レポート2016年8月の景気動向調査

景気は足踏み、天候が各地の景況感に影響 ~ 海外情勢の不確実性高まるなか、国内の金融緩和政策の行方に注目 ~

2016/09/05

■調査結果のポイント

  1. 8月の景気DIは前月比0.1ポイント減の42.3となり2カ月ぶりに悪化した。公共工事の増加や旅行需要が押し上げ要因となった一方、天候不順は各地域や一部業種に影響を与えた。国内景気はプラス材料とマイナス材料が混在し足踏み状態が続いている。今後の景気は、金融市場が海外発のリスクに影響を受けやすくなっているなか、横ばい状態で推移するとみられる。
  2. 『建設』など4業界が改善、『農・林・水産』など6業界が悪化。台風9号が関東地方へ11年ぶりに直接上陸するほか、北海道への9年ぶりの台風上陸など東日本への相次ぐ台風襲来や西日本の記録的な猛暑が、『農・林・水産』や『サービス』など一部業界・業種に悪影響を及ぼした。
  3. 『北海道』や『九州』など3地域が改善、『東北』『近畿』など6地域が悪化、『東海』が横ばいとなった。『近畿』は過去最多の猛暑日となり買回り品関連の消費が弱かった一方、『東北』では観測史上初となる台風の直接上陸による影響を大きく受けるなど、天候によって地域の景況感の明暗が分かれた。


< 2016年8月の動向 : 足踏み状態 >

2016年8月の景気DIは前月比0.1ポイント減の42.3となり2カ月ぶりに悪化した。

8月15日に発表された2016年4~6月期の実質GDP成長率は、前期比横ばい(年率換算+0.2%)にとどまり、回復の勢いはみられない。そのようななか、8月の国内景気は、『近畿』を中心とした記録的猛暑と同時に、8月として1962年以来54年ぶりに4個上陸した台風は、『東北』や『北海道』などの地域のほか、「飲食店」や『農・林・水産』などの景況感を悪化させる要因となった。また、人手不足の継続にともなう単価の上昇は企業のコスト負担を高める要因となっている。他方、熊本地震からの復旧工事や東京五輪開催に向けた公共工事の増加のほか、今年から始まった「山の日」にともなう国内旅行需要の盛り上がりなど、プラス材料もみられた。

国内景気は、プラス材料とマイナス材料が混在し足踏み状態が続いている。

< 今後の見通し : 横ばい状態で推移 >

国内経済は、財政の前倒し支出や金融緩和政策の継続など、財政政策と金融政策の相乗効果に期待がかかる。しかし、日本銀行による過去3年余りにわたる金融緩和政策の“総括的な検証”が9月下旬に予定されており、その結果によっては政策が転換される可能性もある。また、10月からの最低賃金引き上げは個人所得の底上げをもたらす一方、企業の負担が増すことで設備投資などに後ろ向きの影響を与える可能性もある。海外では、英国のEU離脱の行方や欧州の政治問題、米国大統領選や金利引き上げのタイミング、中国経済の先行きなど、不確実性を高める問題が山積している。日本の金融市場が海外発のリスクに影響を受けやすくなっているなか、

今後の景気は、横ばい状態で推移するとみられる。

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