有識者が語る
帝国データバンク活用法
信頼できるデータは、
世界を変える可能性を秘めている。
国立大学法人東京工業大学
科学技術創成研究院 ビッグデータ数理科学研究ユニット
情報理工学院 数理・計算科学系
教授 高安 美佐子さん

- Q 高安先生は、経済物理学、統計物理学から企業活動をとらえる研究をされているとうかがっていますが、どのような研究なのでしょうか?
-
A
例を挙げると、企業が「成長する」、「合併する」、「取引を増やす」、「倒産する」といった企業活動を数値化し、その特性を定量的に分析して数理モデル化するという研究です。帝国データバンクの企業情報を分析することで、取引のあるふたつの企業間の取引量を、それぞれの企業の売上の関数として、おおよその値が推定できることがわかりました。
この経験則を応用した技術は、中小企業庁(経済産業省)で採用された「地域経済分析システム」のなかでも使われています。今まで地方自治体では、経験や勘といったあいまいな概念で政策を決定しなくてはなりませんでした。
しかし、私たちの研究によって、科学的な根拠に基づいたデータ分析をもとに、将来の状況を予測することや目標に合わせて政策を立てることが可能になりました。
- Q 研究しているなかで困難なことはありますか?
-
A
研究で何か重要な発見をしたとしても、学会で発表したり学術誌に掲載するだけでは広く受け入れてはもらえません。特に常識に反するような大きな発見は、粘り強く主張し続ける必要があります。
そのためには、発見が必ず世の中の発展につながるという信念と、自分の研究結果にゆるぎない自信を持てることが大切です。つまり、研究に活用したデータが信頼できることは、研究者にとって絶対条件なのです。
- Q 研究者という立場から見て、帝国データバンクのデータはいかがでしょうか?
-
A
帝国データバンクのデータには網羅性と精密さがあり、十分に信頼できるので、安心して解析を進めることができます。決算書などの数値だけではなく、企業同士のつながりといった踏み込んだ企業情報まで直接調査して、110年以上も前から蓄積し続けてきたことは、とてもすごいことだと思います。
このようなデータは海外には例がないようで、国際会議で発表すると、羨望の眼差しを感じます。「地域経済分析システム」ですでにこのデータに基づいた実用的な成果がでていますが、それだけでなく、科学の歴史に名を残すような研究成果が生まれてくれば、他の国でも同じような方法で企業情報の収集をする動きが出てくるかもしれません。そうなれば、「帝国データバンクの企業データが世界を変える」ことになるかもしれませんね。