レポート「保育園」の倒産・休廃業解散動向(2025年上半期)

「保育園」の倒産・廃業、3年連続で増加 2025年は過去最多ペース

2025/07/09
倒産・休廃業

株式会社帝国データバンクは「保育園」運営事業者の倒産動向について調査・分析を行った。

SUMMARY

2025年上半期(1-6月)に発生した保育園運営事業者の倒産や休廃業、解散件数は22件に達した。前年同期の13件を大幅に上回り、通年で過去最多を更新する可能性がある。保育施設数の増加や少子化の影響で入園者数が伸び悩むなか、保育士の確保難や食材価格の高騰が経営を圧迫し、特に中小保育園で運営が困難となるケースが増加した。付加価値を高める専門プログラムの導入や認定こども園への移行などの動きが進むが、保育施設の余剰感や園児獲得競争が厳しさを増しており、今後も淘汰が続くと予想される。

集計期間:2000年1月1日~2025年6月30日まで

集計対象:倒産は負債1000万円以上、法的整理によるもの。なお、休廃業・解散とは、倒産(法的整理)を除き、特段の手続きを取らずに企業活動が停止した状態を確認(休廃業)、もしくは商業登記等で解散(「みなし解散」を除く)を確認した企業


保育園の倒産・廃業、3年連続で増加 今年は過去最多ペース

2025年上半期(1-6月)に発生した「保育園」運営事業者の倒産(負債1000万円以上、法的整理)や休廃業、解散による閉鎖は、計22件判明した。前年同期(13件)から7割増となり、これまで最多だった2024年(31件)の件数を上回って、通年で過去最多を更新する可能性がある。「待機児童ゼロ」を目標に全国で保育施設が整備されてきたなか、足元では運営事業者の淘汰が始まっている。

2019年10月以降、政府による幼児教育・保育の無償化がスタートしたほか、「こども誰でも通園制度」の実施により保育園利用のハードルが下がり、ニーズは高まっている。他方で、9割近い自治体で待機児童数がゼロになるなど、近時は保育施設数の増加や少子化の影響を背景に、入園を希望する児童の獲得競争が激化している。また、保育士の確保難、給食などを提供する施設では食材価格の高騰によるコスト高といった問題が発生しており、特に中小の保育園では円滑な運営が困難となるケースが出始めている。

2023年度における保育園運営事業者の損益動向をみると、前年度からの「減益」は25.2%、「赤字」は29.1%を占め、赤字・減益を合わせた「業績悪化」の割合は54.3%と半数を占めた。業績悪化の割合が6割を超えた2022年度(65.6%)からは低下傾向にあるものの、人気の低迷により「なり手不足」が深刻化する保育士の採用難は年々深刻化している。慢性的な人材不足によって適切な人員配置が困難となり、受け入れ定員数を制限せざるを得ない事業者や、保育士の離職を防ぐために給与水準の引き上げを実施し、運営コストが増大したことで利益が圧迫される事業者が目立った。「増益」を確保した事業者も4割超を占めたものの、保育施設運営への参入から日が浅い事業者や、内部留保が薄いなど経営体力が乏しい事業者では、入園者の減少や保育士の離職など、予期せぬ経営環境の変化から当初の計画通りの収益が確保できず、水面下で収益力が低下しかねないリスクを抱えている。

足元では、英語や音楽、スポーツなどの専門プログラムを導入し、付加価値を高めることで差別化を図る動きや、給付加算の対象となる認定こども園への移行、発達障害児の支援施設の新設や住宅型有料老人ホームの開設など関連性の高い分野へ進出する動きが進んでいる。ただ、これまで社会問題化していた待機児童問題は一部地域で解消しつつあるなか、保育施設の余剰感や園児獲得競争はより厳しさを増すとみられ、立地面やサービス内容で差別化が図れない運営事業者の淘汰は、今後も続くとみられる。

20250709_「保育園」の倒産・休廃業解散動向(2025年上半期)

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