はじめに
自動車業界で適正な価格転嫁に向けた取り組みが加速している。今年3月に日産自動車が下請法違反として公正取引委員会から勧告を受けた問題について、日本自動車工業会(自工会)は5月23日の会見で、取引の適正化に向けた環境を構築することを表明した。日本の基幹産業である自動車産業で、持続的な賃上げなどにもつながる価格転嫁の動きが加速するか注目されている。
帝国データバンクでは、保有する「商流圏~売上高依存度推計データ1」をもとに、商用車専業を除く国内自動車メーカー8社2に対して部品などのモノやサービスを提供する周辺産業(商流圏)を「自動車産業(サプライチェーン企業3)」と定義し、社数や価格転嫁の動向4等について調査・分析を行った。
[用語定義]
1 商流圏~売上高依存度推計データ
帝国データバンクが特許を取得した「個別企業間の全取引シェアを推計するモデル(NIHACHI)」を用いて、任意の頂点企業における商流上(サプライチェーン)の傘下企業や取引企業において、各社の売上高が頂点企業にどの程度依存しているかを算出(特許取得済)したデータ。
頂点企業の直接取引先(一次取引先、Tier1)だけではなく、頂点企業と直接取引がないTier2(二次取引先)以降の間接取引でも売上高依存度を把握でき、頂点企業との取引額を推計できる点が特徴。
2 国内自動車メーカー8社
トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車、スズキ、マツダ、SUBARU、三菱自動車工業、ダイハツ工業。
3 サプライチェーン(SC)企業
上記「個別企業間の全取引シェアを推計するモデル」を用いて、任意の頂点企業に対して売上の1%以上を依存している企業。
4 自動車産業の価格転嫁動向
帝国データバンクが実施した「価格転嫁に関する実態調査(2024年2月)」(調査期間:2024年2月15日~29日、調査対象:全国2万7,443社で、有効回答企業数:1万1,267社[回答率41.1%])のうち、自動車産業に属する企業で回答があった約1,500社(有効回答企業数の約13%)を分析した。なお、同調査は企業の取引全般に関する価格転嫁について調査しており、特定の取引等に対して回答したものではない。
調査結果
- 自動車産業のサプライチェーン、全国に6万社 取引総額は42兆円規模
- 自動車産業の1割、価格転嫁「全くできず」 価格転嫁ありは「2割未満」が最多
- 「下請けいじめ」是正へ 自動車業界で進む価格転嫁の取り組み状況が注目される

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