レポート高速道路1,000円の効果と副作用

2009/06/03
コラム

撫子

平成20年度補正予算で、高速道路料金が割引となった。高速道路4社が5月21日にまとめたゴールデンウィーク中に高速道路を利用したETC搭載車のドライバーに対するアンケート調査では、61%が「外出のきっかけになった」と回答した。また、94%が「地域経済の活性化に効果がある」と回答した。


しかし、高速道路と競合するさまざまな交通機関で、利用者の激減などの悪影響が広がり、業況が厳しかったところにさらなる追い討ちをかけた。フェリーは約40航路が影響を受け、廃業や減便に追い込まれた企業もある。鉄道はJR6社でゴールデンウィーク中の新幹線や特急などの乗客が7%減少した。高速バスは利用者が激減したうえ、渋滞による運行に支障が出たため、九州のバス協会は高速道路の割引拡充に反対する要望書を提出した。


この政策の目的は地域活性化であり、不況のなかでも観光客が地方に訪れたことで一定の効果があったといえる。しかし、地元の交通機関では利用者の減少から廃業や減便などに追い込まれたり、運輸業は荷物が時間通りに届かないなど、地域経済に悪影響を与えた。政府はお盆や年末年始の平日にも割引を行う検討を進めているが、高速道路の割引期間を拡充するなら、他の輸送機関への支援・対策も忘れてはならない。また、地域全体を活性化するには、観光客を増やすだけではなく観光客の財布の紐を緩めて一人当たりの消費を増やすことや、地元企業の活性化や雇用の創出を促して、地方に人を呼び戻すことも必要だ。

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