レポート

2026年正月シーズン「おせち料理」価格調査

2026年正月「おせち」 平均価格は2万9098円 迫る「3万円の壁」 節約・奮発で「二極化」鮮明

2025/11/15

 帝国データバンクは、全国の大手コンビニエンスストア・百貨店・スーパー・外食チェーン・日本料理店などのうち、前年と価格が比較可能なおせち料理を対象に調査を行った。比較対象は110社・ブランド。標準的な三段重、または3~4人前サイズの税込価格。         

SUMMARY

2026年正月のおせち料理の平均価格は2万9098円(税込)となり、前年に比べて1054円・3.8%の値上げとなった。原材料価格の高騰や包装資材、配送費用の上昇など、物価高の影響を受けて多くのおせちが値上げを余儀なくされた。1000~2000円の小幅な値上げにとどめた商品が多かった一方で、高級志向のおせちでは、食材のグレードアップに伴い大幅な値上げがみられるなど、価格の二極化が進んでいる。

                         

[注] メニューの変更や販売停止などで前年と比較できないおせち料理(企業)があるため、一部24年調査から対象を変更している。なお、入れ替え対象のおせちについて2022年正月シーズンまで遡って価格データを再集計した


2026年正月「おせち」 平均価格は2万9098円 

全国の大手コンビニエンスストアや百貨店、スーパー、著名な日本料理店など計110社(ブランド)で販売されるおせち料理(三段重または3~4人前分)の価格を調査した結果、2026年正月の平均価格は2万9098円(税込)だった。1年前(2025年正月)の2万8044円に比べて1054円、率にして3.8%の値上げとなり、3年ぶりに値上げ幅が1000円を超えた。飲食料品をはじめとした「物価高」の波がおせち料理にも及んでおり、前年に比べて値上げを余儀なくされたケースが目立った。

調査対象110社のうち、約6割・65社のおせちが「値上げ」となった。値上げ幅別にみると「1000円台」が22社となり最も多く、「2000円台」(14社)、「1000円未満」(13社)と続いた。「1000円未満」の値上げは2023年正月以降で最多となり、総じて小幅な値上げにとどめたケースが多かった。使用する原材料価格の高騰による影響が大きかったほか、見栄えを左右するおせち重箱など包装資材、配送費用など各種コストの上昇が大きく影響した。ただ、2026年正月では、「1万円台」など低価格を重視する量販店のほか、百貨店で展開するオリジナルおせちなどでも「大容量」などお得感を前面に打ち出したコスパ重視の傾向が強まり、1000~2000円の値上げにとどまったおせちが多くみられた。

一方で、値上げ幅が3000円を超えるおせちも16社判明し、2023年正月以降で最多だった。高級ホテルやレストランなどが監修するおせちでは、食材のグレードアップなど「量より質」を重視する傾向が強まり、大幅な値上げとなったおせちもみられた。2026年正月のおせち料理は、総じて長期化した物価高を背景とした「節約志向」に対応した商品と、豪華絢爛をセールスポイントとした比較的高級な「ごちそう」商品との二極化がより進んだ。

原材料価格では、前年まで価格高騰が続いた輸入サーモン類のほか、太平洋での漁獲枠が拡大し漁獲量が増えたことで値下がりが続いたマグロ類などの価格上昇圧力が弱まる兆しもみられた。一方で、「子孫繁栄」の願いが込められるイクラは、秋鮭の記録的な不漁などを受けて価格が急騰しているほか、数の子でも海外産を中心に円安や加工地での人件費上昇といったコスト高を受けて値上がりが続いた。魚介類以外にも、猛暑の影響で不作が続く黒豆類、鶏卵などで大幅な値上げが見込まれるほか、化粧箱など資材費も上昇した。そのため、近時は海鮮系を使用する和風おせちから「洋風」「中華風」などバラエティ化が進むほか、プラントベース原料(代替肉)の使用、食品ロスの削減などで、コスト削減を進める動きが進んだ。


おせちに迫る「3万円の壁」 価格の二極化、さらに進む予想

近時の円安などを背景に、正月を家族や親族と過ごす傾向が前年に続き強まっていることに加え、材料価格の高騰で「手作り」が割高となっている。また、おせち料理自体が「セレモニー」化していることなどを背景に、大人数向け・大容量おせちの購入ニーズが高まっていることも、おせち商戦にとっては追い風となっている。ただ、長引く物価高を背景に低価格品への人気集中といった「値上げ疲れ」の動きを反映して、内容量の減少や食材の見直しなどで、値上げ幅の抑制や価格を据え置いたケースもみられ、「ハレの日」イベントでも価格面を重視する消費傾向が強まった。

今回調査では平均価格が2万9000円台に到達した。2022年以降で最高値を更新したが、一般的なおせち価格のボリュームゾーン上限となる「3万円の壁」に迫っている。そのため、3万円を超えるおせちは「質の向上」「限定感」で高価格をめざすプレミアムおせちに限定される一方、「大容量」「コスパ」を打ち出すおせちでは現状以上の価格引き上げが困難となる可能性があるなど、二極化がより広がる可能性がある。おせち市場は、価格競争と付加価値競争が同時進行する構造へとシフトしており、2027年以降は値上げ難航と差別化戦略の重要性が一層高まるものと予想される。

20251115_2026年正月シーズン「おせち料理」価格調査

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