レポート2015年4月の景気動向調査

『建設』が大幅悪化、景気は一服感 ~ 低調な公共工事が全体を下押し ~

2015/05/08

■調査結果のポイント

  1. 4月の景気DIは前月比0.5ポイント減の45.3となり、4カ月ぶりに悪化した。食料品価格の値上げなど個人消費を下押しする要因が多く表れたほか、人手不足にともなう人件費上昇が企業のコスト負担を高めている。国内景気は上昇基調にあるなかで、税負担の増加や公共工事の低調が悪材料となり、一服している。今後の国内景気は一時的な落ち込みから緩やかに改善すると見込まれる。
  2. 業界別では『建設』『製造』『小売』『運輸・倉庫』など10業界中7業界が悪化した。『建設』では、予算執行の端境期に統一地方選も重なり、公共工事が低調だった。『小売』は家電関連が大幅に悪化する一方、高額耐久財や化粧品は堅調に推移するなど、悪化業種と改善業種で二極化する傾向が表れた。
  3. 地域別では、『北関東』や『九州』など10地域中7地域が悪化した一方、『北海道』と『四国』の2地域が改善した。『北陸』は横ばいだった。多くの地域で『建設』の悪化が低迷の要因となった。『四国』は、太陽光発電の関連工事が堅調に推移したほか、家電販売なども底堅く、全10地域で唯一全規模が改善した。

< 2015年4月の動向 : 上昇基調のなかで一服 >

2015年4月の景気DIは前月比0.5ポイント減の45.3となり4カ月ぶりに悪化した。

4月の国内景気は、日経平均株価が終値でITバブル時代の2000年4月14日以来15年ぶりに2万円台を回復するなど、金融市場は堅調に推移した。しかしながら、4月に入り食品関連の値上げが相次いだほか、軽乗用車などの自動車税が増税されるなど、個人消費を下押しする要因が重なった。また、予算執行の端境期や統一地方選の影響などで公共事業の発注が低調に推移したうえ、分譲住宅や持家の建築需要が低迷しており『建設』の景況感が大きく悪化した。人手不足にともなう人件費の上昇が企業のコスト負担を高めるなかで、「中小企業」、とりわけ「小規模企業」にしわ寄せが集中することとなった。

国内景気は、上昇基調にあるなかで、個人消費や公共工事の低調が悪材料となり、一服している。

< 今後の見通し : 緩やかに改善 >

大手企業を中心に賃金水準が全体的に上昇すると予測されているほか、プレミアム商品券など地方創生にともなう地域活性化策が具体化されることが期待される。また、東京五輪やカジノ構想、リニア新幹線などの大型インフラ需要などの波及効果が表れてくるとみられる。税収がリーマン・ショック前の水準に回復すると見込まれるなか、96兆円規模となる2015年度予算の執行とともに、事業費規模で6兆円増額している復興予算など建設需要は高水準で続くとみられる。

今後の国内景気は、円安水準の継続による輸出拡大や、賃金上昇・採用意欲の高まりで消費の基盤となる所得環境が改善するとみられており、一時的な落ち込みから緩やかに改善すると見込まれる。

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