Episode File 01信頼の 始まる場所

「お電話ありがとうございます。帝国データバンクの萩原でございます」 入社2年目の業務部・萩原が1日にとる電話の本数は、50本にも上る。 業務部は、調査依頼の受注や問い合わせ対応など、お客さまの声を直に聞くことができる、いわば“TDBの顔”だ。お客さまと業務部をつなぐ1本1本の電話から、企業と企業の信頼関係が生み出されていく。
「納期が遅れるって、いったいどういうことなんだ!」 その日初めてとった電話から、突然怒声が飛んできた。昨日、調査報告書の納期が遅れると連絡したお客さまの上司だった。新規取引先との契約に調査報告書が至急必要なのに、遅れるとは何事だというクレームだった。
「笹島様、大変申し訳ございません」 なるべくお客さまの名前を呼ぶというのは、同じ課の先輩から教わった。顔が見えない分、少しでも相手の気持ちに近づこうとする心がけが大切なのだ。お客さまからの電話をひとまず切ると、萩原はすぐに受話器に手をのばした。各部署に進捗状況を確認し、少しでも早く調査報告書をお届けするためだ。調査報告書の作成には、多くの部署が関わっている。萩原はお客さまの焦った声を思い出しながら、各部署に随時連絡をとって状況を確認し、お客さまへ報告した。
調査報告書を無事にお届けした後も、そのお客さまからは何度も電話がかかってきた。「この項目は何を表しているのか?」「この図はどのように読み取ればいいのか?」 こうした問い合わせに対し、一つひとつ丁寧に説明した。自分も入社したばかりの頃はよくわからなかったものだ。その頃を思い出し、専門知識がなくても相手が理解できるよう、なるべく簡単な表現を使うようにしている。
あれから1年。
「あの~萩原さん、いる?」 そのお客さまからは名指しで電話がかかってくるようになった。そんなとき、“自分たち一人ひとりの細かい配慮や丁寧な対応の積み重ねが、お客さまからの信頼につながる”ことを萩原は実感する。お客さまとTDBをつなぐすべての信頼はここから始まる。業務部が提供しているのは、目に見えない価値なのだと萩原は思っている。