レポート

【連載】海外政経情勢 第33回「韓国」 ―AI特需が支える景気回復と、その陰で深まる二極化

寄稿:(株)伊藤忠総研

2026/08/27

■SUMMARY

世界的な生成AIの普及を背景に、AI向けデータセンターへの投資が急速に拡大している。なかでも、高帯域幅メモリ(HBM)をはじめとする先端半導体の需要増加は、主要メーカーを擁する韓国経済に強い追い風をもたらしている。

半導体輸出は大幅に伸び、企業収益や設備投資の改善へとつながっているほか、実質GDPも高い成長を維持している。さらに、株価上昇による資産効果を背景として個人消費にも持ち直しの動きがみられ、韓国経済は表面的には輸出主導の回復が内需へ広がりつつあるように映る。

一方で、好調な経済指標と、企業や家計が抱く景況感との間には隔たりが生じている。AI特需の恩恵は、半導体関連の大企業や株式などの金融資産を保有する家計に集中しやすい。これに対し、中小企業や金融資産を十分に持たない一般家計では、景気回復を実感しにくい状況が続いている。都市部を中心とした住宅価格の高騰も家計負担を重くしており、韓国の若年層や中間層にとって住宅取得は一段と難しくなっている。

加えて、物価上昇圧力の強まりを受けた金融引き締めは、今後の消費や企業活動の重しとなり得る。韓国経済はAIブームという強力な成長エンジンを得た一方で、半導体市況や株価への依存度を高めている。データセンター投資の変調や半導体需要の下振れが生じれば、輸出、設備投資、株価、個人消費が連鎖的に影響を受ける可能性もある。経済成長の持続性だけでなく、その恩恵がどこまで幅広い企業や家計に届くのかが、韓国の政治・経済を見通すうえで重要な論点となっている。

このレポートでは、韓国の半導体輸出が急拡大している背景を起点に、AI特需がGDP、設備投資、個人消費、株式市場へどのように波及しているのかを整理する。また、物価上昇と金融引き締め、半導体市況の変動、住宅価格の高騰といった景気の下振れ要因を取り上げるとともに、経済指標の改善にもかかわらず大統領支持率が低下している背景を読み解く。

さらに、景気回復の恩恵が特定の業種や資産保有層に偏る「K字型」の構造に注目し、半導体サプライチェーン関連企業、富裕層向けビジネス、中小企業や一般消費者を顧客とする企業など、在韓日系企業の事業環境に生じ得る違いを展望する。

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