具体的な与信管理とは?
「与信管理」とは、どのようなことでしょうか?
基本は以下の2つの行動です。
- ①取引先について、取引規模に応じて継続的な情報収集を行う。
- ②取引先の評価によって設定した各取引先の「信用枠」と、売上債権残高の比較を行う。
すなわち、管理をする前提として「取引先を評価する」ということが大切になります。その上で、「信用枠」を基準とした売上債権残高の管理を行っていくことになります。
評価とは?
さて、「取引先を評価する」方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
1つは、営業マンや審査部の人が自ら動いて情報収集し評価する方法です。取引先へのヒアリングや雑談、業界や地域の人から情報に加え、ホームページや就職情報サイト、口コミサイトをはじめとしたWEB情報を集めたりして、評価する方法です。
この場合には、チェックポイントを決めてチェックの数を数えたり(チェックポイント方式)、10個ぐらいの項目を決めてそれぞれに点数を付けて合計して 100点満点にしたり(点数方式)します。それを5~10ぐらいの格付けに変換する(格付方式)場合もあります。
もう1つは、外部の有料情報を使う方法です。
まず「登記」があります。「商業登記」は、会社が申請して、その存在が書類上認められているか、何を事業目的にしているかなどが分かります。「不動産登記」は、どのような不動産を持っているか、担保設定の状態はどのようになっているか、が分かります。ご存知の通りWEBで取得できるので便利です。
しかし、これだけでは情報不足です。評価をする上ではもっと多くの情報が必要になります。
第一、書類上存在している会社が、書類に書いてある住所に存在していないこともあるのです。最近ではWEBで衛星画像を確認できたりしますが、企業名やその日の現地の雰囲気が確認できるわけではないので、現地での存在確認はとても重要です。
様々な情報が手に入りやすくなっている状況ではありますが、取引先をしっかり評価しようと思うと案外時間がかかったり、WEB情報には信頼度に不安が残るものが紛れ込んでいたりと、面倒なことが出てくるのが現実です。
そこで登場するのが、企業調査を請け負う会社です。会社名と住所が分かれば、その会社のことを、さまざまな角度から調べます。(帝国データバンクもその1社となります。)
調査項目には、「企業概要」「登記・役員・大株主」「従業員・設備概要」「代表者」「系列・沿革」「業績」「取引先」「銀行取引」「資金現況・不良債権」「現況と見通し」「決算書」「不動産登記」などがあります。営業担当者や審査担当者が聞きにくいことばかりです。
これに加えて、その企業の総合評価としての点数(評点)も付いています。 この内容は、WEBで簡単に見ることができます(「COSMOSNETサービス」)。最近調査した内容であれば、すでにある調査結果で十分であり、すぐに見ることができます。また、点数付きで企業概要のみを見ることもできます。
最近の外部情報は、帝国データバンクのような企業信用調査会社だけでなく、WEB情報を機械で収集してリスト化して販売する会社から、会計情報を利活用して独自の企業評価モデルを構築して提供するような会社まで、さまざまなタイプのサービスが展開されています。
取引規模や業界の特性などに応じて、どのような外部情報を利活用して評価をしていけばいいのか、しっかり考えなくてはいけません。
※帝国データバンクでは、こうした与信管理に関するアドバイザリー業務を請け負っております。気軽に最寄りの事業所までご相談ください。
1歩進んだ評価とは?
点数のような形で取引先を評価できると、それで安心してしまう傾向がありますが、最近では、1つの指標に頼らず、複数視点で取引先を評価しようとする動きが出てきています。
2000年代に入ってコンピュータの処理能力が格段に進んだことで、さまざまな統計手法でさまざまなデータを分析することが可能になりました。最近では銀行口座の取引履歴やWEBの口コミ情報から「危ない会社」と「安全な会社」を見分けることも可能とうたうサービスも出てきています。
取引先を多視点から評価し、リスクがある中にもチャンスを見出すことができる評価枠組みを作ることができるかが、今後の与信管理の重要なポイントになってくるでしょう。
※帝国データバンクでは、独自の信用調査と情報取材ネットワーク、特に人と人とのコミュニケーションの中でつかんだ当社ならではの情報を含む膨大な企業データを元に、「評点」とは異なる視点で捉えた分析モデル(倒産予測モデル、休廃業予測モデル、成長予測モデル、取引構造分析etc)の研究とサービス構築を行っています。詳しくはこちらまで。
次回は、「会社の規模、取引規模に応じた与信管理の考え方」をお送りします。

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