レポート「警備業」の倒産動向(2025年上半期)

警備業の倒産が倍増、過去最多ペース 深刻な人手不足、 労働環境の改善による「働きやすさ」向上が急務

株式会社帝国データバンクは、「警備業」の倒産発生状況について調査・分析を行った。

SUMMARY

2025年上半期(1-6月)の「警備業」の倒産件数は、前年同期から倍増となる16件に達し、過去最多ペースで推移している。厳しい給与水準やシフト勤務など不規則な勤務体系を背景に、人手不足が慢性化している。今後も、賃上げの動きに追いつけない小規模事業者を中心に倒産が相次ぐことが懸念されるなかで、勤務体系の整備による「働きやすさ」の向上やAI導入などによる労働環境の改善が急がれる。

集計期間:2000年1月1日~2025年6月30日まで
集計対象:負債1000万円以上・法的整理による倒産


2025年上半期の「警備業」倒産は16件、すでに前年を超える水準

 人々を危険から守る「警備業」の倒産が急増している。2025年上半期(1-6月)の倒産件数は16件と前年(8件)から倍増し、上半期として過去最多となった。上半期時点ですでに前年の年間件数(15件)を上回っており、過去最多を更新するペースで推移している。

 工事現場やイベント会場における交通整理や安全確保を行う警備業は、慢性的な人手不足に悩まされている。2025年上半期に倒産した16件のうち、少なくとも5件が人手不足を要因としていることが判明している。さらに帝国データバンクのアンケート調査では、警備業のうち人手不足を感じている企業の割合が2025年に入ってから正社員・非正社員それぞれ約9割に達するなど、深刻な水準にある。

警備業の倒産動向・人手不足割合

 その背景には、賃金と労働環境の問題がある。賃金構造基本統計調査(令和6年、職種別)によると、「警備員」の現金給与額は26万8300円と、全体の33万400円を大きく下回り、厳しい給与水準が浮き彫りとなっている。深刻な人手不足が続いていることを背景に、今後は人材獲得競争のさらなる激化が予想される。こうしたなか、低単価の受注によって利益の確保が難しい小規模事業者の中には、高騰する賃金水準に対応することができずに、事業継続を断念するケースが増加することが懸念される。

 労働環境に関しては、案件によっては早朝や深夜などを含めた不規則な「シフト勤務」を組まざるを得ないケースも少なくない。現場の安全性や勤務時間によって負担やリスクが一様ではないものの、働き方改革やワークライフバランスが重視されるなか、業界全体として「働きやすさ」向上への取り組みが欠かせない。働き手に配慮した勤務体系の構築や、AIの活用によって危険がともなう作業を代替・補完するなど、労働者が安心して働ける環境を整備する対策が急務といえよう。

20250801_「警備業」の倒産動向(2025年上半期)

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