レポート労働者派遣業の倒産動向(2025年1-8月)

労働者派遣業の倒産8月までに59件、過去最多ペースで推移

2025/09/08

SUMMARY

2025年1-8月に発生した労働者派遣業の倒産は59件。労働者派遣法の改正やリーマン・ショックからの回復期で競争が激化していた2013年1-8月(61件)に次いで過去2番目の水準となる。このままのペースで推移すれば、通年(1-12月)では90件前後となり、過去最多(2014年、85件)を更新する可能性が高い。労働人口の減少により人手不足が全業界で深刻化するなかで、派遣人材の確保や賃金上昇に伴うコスト増などが経営を圧迫している。

株式会社帝国データバンクは「労働者派遣業」の倒産動向について調査・分析を行った。

集計期間:2000年1月1日~2025年8月31日まで

集計対象:負債1000万円以上、法的整理による倒産

派遣人材の確保が困難、市場ニーズに応えられない業者の淘汰進む

2025年1-8月の労働者派遣業の倒産は前年同期(38件)比55.3%増となる59件だった。これは、労働者派遣法の改正やリーマン・ショックからの回復期で競争が激化していた2013年1-8月(61件)に次いで、過去2番目の水準となる。このままのペースで倒産増加が進行すれば、2025年(通年)では90件前後に達する可能性がある。

負債規模別にみると、5000万円未満の零細倒産が32件(構成比54.2%)と最多だが、1億円以上の倒産も16件(同27.1%<2013年は10件、同16.4%>)と決して少なくなく、年商数億~十数億円規模の業者も苦戦も目立つ。

地域別では、東京都を含む「関東」が23件で最も多い。「東北」(4件)、「近畿」(13件)、「九州」(6件)の3地域では、1-8月累計で過去最多(近畿は最多タイ)を記録し、地方圏の業者にも、倒産増の兆しが見られる。

コロナ禍での派遣先の休業や出入り制限などにより業績が悪化し、ゼロゼロ融資による借入過多など財務面が劣化した業者が多いなかで、アフターコロナでは人手不足に伴い派遣人材の確保を巡る競争が激化。「人手不足に対する企業の動向調査」(帝国データバンク、8月発表)では、多くの業種で派遣人材によって労働力を補う動きが活発になっている半面、「人材派遣・紹介」業界での非正社員(派遣人材)の不足感が、「飲食店」や「旅館・ホテル」などを上回り全業種中トップとなった。こうしたなか、賃上げ機運の拡大による人件費上昇や、人材確保のための待遇改善などを進めた結果、運営コストが増加し収益面も悪化、倒産に至るケースが多く見られた。

また、人員確保を急ぐあまり人材の質が低下し派遣先からクレームになる事例なども聞かれ、市場ニーズに応えられない中小業者の淘汰が今後も進む可能性が高い。資本体力が乏しく収益の確保が難しい業者を中心に、年後半にかけても倒産の増加は続きそうだ。

20250908_労働者派遣業の倒産動向(2025年1-8月)

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