レポート

利上げ局面で問われる「金利のある経営」

情報統括部 情報統括課
主席研究員 窪田剛士

日本銀行は9月18日、無担保コールレート(オーバーナイト物)を従来の1.0%程度から1.25%程度へ引き上げました。あわせて、金融機関が日銀に預ける当座預金の一部に付く補完当座預金制度の適用利率を1.25%、日銀が金融機関へ資金を貸し出す際の基準となる基準貸付利率を1.5%としました。金融機関の脱炭素投融資を支える気候変動対応オペでは、貸付金利を変動金利に改め、貸付総額を50兆円、貸付先ごとの上限を10兆円に設定しています。政策金利にとどまらず、資金供給の仕組みも「金利のある世界」に合わせた決定といえるでしょう。

日銀が警戒する「物価の上振れ」

利上げの背景には、基調的な物価上昇率が2%に近づくなか、上振れリスクへの警戒があります。原油高や円安に加え、AI関連需要の拡大による半導体や非鉄金属などの値上がり、賃金上昇分を販売価格へ転嫁する動きも広がっています。日銀の政策は、物価を2%まで押し上げる段階から、2%程度に安定させる段階へ移りつつあるのです。もっとも、委員2人は景気の強さや利上げの時期に疑問を呈して反対しており、判断は一枚岩ではありませんでした。

金利を経営判断にどう織り込むか

中小企業にとって、最も分かりやすい影響は借入金利の上昇です。とりわけ借入依存度が高く、変動金利の融資が多い企業では、利払い負担が徐々に増します。帝国データバンクの試算[1]では、借入金利が0.25%上昇すると、1社当たりの支払利息は年間46万円増え、経常利益を平均1.9%押し下げます。対象約16.8万社のうち1.6%が新たに経常赤字へ転落する可能性もあり、平均値だけでなく企業ごとの差にも目を向ける必要があります。

一方で、日銀は、金融環境はなお緩和的で、金融機関の貸出姿勢も積極的だとみています。直ちに「借りられない時代」になるわけではありませんが、採算性の低い投資や漫然とした借り換えには、これまで以上に厳しい目が向けられるでしょう。まずは借入金を金利タイプと返済時期ごとに整理し、金利がさらに上昇した場合の利益と資金繰りを試算しておくことが肝要です。

家計では、変動型住宅ローンの負担増が消費を抑える一方、預金利息の増加は追い風になります。ただし、恩恵と負担は、世帯の資産・負債構成によって大きく異なります。さらに注意したいのは、国会で議論されている2027年4月からの飲食料品の消費税率引き下げが、今回の日銀の物価見通しに織り込まれていない点です。実施されれば、消費者物価を押し下げ、家計の実質的な購買力を支える可能性がありますが、その行方は国会審議に委ねられています。

今回の利上げは、景気を急停止させるブレーキというより、速度を慎重に調整する操作です。それでも、中小企業には「金利を経営判断に戻す」ことを確実に迫ります。預金、借入金、設備投資、価格転嫁を別々に考えず、資金全体の収益性を見直す。その地道な作業こそ、金利上昇局面を乗り切る第一歩となるでしょう。


[1] 帝国データバンク「日銀の追加利上げが企業に与える影響度調査 (2026年9月)」(2026年9月18日発表)

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