レポート「製茶業」の倒産・休廃業解散動向(2025年1-7月)

製茶業の廃業増、 2025年は過去最多ペース 「抹茶ブーム」が逆風

株式会社帝国データバンクは「製茶業(茶メーカー)」の倒産・休廃業解散動向について調査・分析を行った。

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2025年1-7月に発生した「製茶業」の倒産、休廃業・解散は累計11件で、通年では前年の10件を上回り過去最多を更新する見通し。抹茶ブームで茶葉の需要が急増し、仕入価格やコストが上昇。2024年度は増益企業が51.2%と半数を超えたが、業績悪化の割合も4割超と二極化が鮮明となった。縮小が続いた日本茶のなかで、成長が期待される抹茶生産への対応が進むが、ブームの持続性や消費者ニーズへの対応が課題となる。

集計期間:2000年1月1日~2025年7月31日まで

集計対象:倒産は負債1000万円以上、法的整理によるもの。なお、休廃業・解散とは、倒産(法的整理)を除き、特段の手続きを取らずに企業活動が停止した状態を確認(休廃業)、もしくは商業登記等で解散(「みなし解散」を除く)を確認した企業


「製茶業」の廃業増、2025年は過去最多ペース

抹茶スイーツや抹茶ラテなどインバウンドをはじめとする国内外の「抹茶ブーム」で、中小の製茶業者に予期しなかった悪影響が及んでいる。2025年に発生した「製茶業」の倒産(負債1000万円以上、法的整理)、休廃業・解散(以下「廃業」)は累計11件(廃業10件、倒産1件)発生した。すでに前年通年の累計(10件)を上回り、年間で過去最多を大幅に更新する見通しとなる。

製茶業界では近年、スイーツや菓子などに抹茶が使用される機会が増加し、製菓メーカーなど新たな需要先の開拓に成功した企業が多くみられたほか、健康茶やティーバッグ加工など付加価値の高い製品が好調で、持ち直しの機運も見せていた。一方で、特に世界的な「抹茶ブーム」が過熱したことにより、大手飲料メーカーなどで需要が増加し、原料確保に伴う大量買い付けによって茶葉価格が急騰したことで、経営面に悪影響を及ぼすケースが出始めている。

2024年度における製茶業の損益動向をみると、前年度から「増益」となった企業は51.2%と半数を超え、過去20年で最高だった一方、「減益」(18.3%)や「赤字」(29.3%)の「業績悪化」の割合も4割超を占めるなど、収益力の二極化が進んだ。自社で茶葉収穫から生産加工まで可能な製茶業者では、抹茶のほか、抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)生産へシフトしたことで大幅な売り上げ増となり、利幅を確保した企業が多かった。一方で、「業績悪化」となった企業の割合は、直近でピークとなった2022年度(63.9%)からは低下傾向にあるものの、高単価で取引される抹茶用の茶葉生産にシフトする生産農家が増加したことで、煎茶やほうじ茶などに加工するための茶葉で仕入価格が上昇し、光熱費などの上昇も重なって高コストでの生産を余儀なくされた。他方で、若年層の日本茶離れのほか、主要な販売先だった仏事・葬儀向け需要の低迷も背景に、従来のリーフ茶などは価格転嫁が容易ではなく、特に海外輸出やインバウンド向けの販路を多く持たない製茶業者で業績悪化に直面したケースがみられた。

足元では、縮小が続く日本茶のなかで、高級とされる抹茶市場への対応を各社が進めるものの、抹茶ブームがいつまで続くのかは見通せない。ブランド力のほか、変化する消費者ニーズに対応した商品開発力、加工技術力などで高付加価値な「茶葉」を生産できる企業と、そうでない企業における「格差」の拡大が、製茶業界全体でより加速する可能性がある。

20250804_「製茶業」の倒産・休廃業解散動向(2025年1-7月)

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