レポート飲食店業界の最新景況レポート

飲食店DIは50.3、12カ月連続で全産業を上回る ~ 売上高伸び率は2019年比で初めてプラスへ ~

2024/02/27
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2023 年 5 月 8 日に新型コロナウイルス感染症が 5 類へ移行した。行動制限による外食需要の落 ち込みや感染拡大防止のための営業規制により低水準であった飲食店 DI(※1)の回復傾向は顕著とな り、2024 年 1 月まで 12 カ月連続で全産業の景気 DI(※2) を上回って推移している。 経済活動が正常化して初めての年初を迎えた 2024 年の飲食店では、慢性的な人手不足などを背景に、従業員の負担軽減のため年始の営業を休む動きも見られた。

そこで帝国データバンクでは、飲食店業界を取り巻く環境や景気 DI の動きを分析した。

 ※1:飲食店 DI は、「一般食堂」「日本料理店」「西洋料理店」「すし店」「酒場、ビヤホール」などの景気 DI から算出

 ※2:景気 DI は、TDB が算出する全国企業の景気判断を総合した指標。50 を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50 が判断 の分かれ目となる

◆5類移行により飲食店 DI は過去最高を記録も、プラス・マイナス要因が入り交じる展開に

新型コロナによる 1 回目の緊急事態宣言 が発出された 2020 年 4 月、全産業の景気 DI は 25.8 で過去最大の下落幅を更新。な かでも飲食店 DI は、前年同月比 38.6 ポイ ント減の 4.3 まで落ち込み、過去最低だっ た 2009 年 12 月の 20.3 を大きく下回った。 緊急事態宣言の発出による外出抑制や休業要請など経済活動が大幅に制限されたことで、ヒト・モノ・カネの流れが地域・業種・企業規模を問わず停滞し、国内経済は大きく冷え込んだ。とりわけ、新型コロナの感染防止のため 3 密が徹底されたことで、飲食店は大打撃を受けた。

2 回目から 4 回目の緊急事態宣言が発出された 2021 年も、全産業の景気 DI が 30~40 台 で推移するなか、営業時間の短縮や休業を余儀なくされた飲食店は多く、飲食店 DI は 12 カ月中 8 カ月で 10 台にとどまり、低迷が続いた。2022 年に入り、新型コロナの感染第 6 波によって 1~ 3 月まで 2 回目のまん延防止等重点措置が適用された影響で、飲食店 DI は一時的に下落した。

しかし、ワクチン接種の普及で社会・経済活動の自粛が緩和され、10 月からのインバウンド消費 の回復や全国旅行支援の開始などにより、飲食店 DI は改善傾向となった。 2023 年 3 月にマスクの着用が個人の判断に委ねられることとなり、行動制限が緩和されたこと で、飲食店 DI は同年 4 月に 50.8 と景気の良し悪しの判断基準となる 50 を超えた。新型コロナウイルス感染症が 5 類へ移行した 5 月には、全産業の景気 DI を 11.3 ポイント上回り、過去最高 の 56.7 を記録。直近の 2024 年 1 月の飲食店 DI も 50.3 となり、50 を上回った。

行動制限の解除による店内飲食の回復に加え、インフレにともなう値上げによる客単価の増加 が飲食店業界の景況感の改善を後押しした。一方で、人手不足による賃金の上昇や原材料費・光 熱費などの高騰が収益を圧迫している企業も多くみられるなど、プラスとマイナスの要因が入り 交じる展開となってきている。

◆2023 年の外食業売上高伸び率は、全業態で前年を上回る。2019 年比では、全体が初めてプラスに

日本フードサービス協会「外食産業市場動向調 査」によると、2023 年の外食業全体の売上高伸 び率は前年比 14.1%増となり、ファーストフード、ファミリーレストラン、パブ/居酒屋のすべ ての業態でも前年を上回った。また、コロナ禍前 の 2019 年と比較(右グラフ)すると、パプ/居 酒屋ではマイナス幅が縮小したものの、依然とし て 33.5%減と 2019 年を大きく下回った。一方、 ファーストフードの伸び率が 20.1%増と最大と なり、外食業全体は初めてプラスとなった。

2024 年 2 月に帝国データバンクが実施した「コロナ禍の終焉に関する企業アンケート」では、 「コロナ禍は終わった」とする企業は 40.2%にとどまっており、今もなお「コロナ禍は続いてい る」とする企業が 3 割を超えていた。飲食店業界からは、「コロナ前の売り上げ水準(売り上げ &来客数)に戻っていない」「コロナ前と比べ客の生活スタイルが大きく変化。平日、週末問わ ず夜の客足は大幅に減少」などの声が聞かれた。

コロナ禍による未曾有の危機を乗り越えた飲食店業界であるが、この間、フードデリバリーの 定着や飲食店の衛生管理に対する消費者意識の高まりなど、業界環境は大きく変化した。 業態間での顧客獲得競争の激化や人手不足の常態化など課題も多く、今後の先行きは楽観でき ず、景況感の改善傾向を維持するには、ハードルが高くなってきている。

20240227_飲食店業界の最新景況レポート

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