2017/12/8
全国企業の財務分析(2016年度)
建設業の生産性、リーマン前の約3倍
〜 人手不足が顕著な小売、運輸・通信業で伸び鈍化 〜
はじめに
2016年度の決算は、円高の影響から海外売上高が減少する一方で、高採算品へのシフトや資源価格の回復などを背景として増益企業が相次いだ。特に非製造業は、値上げによる収益力アップで減収ながらも過去最高益となった企業が散見された。
2012年12月に始まった景気回復局面がついに「いざなぎ景気」を超え、戦後2番目に長い好景気となることが見込まれている。しかし、海外景気の回復や日銀による異次元金融緩和が企業収益を下支えする一方で、足元では緩やかな景気回復は実感に乏しいとの声もある。
帝国データバンクでは、リーマン・ショック前の2007年度(2007年4月期決算〜08年3月期決算)から2016年度(2016年4月期決算〜17年3月期決算)までの10期間の財務分析(「一人当たり経常利益」(生産性)、「自己資本比率」(安全性)、「売上高経常利益率」(収益性)の3指標)を実施した。
今回の調査は2016年12月に続き5回目。
■企業規模は、総資本別(「1億円未満」「1億円以上10億円未満」「10億円以上100億円未満」「100億円以上」)
■財務比率の各数値は、帝国データバンクの企業財務データベース「COSMOS1」をもとに作成した『全国企業財務諸表 分析統計』(第52〜60版)による
■決算期の対象は、2007年度(07年4月〜08年3月期)〜16年度(16年4月〜17年3月期)の10期
■財務比率は、「一人当たり経常利益」(生産性)、「自己資本比率」(安全性)、「売上高経常利益率」(収益性)の3指標。
1. 一人当たり経常利益=(経常利益/期末従業員数) 2. 自己資本比率=(自己資本/総資本)×100
3. 売上高経常利益率=(経常利益/売上高)×100
■業種別では「建設」、「製造」、「卸売」、「小売」、「運輸・通信」の5業種を取り上げた
調査結果
- 1 「一人当たり経常利益」 全業種で改善、「建設業」はリーマン前の約3倍
全5業種でリーマン・ショック前の2007年度を上回った。特に「建設業」は2007年度の2.79倍と好調を維持した - 2 「自己資本比率」 全産業平均でリーマン・ショック前を上回る
全産業平均でリーマン・ショック前(2007年度)を上回った。「小売業」は総資本「1億円未満」で1.17ポイント改善したものの3年連続債務超過となった - 3 「売上高経常利益率」 総資本「1億円未満」で前年度を下回る
全産業平均で2.72%となり、前年度から0.15ポイント増加。総資本「1億円未満」は1.06%と2015年度(1.12%)をわずかながら下回り、全区分で唯一悪化した
