レポート2024年7月の景気動向調査

国内景気は 4 カ月ぶりに好転~ 金融市場は大きく揺れ動いたものの、猛暑やインバウンド消費が押し上げ ~

2024/08/05
景気動向  アンケート

■調査結果のポイント

  1. 2024年7月の景気DIは前月比0.5ポイント増の43.8となり、4カ月ぶりに改善した。国内景気は猛暑の効果やインバウンド消費などがけん引してプラス方向に転じた。今後の景気は、好調な企業業績がプラスとなる一方でエネルギー価格の高騰など不確実な要因も多く、横ばいで推移すると見込まれる。
  2. 業界別では、『サービス』や『建設』など10業界中7業界で改善し、悪化は2業界だった。暑さが厳しくなるなか、エアコン特需やアルコール消費など季節需要が押し上げ要因となった。地域別では、10地域中7地域が改善、3地域が悪化。好調なインバウンド消費が継続したほか、建設需要の高まりは地域経済の押し上げ要因となった。規模別では、4カ月ぶりに「大企業」「中小企業」「小規模企業」がそろって改善した。
  3. 猛暑により一部業界で特需が発生。エアコンや飲料の売れ行き、タクシーの利用などが好調といった声が複数聞かれた。

< 2024年7月の動向 : 4カ月ぶりに改善 >

2024年7月の景気DIは前月比0.5ポイント増の43.8となり、4カ月ぶりに改善。国内景気は、猛暑の効果やインバウンド消費などがけん引してプラス方向に転じた。

7月は、外国為替レートが1ドル=161円台から149円台まで変動したほか、株価も5,000円近く上下するなど、金融市場は大きく揺れた。しかし、猛暑によるエアコンの特需やアルコール消費の増加など季節需要が急拡大したほか、好調なインバウンド消費もプラス材料となった。さらに、自動車生産の復調や旺盛なDX需要、都市の再開発事業なども好材料。

一方で、消費者の節約志向の高まりが個人消費を抑制したほか、仕入単価の上昇によるコスト負担の増加、人手不足などはマイナス要因だった。

< 今後の見通し : 横ばいで推移 >

今後は、インフレ率を上回る賃上げや、政策金利の追加利上げとそれにともなう市場金利の上昇、設備投資への動きなどが注目される。インバウンド消費のほか、自動車の生産拡大、生成AIの発展を受けたグローバルな半導体需要の増加、さらに人手不足に対するロボットの導入などはプラス材料となる。

一方で、エネルギー価格の高騰や物流コストの増加、家計の節約志向、新型コロナの再拡大、地政学的リスクなどはマイナス材料となる。

今後の景気は、総じて回復傾向のみられる企業業績がプラスとなる一方で不確実な要因も多く、横ばいで推移すると見込まれる。

業界別:10業界中7業界で改善、猛暑のなか季節需要が押し上げ要因に

  • 『サービス』や『建設』など10業界中7業界で改善し、悪化は2業界だった。暑さが厳しくなるなか、エアコン特需やアルコール消費など季節需要が押し上げ要因となった。他方、消費者の節約志向や仕入れコストの高騰、人手不足などは悪材料だった。
  • 『サービス』(50.0)… 前月比0.8ポイント増。4カ月ぶりに改善。「飲食店」(同1.3ポイント増)は、堅調なインバウンド需要に加えて、暑い日が続くなかビアホールなどの景況感が大幅に上向いた。夏休みを迎え4カ月ぶりに「娯楽サービス」(同2.9ポイント増)や「旅館・ホテル」(同1.7ポイント増)が改善したほか、夏期講習や自動車教習所などが活況だった「教育サービス」(同3.5ポイント増)は2カ月連続で改善となった。旺盛なDX需要が続いている声の多い「情報サービス」(同横ばい)は2年10カ月連続で50台を維持した。消費者の節約志向、新型コロナの再拡大などマイナス材料もあるが、15業種中11業種が改善した。
  • 『建設』(46.9)… 同0.5ポイント増。2カ月連続で改善。「エアコン特需」(電気配線工事)など各地で空調設備の引き合いがあるといった声が寄せられた。また、大都市圏での再開発工事、再エネ工事などがプラス材料だった。さらに、災害復旧工事や防災工事、老朽化対策なども押し上げ要因となった。他方、2024年問題に起因する技術者不足や建設コストの上昇などは下押し材料となっている。
  • 『製造』(39.8)… 同0.4ポイント増。2カ月連続で改善。「大手自動車メーカーを中心に堅調」という声が聞かれた「輸送用機械・器具製造」(同2.1ポイント増)は3カ月連続で改善した。「機械製造」(同1.4ポイント増)は自動車関連の復調が押し上げ要因となり5カ月ぶりに40台となった。金型や電子部品の受注に回復の兆しがみえる「鉄鋼・非鉄・鉱業」(同1.0ポイント増)は7カ月ぶりに改善した。他方、低調な国内消費や原材料価格の高止まりなどが悪材料となり、「繊維・繊維製品・服飾品製造」(同1.2ポイント減)は4カ月連続で落ち込んだ。
  • 『小売』(40.3)… 同横ばい。猛暑の影響でエアコン商戦が活況な「家電・情報機器小売」(同2.9ポイント増)は2カ月連続で改善。総合スーパーや百貨店などを含む「各種商品小売」(同1.1ポイント増)は2カ月ぶりに上向いた。新規のテナント増やインバウンドを筆頭に人流の増加といった声が聞かれた。他方、価格の高騰で消費者離れが危惧される「自動車・同部品小売」(同4.2ポイント減)は7カ月ぶりに30台へ下落。節約志向による来店頻度や購入点数の減少、嗜好品の消費減退などから「飲食料品小売」(同1.3ポイント減)は4カ月連続で悪化となった。

