< 2013年6月の動向 : 足踏み状態 >
2013年6月の景気動向指数(景気DI:0~100、50が判断の分かれ目)は前月比0.5ポイント減の42.5となり、7カ月ぶりに悪化した。
これまで大企業を中心としてアベノミクス効果による景気の上昇が続いていたが、6月の外国為替市場では為替レートが1ドル93円~100円台で変動し、さらに日経平均株価も6月13日には直近の最高値より20%超下落するなど、不安定な状況が続いた。また、輸入品を通じた仕入価格の上昇で企業収益を圧迫する環境が強まったこともあり、『不動産』『小売』『サービス』など内需関連を中心として全10業界、51業種中36業種が悪化した。全10業界が悪化したのは、東日本大震災のあった2011年3月以来2年3カ月ぶり。
国内景気は、期待先行による改善が一服し、一時的に足踏み状態となっている。
■調査結果のポイント
- 『製造』は、7カ月ぶりに悪化した。輸入価格の上昇でコスト上昇に直面する企業が多く、「パルプ・紙・紙加工品製造」など全12業種中7業種が悪化した。在庫の取り崩しが徐々に進む一方で、内需向けを中心に設備投資意欲DIは2カ月連続で減少している。
- 『不動産』は、建築費や輸入材価格の高騰が続いていることなどを要因として7カ月ぶりに悪化した。規模別では、「大企業」より「中小企業」の悪化が目立ち、企業規模間で景況感の開きが大きい。
- 『東海』『東北』など10地域中8地域が悪化した。『東北』は震災後の人口減少が続いているほか、農産物出荷量や漁獲量の減少による価格上昇で仕入れコストが高まった『製造』や燃料価格の高騰に直面した『運輸・倉庫』などが悪化した。
< 今後の見通し : 緩やかに回復 >
電気・ガス大手14社が8月まで料金を5カ月連続で一斉値上げするほか、円安による素材価格の上昇も進んでおり、販売価格への転嫁が進まない中小企業では収益環境の悪化が懸念される。また、7月に実施される参議院選挙結果や徐々に上昇している長期金利の動向、駆け込み需要後の反動減など先行き不透明な要素も多い。
他方、プラス要素としては、夏場にかけて景気対策による公共事業の執行が本格化するほか、消費税率引き上げ前の低金利の間に新築やリフォームなど住宅関連の駆け込み需要や、円安を通じた輸出増加やそれにともなう設備投資の拡大など、期待先行の状況から実需への移行が期待される。また、「日本再興戦略」(成長戦略)も動き始める。
今後、実需へと結びつくか正念場を迎えるものの、企業マインドの悪化は一時的なものにとどまり、
国内景気は不透明感を内包しつつも緩やかに回復するとみられる。
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