レポート

医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2025年)

医療機関の倒産、休廃業・解散 2年連続で過去最多を更新

SUMMARY

2025年の医療機関(病院、診療所、歯科医院)の倒産は66件、休廃業・解散は823件となり、それぞれ過去最多を更新した。物価高や賃上げによる経営悪化や経営者の高齢化を背景に今後も高水準な件数推移が見込まれる中、26年度の診療報酬改定が動向にどう影響するのか注目が集まる。

【カウント対象について】
・法的整理かつ負債額1000万円以上の「病院」「診療所」「歯科医院」の経営を主業とする事業者
・倒産件数、休廃業・解散件数は事業者数であり、施設数ではない


医療機関の倒産66件、過去最多を更新

2025年の医療機関(病院・診療所・歯科医院を経営する事業者)の倒産(法的整理、負債1000万円以上)は66件となり、最多だった2024年(64件)を上回って過去最多となった。

業態別では、「病院」が13件、「診療所」が28件、「歯科医院」が25件で、3業態ともに過去2番目に多い件数となり全体を押し上げた。

負債総額は242億1900万円(病院:180億5000万円、診療所:47億4400万円、歯科医院:14億2500万円)で前年(282億4200万円)から14.2%減少したが、3年連続で200億円を超えた。

倒産主因を分析すると、「収入の減少(販売不振)」が48件(構成比72.7%)で最も多く、「経営者の病気、死亡」(5件)、「設備投資の失敗」「経営計画の失敗」(各3件)が続いた。

帝国データバンクが行った「全国病院経営動向調査(2024年度)」では、民間病院約900法人のうち、本業である医療活動の利益を示す営業損益が「赤字」となった法人は全体の61.0%を占め、前年度(54.8%)から6.2ポイント上昇。診療所(約700法人)の赤字法人比率(38.4%)を大きく上回った。 

こうした背景には、近年の医療機器・器具、メンテナンス費用、食材費(給食費)、光熱費などの高騰や人材採用費の増大、賃上げ対応などに伴う大幅なコスト上昇に対し、診療報酬の改定が連動していなかったことがある。こうした状況を受け、2026年度診療報酬改定は、物価高や賃上げに対応するための本体部分について30年ぶりに3%を超える大幅引き上げとなることが決まった。医療機関の収益改善が進むことが期待され、倒産動向にどう影響するのか注目が集まる。

医療機関(病院・診療所・歯科医院)の倒産件数推移(2000年~2025年)

負債額最大は「佐鳴湖病院」など運営の福慈会(三重)

2025年に発生した倒産66件を分析すると、態様別では「破産」が63件、「民事再生法」が3件(病院、診療所、歯科医院各1件)となり、破産が全体の95.5%を占めた。

都道府県別では、東京(8件)、大阪・千葉(各7件)、神奈川・兵庫(各5件)、北海道・福岡(各4件)と続き、23都道府県で発生した。業態別でみると「病院」は北海道・千葉(各2件)、「診療所」は東京(5件)、大阪・福岡(各3件)、「歯科医院」は大阪(4件)、東京・千葉・兵庫(各3件)で多かった。 

負債額別では、「1億円未満」が31件(構成比47.0%)で最も多く、「1億円~5億円未満」(26件、同39.4%)、「5億円~10億円未満」(4件、同6.1%)が続き、1件当たりの平均負債額は「病院」が13億8800万円、「診療所」が1億6900万円、「歯科医院」が5700万円となった。

業歴別では、「30年以上」(25件、構成比37.9%)、「20年~30年未満」(17件、同25.8%)、「15年~20年未満」(9件、同13.6%)の順となり、「病院」では20年未満の倒産は発生しなかった。

負債額最大は、2025年2月に東京地裁へ自己破産を申請した医療法人福慈会(三重)。グループ持ち株会社の主導のもと、買収を重ねて事業規模を拡大し、近時は「佐鳴湖病院」(浜松市、精神病床230床)、「夢眠ホスピタルさいたま」(さいたま市、精神・一般病床130床)、「メンタルホスピタルかまくら山」(鎌倉市、精神病床90床)の3病院のほか、三重・東京・埼玉・新潟などに診療所(8施設)や介護老人保健施設(3施設)を展開。2024年3月期の年収入高は約40億1000万円を計上していた。しかし、従前からグループの運営や資金管理が杜撰であったほか、設備投資負担や運営スタッフ確保に関わる人件費の上昇などで資金繰りが悪化していた。負債は約66億7900万円。

医療機関の業態別負債額・業歴分布(2025年)
医療機関の主な倒産(2025年)

休廃業・解散は823件で過去最多を更新、倒産の12.5倍に

2025年に休業・廃業・解散が判明した医療機関は823件となり、2024年(723件)を上回って過去最多を更新した。10年前(2015年=359件)と比べて2.3倍、20年前(2005年=139件)と比べて5.9倍に増加している。

業態別では「病院」が15件、「診療所」が661件、「歯科医院」が147件で、「診療所」と「歯科医院」が過去最多を更新した。また、2025年の休廃業・解散件数は、同年の倒産件数(66件)の12.5倍となり、業態別にみると「病院」が1.2倍、「診療所」が23.6倍、「歯科医院」が5.9倍となった。

休廃業・解散件数が増加し続けている最大の要因は、医療機関全体の80.3%を占める「診療所」の経営者の深刻な高齢化と後継者不足にある。帝国データバンクが全国の診療所経営者の年齢分布(年齢が判明した1万553人対象、2026年の誕生日の年齢基準)を調べたところ、70歳以上の経営者が全体の56.7%を占め、歯科医院(3281人を対象、70歳以上の経営者26.1%)を大きく上回った。

歯科医院は2020年から2023年まで80件台となっていたが、2024年以降100件超えとなり急増している。カルテの電子化に向けた動きに伴い、廃業を決意する経営者が増えていることなどが要因になっているとみられる。

全国の施設数は、「病院」が7998施設、「診療所」が10万5657施設、「歯科医院」が6万5600施設 (2025年10月時点、厚生労働省データ)で、診療所の数が圧倒的に多い。さらに2015年以降の10年間で「病院」が484施設減少、「歯科医院」が3156施設減少しているのに対し、「診療所」は4539施設増加しており、特に競争が熾烈だ。

医療機関の倒産件数・負債総額、休廃業・解散件数の推移(2000年~2025年)

今後の見通し

2025年の医療機関の倒産件数(66件)、休廃業・解散件数(823件)は、ともに過去最多を更新し、倒産、休廃業・解散の合計は889件に達した。

病院の経営状況の悪化や診療所における経営者の高齢化、後継者不在などを大きな要因として2026年も引き続き医療機関の倒産、休廃業・解散は高水準で発生し続けることが予想される。一方で2026年度診療報酬改定が3%を超える大幅引き上げとなることで、病院の収益改善がどこまで進むのか注目が集まる。

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