レポート「緊急保証制度」利用実績および倒産動向調査

中小企業の約2割が利用~代位弁済率は0.52%にとどまる~

2010/03/08
政策・法制度  倒産・休廃業

はじめに

2008年10月31日に中小企業の金融支援策としてスタートした「緊急保証制度」は、今年3月までの期限とされていたが、1年延長され2011年3月まで継続、保証枠も30兆円から36兆円に拡充するなどして「景気対応緊急保証制度」として2月15日より再スタートした。一方、企業倒産件数は減少傾向が鮮明になっているものの、日本経済は未だ回復に向けた力強さに欠ける状況にある。
帝国データバンクでは、「緊急保証制度」の保証承諾、代位弁済それぞれの件数および金額、制度導入前後の倒産発生状況、また98年10月に始まった「中小企業金融安定化特別保証制度」(以下、特別保証)との比較などについて調査を行なった。

* 調査については全国52 の信用保証協会にヒアリングを実施、緊急保証制度の保証承諾については全ての協会より回答を得、代位弁済については51 の協会より回答を得た。特別保証については49の協会より回答を得た(5・6 頁参照)。
* 緊急保証制度の調査対象は2008 年10 月~2009 年12 月末。
* 承諾比率は承諾件数÷中小企業数。承諾件数は延べ件数(1 社が複数回承諾を受けているケースがあり、社数ではない)。承諾比率算出に用いた中小企業数は、緊急保証については2009 年版中小企業白書より、特別保証については2000 年版中小企業白書より引用した。

調査結果

調査結果によると、2008 年10 月~2009 年12 月末までの承諾件数は89 万7882 件、承諾金額は16 兆8373 億円となった。この結果、単純計算だが、緊急保証制度の承諾比率は21.4%で約2割の中小企業が承諾を得て利用していることになる。なお特別保証における承諾比率は約33.9%で緊急保証制度と比較してかなり高い割合となった。緊急保証制度における、東京を除く各道府県の代位弁済合計は件数で3901 件、金額で749 億円となり、代位弁済件数を承諾件数で割った代位弁済率は2009 年12 月末時点で0.52%にとどまる結果となった。なお特別保証における代位弁済率は約13.80%となっている。
倒産との関係をみると特別保証の開始時には翌月から倒産が減少へと転じ、以降12 ヵ月間前年同月比で減少が続いたのち、再び増加へと転じた経緯がある。一方、緊急保証については制度開始後すぐには倒産減少に繋がらず、11 ヵ月目となる2009 年9 月から減少に転じて以降、2010 年2 月まで6 ヵ月連続の前年同月比減少となっている。今後については、2009 年12 月に中小企業金融円滑化法が施行されていることなどから、倒産はすぐに増加に転じる可能性は小さいものとみられる。

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