レポート堀正工業株式会社
続報、粉飾決算発覚
TDB企業コード:985757133 ベアリング大手「NTN」の主要代理店 自己破産申請へ 負債300億円
「東京」 既報、堀正工業(株)(資本金2000万円、品川区西五反田1-23-9、登記面=港区西新橋1-10-7、代表堀雅晴氏)は、6月8日までに債務整理を大野了一弁護士(港区虎ノ門1-15-12、虎ノ門南法律事務所、電話03-3502-6294)ほかに一任していたが、方針を変更、今月中に東京地裁へ自己破産を申請する方針であることが判明した。
当社は、1933年(昭和8年)10月に創業されたベアリング販売会社の事業を承継すべく、48年(昭和23年)9月に設立された。50年3月にベアリング大手のNTN(株)(東証プライム上場)の代理店指定を受け、以降は同社の主要代理店として展開。半導体や自動車、建設機械、鉄道、風力発電、液晶関連など大手メーカーを得意先に、各種ベアリングのほか、コンプレッサ、グリースなど関連製品の販売を手がけていた。NTN製品以外にも、日本や中国、台湾、韓国などの各メーカーの商品群のなかから得意先の要望に沿った最適な提案を行っていた。専門スタッフによる積極的な技術サポートを強みに、国内販売のみならず、香港や上海などにも輸出。近年は新規事業として、ヘンプ(麻)を用いたバイオプラスチックの開発に進出するなど多角化を図り、半導体業界向けが堅調に推移した2022年9月期には年売上高約68億600万円(会社公表値)を計上していた。
しかし今年5月、不適切な会計処理を行っている疑いが強まり、調査を進めたところ実際は多額の借入金を抱え、債務超過状態が続き、借入金の返済原資を確保できない状態であることが判明。金融機関から新たな資金調達も厳しくなり、借入金の返済を迫られるなか、債務整理を弁護士に一任した後、清算型の民事再生を目指し、事業を継続しながらスポンサー支援を模索していたが、銀行借り入れの使途解明に時間を要することから、今回の事態となった。
負債は当社単体で300億円を超える見込み。
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『カギは関係会社?』
5月に“複数決算書による粉飾”が明らかになって以降、急速に信用不安が広がった堀正工業(株)。その後「50億円前後」と見られていた借り入れ残高が実際は「300億円以上」あることが判明し、関係者の間で“簿外約250億円”のゆくえが話題となっていた。
今回、7月中に自己破産を申請する方針が決定したことで、これまで明らかになっていなかった粉飾や経営の実態解明に向けて大きく前進することになる。現時点で噂される疑惑の1つに「関係会社への資金流出」がある。堀正工業には代表兼務の関係会社が複数あり、資本関係はないもののほぼ一体経営とされているためだ。その関係性を気にしてか、代表兼務であった少なくとも1社で5月の判明以降に代表が変更されており、今回の騒動が発端となっているのは間違いない。
過去に「関係先への資金融通」で破綻した会社としては、(株)エル・エム・エス(東京都文京区、2019年民事再生、負債約65億9602万円)が記憶に新しい。同社の場合、関係会社への資金融通ではなかったが、長年の親密先に支払いの猶予や貸し付けを行うことで資金操作を行っていた。結果としてエル・エム・エスは粉飾決算に手を染めた末、倒産に至った。
粉飾決算の背景には、社外人物の関与が聞かれるほか、“赤字補填”や“私的流用”といった噂もあり錯綜している。債務整理の弁護士一任を経て決済難に陥り、実質破綻状態の中で事業を継続するという異常事態が続いたが、ついに自己破産を申し立てることとなった当社。粉飾手法や破綻の真相については、さらに取材を進め追報したい。
(情報取材課 記者 森山 玄将)