中村駿佑
私は数字が好きです。どれくらい好きかというと、文字を読むよりも数字を目で追うほうが楽なほどです。これは、小学生時代にそろばんを習ったことがあり、10桁にも及ぶ数字の羅列を日々、目にしていたことによるものだと思います。
今回は、そんな私が書籍「帝国データバンクの経済に強くなる数字の読み方」でも紹介されている割合と数の関係性について本の内容を基に簡単に説明します。
ある日、ニュースでこのような報道が流れていたとします。
「人口1,000人の自治体Aで、流行している感染症の感染者数が100人となりました。感染者のうち、60%がワクチンを接種していることがわかりました。」
この文章だけをみると、恐らく、ワクチン接種者の方が未接種者よりも感染しやすいと考えたのではないでしょうか。報道の意図としても、「ワクチンには効果がない。むしろ危険である。」といったことを伝えたいのではないかと考えられます。確かに、上記の文面上では感染者のうち接種者の方が多いことは事実です。しかし、ワクチンの効果を考えるために重要なことは、“接種者のうち何人が感染したのか”であり、“感染者のうち何人が接種者であるのか”ではありません。
例えば、自治体Aでの接種者が60人であれば接種者の感染率は100%、未接種者940人の感染率は約4.3%となるため、ワクチンに問題があるのではないかと推測できます。別のケースでは、接種者が960人であれば接種者の感染率は約6.3%、未接種者40人の感染率は100%となるため、ワクチンが効果的に働いていると考えられます。1つ目のケースでは、ワクチンを打ちたいと思う人はいないでしょうが、2つ目のケースでは誰しもがワクチンを打ちたいと思うでしょう。
このように、上記の問題では「ワクチンを接種すると感染しやすくなる」という因果関係ではなく、あくまでも接種者数により、ワクチンの効果を推し量ることができるのです。提示された数字をただ数字として捉えるだけではなく、どんな要素を含んでいるのか、そしてどんな意味があるのかを自ら思考することが必要となります。
割合をみたら数を考え、数をみたら割合を考えることが、より正確にデータを理解するための遠回りのようで一番の近道かもしれません。