規模別: 全規模が4カ月ぶりにそろって改善、「中小企業」は薄く広く上向き

  • 「大企業」「中小企業」「小規模企業」が4カ月ぶりにそろって改善した。「大企業」は5業界が上向いた一方で、「中小企業」は緩やかながら幅広い業界で改善した。「小規模企業」はイベントの活発化や人材派遣などがプラス材料となった。
  • 「大企業」(48.2)…前月比0.2ポイント増。2カ月連続で改善。すべての規模で設備稼働率が上向いたなかで、投資計画の案件が増加するなど『建設』は2カ月連続で50台を維持した。また新NISAや円安株高も証券業などで好材料となった。
  • 「中小企業」(42.9)…同0.4ポイント増。4カ月ぶりに改善。緩やかながら10業界中8業界が上向き、幅広い業界で改善した。なかでも「顧客からの発注も少しずつ増加してきている」といった声が聞かれた『卸売』は、4カ月ぶりにプラスへ転じた。
  • 「小規模企業」(41.8)…同0.2ポイント増。2カ月連続で改善。イベントや映像制作などが好調だったほか、小中学校受験熱の高まりや趣味などへの支出拡大により学習塾や個人教授所の景気DIが50台半ばまで上昇するなど、『サービス』がけん引した。

地域別:10地域中7地域が改善、インバウンド消費や建設需要が押し上げ

  • 『北海道』『東海』『中国』など10地域中7地域が改善、『四国』など3地域が悪化。都道府県別では25都道府県が改善、20県が悪化した。好調なインバウンド消費や建設需要の高まりが押し上げ要因となった。他方、『東北』は大雨の影響が下押しした。
  • 『北海道』(44.1)… 前月比1.3ポイント増。2カ月連続で改善。「日胆」「道東」エリアは、厳しい状況ながらも大幅に上向いた。大規模工場の建設や都市再開発、マンション建設などが押し上げたほか、全国で猛暑が続くなか観光需要は好調だった。
  • 『東海』(43.9)… 同0.6ポイント増。2カ月連続で改善。域内4県のうち「愛知」「静岡」の2県が上向いた。1年ぶりに全規模が改善し、特に「大企業」がけん引役となった。高操業状態にある自動車関連や大型の建築関連が好調で全体を押し上げた。
  • 『中国』(43.6) … 同1.0ポイント増。2カ月ぶりに改善。1年4カ月ぶりに域内5県すべてが上向いた。インバウンド消費が好調なほか、設備投資が進みリース関連も大きく改善するなど、『サービス』は4カ月ぶりに50台へ復帰した。

【今月のポイント】猛暑による影響

  • 猛暑により一部業界で特需が発生。エアコンや飲料の売れ行き、タクシーの利用などが好調といった声が複数聞かれた
  • 7月、8月はアイスクリーム・シャーベットの支出金額の増加が期待されるなか、乳製品製造の景気DIも上向いている

【調査先企業の属性】

1.調査対象(2万7,159社、有効回答企業1万1,068社、回答率40.8%)

2.調査事項

  • 景況感(現在)および先行きに対する見通し
  • 経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について

3.調査時期・方法

2024年6月17日~6月30日(インターネット調査)

【景気動向指数(景気DI)について】

■TDB景気動向調査の目的および調査項目

全国企業の景気判断を総合した指標。国内景気の実態把握を目的として、2002年5月から調査を開始。景気判断や企業収益、設備投資意欲、雇用環境など企業活動全般に関する項目について全国2万7千社以上を対象に実施している月次統計調査(ビジネス・サーベイ)である。

■調査先企業の選定

全国全業種、全規模を対象とし、調査協力の承諾が得られた企業を調査先としている。

■DI算出方法
DI(ディフュージョン・インデックス〈Diffusion Index〉)は、企業による7段階の判断に、それぞれ以下の点数を与え、これらを各選択区分の回答数に乗じて算出している。

<画像>

景気DIは、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる(小数点第2位を四捨五入)。また、企業規模の大小に基づくウェイト付けは行っておらず、「1社1票」で算出している。

■企業規模区分

企業の多様性が増すなか、資本金や従業員数だけでは計りきれない実態の把握を目的に中小企業基本法に準拠し、全国売上高ランキングデータを加え下記の通り区分している。

■景気予測DI

景気予測DIは、ARIMAモデルと構造方程式モデルの結果をForecast Combinationの手法で算出。破線は予測値の幅(予測区間)を示している

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