レポート2016年3月の景気動向調査

国内景気、悪化傾向が一服 ~ 消費税率引き上げの再延期を含めた一層強力な経済対策が必要 ~

2016/04/05

■調査結果のポイント

  1. 3月の景気DIは前月比0.5ポイント増の42.8となり5カ月ぶりに改善した。金融市場は安定して推移、求人関連業種が堅調だったほか、北陸・北海道新幹線効果や年度末需要も加わり、国内景気は悪化傾向が一服した。今後の景気は、回復に向けた好材料に乏しく、消費税率引き上げの再延期を含め一層強力な経済対策が必要な状況であり、足踏み状態が続くとみられる。
  2. 業界別では『建設』『製造』『卸売』『サービス』など7業界が改善、『農・林・水産』など2業界が悪化、『運輸・倉庫』が横ばいだった。『サービス』が飲食店や広告関連が好調で8カ月ぶりに改善したほか、『建設』はマイナス金利導入により住宅ローン金利が低下したことで木造建築工事などが好調となった。
  3. 地域別では、東日本大震災以来となる前月までの2カ月連続の全10地域悪化から一転、10地域中8地域が改善、1地域が悪化、1地域が横ばいとなった。唯一悪化した『東北』は4カ月連続の悪化となり、震災より5年が経過しても本格的な復興にはいまだ道半ばであることを印象づけた。


< 2016年3月の動向 : 悪化傾向が一服 >

2016年3月の景気DIは前月比0.5ポイント増の42.8となり5カ月ぶりに改善した。

3月は、原油価格が上昇したことで欧米の株式相場が好転したこともあり、日経平均株価や為替レートは前月までの乱高下のともなう値動きから一転して安定した動きで推移した。日本銀行によるマイナス金利政策の導入で住宅ローン金利が低下したことで居住用住宅が堅調だったうえ、製造・卸売の関連業種へと好影響が波及した。また、有効求人倍率が25年ぶりの高水準となるなど労働市場の需給がひっ迫しているなか、人材派遣や求人広告関連など『サービス』が8カ月ぶりに改善した。地域別では、2カ月連続で全10地域が悪化した状況から持ち直した一方、『東北』は東日本大震災から5年が経過するなかで復興関連の公共工事が落ち着きつつある。

国内景気は悪化傾向が一服した。

< 今後の見通し : 足踏み状態で推移 >

今後の国内景気は、2017年4月に予定されている消費税率10%への引き上げの行方に左右されるであろう。政府が開催した国際金融経済分析会合では、再延期を支持する意見が多数出ており、安倍首相による最終的な決断まで不透明な状況が続くとみられる。他方、北海道新幹線の開業や訪日旅行客の増加による観光消費の拡大は引き続き好材料である。海外経済では、米国が2016年の金利引き上げを従来の4回から2回へと変更したことで不安感がやや薄らいだほか、中国が全国人民代表大会で今後5年間の成長率目標を6.5%以上に引き下げたことで、中国経済は高成長路線からの軌道修正を図った。

今後の景気は、回復に向けた好材料に乏しく、消費税率引き上げの再延期を含め一層強力な経済対策が必要な状況であり、足踏み状態が続くとみられる。

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