本連載では、日本企業の進出先として想定される世界各国の政経情勢などを取り上げる。第10回は、第1回で取り上げたインド経済の現状を改めて確認したい。インドは、2021年前半には新型コロナ感染者数が世界最多となったが、その後は新型コロナへの耐性が高まり、2021年中にはコロナ前の経済水準に回帰した。また、モディ政権は、インフラ予算の大幅拡大を発表するなど、2024年5月の総選挙を見据えて経済政策を加速させている。以下、インド経済の現状を解説したうえで、注意すべきリスクと先行きの見通しについて考察した。
■ 新型コロナへの耐性強まる
インドでは、オミクロン株を中心とした新型コロナの感染拡大が収束しつつある。2022年入り後、一時は1日当たりの新規感染者数が30万人を超え、前年のデルタ株による感染拡大時の40万人超に迫る勢いとなった。このため、夜間外出禁止や各種施設の一時閉鎖などの活動・移動制限措置が再開された。ただ、その際でも、感染者の多くは自宅療養で回復し、国内の混乱は2021年の感染拡大時と比べると小さかった。
新規感染者数は、2月入り後にピークを迎えた後は急速に減少し、3月下旬時点では1日当たり2,000人程度である。活動・移動制限も全面的に解除されており、小売・娯楽施設や職場への訪問数などの人出をみても、コロナ前の水準を10~20%上回る水準まで増加してきている。