス効果があり、グローバル展開を行う大企業などでは賃上げや設備投資を前向きにさせる「好材料」となる点で歓迎される動きだ。ただ、こうしたメリットは国内の多くを占める中小企業で広がりにくく、原材料などの輸入価格上昇によって内需型の製造業や小売業の利益押し下げを迫られるなど、デメリットの側面も大きいのが事実だ。
過去に急激な円安が進行した2014〜15年にかけては、円安により海外からの仕入価格が上昇し採算が取れなくなるなどの「円安関連倒産」が最高で月48件発生した。これらのケースでは、足元の急激な円安進行が直接の原因と言うよりは、従前から収益力悪化などで経営体力が弱っていたところ、円安で各種コストがじわじわと上昇し、コスト増加分を吸収できなくなった末に倒産へと追い込まれた事例がほとんどだ。これは長引くコロナ禍で収益力が低下している2021年現在の中小企業情勢と共通する部分が多い。ただ、当時と異なるのは、本来追い風を受けるはずの自動車産業で不調が続くなど、円安による恩恵の享受が現時点で乏しい点だろう。
日本銀行の黒田総裁は10月28日、金融政策決定会合後の記者会見において、現在の円安についてはファンダメンタルズを反映した動きとして当面静観する構えを見せた。そのため原材料・エネルギーコスト増加、それを引き起こす円安への動きは当面続くとみられ、再び円安を経営上のリスクとして意識し対応せざるを得ない状況が迫っている。
■年間件数は「超低水準」55年ぶり6000件割れ視野も、足元で「コロナ融資後倒産」発生
こうした情勢ではあるものの、倒産件数の急激な増加は少なくとも年内はないだろう。金融庁などは9月10日、金融機関などに対して引き続き事業資金に必要な融資については柔軟に応じるよう通達を出しているほか、10月31日の衆議院議員選挙でも岸田政権率いる与党圧勝もあり、資金供給を中心とした中小企業への支援姿勢に変化はないとみられる。そのため、年間の倒産件数は引き続き抑制される形で7000件を下回るのは確実で、場合によっては6000件を割り込む可能性も出てきた。年間倒産件数が5000件台となれば、2000年以降では最少、1999年以前と比較しても66年の5919件に次ぐ55年ぶりの記録的な「超低水準」となる。
ただ、日銀・黒田総裁は来年3月末に期限を迎える新型コロナ特別オペについて、さらなる延長についてはこれまでと異なり「何も決めていない」と発言した。日銀はこれまで政府と一体となって中小企業の資金繰り支援を進めてきたが、ここにきてのトーンダウンは資金供給策を中心とした支援内容が、今後転換や修正される可能性を内包しているようにも映る。
もっとも、緊急の資金調達として導入したコロナ融資の返済期限が多くの中小企業でスタートしているなか、事業再建の道筋が見えないまま経営破綻した企業も多い。実際に、新型コロナの制度融資を使用した企業の倒産が発生しており、特に飲食店や建設業、アパレル関連での発生が目立つ。政府の手厚い金融支援は確実に今後縮小に向かっていくなか、将来的な事業再建が見込めないままコロナ支援に依存し続ける経営不振企業が倒産という形で徐々に表面化するとみられるが、それらもしばらくは「倒産リスク」として燻る状況が続く。

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