■調査結果のポイント
- 5月の景気DIは45.3となり前月と同水準となった。賃金や株価の上昇、訪日旅行客の増加などで個人消費関連が上向いてきた一方、公共工事の発注件数が減少し、中小企業を中心に再び価格の値下げ競争の兆しがみられ始めている。国内景気は、業界内においても景気回復に格差がみられ、上昇基調のなかでまだら模様の状態となっている。今後の国内景気は緩やかに改善すると見込まれる。
- 業界別では『不動産』『小売』など10業界中5業界が改善、『金融』『建設』など4業界が悪化した。特に、『小売』は、賃金上昇や夏のボーナスへの期待に加え、インバウンド消費の拡大や株高による資産効果などで高額品の販売も増加し、大幅に改善した。
- 地域別では、『北海道』や『東海』など10地域中5地域が改善した一方、『東北』『四国』など5地域が悪化した。『北海道』は訪日客や団体客が好調で「旅館・ホテル」や「娯楽サービス」が大幅に改善するなど、4カ月連続の改善傾向が続いた。
< 2015年5月の動向 : 上昇基調のなかでまだら模様 >
2015年5月の景気DIは45.3となり前月と同水準で、景気は横ばいとなった。
5月の国内景気は、為替レートが一時1ドル=124円台をつけ、2002年12月以来、約12年半ぶりの安値となった。円安や企業業績の回復を背景に、日経平均株価は1988年以来27年3カ月ぶりとなる11営業日連続の上昇を記録した。大手を中心にベア実施などによる賃金上昇や夏のボーナスへの期待が高まっている。また、株高やインバウンド消費もあり『小売』や「旅館・ホテル」「娯楽サービス」など個人消費関連が上向いてきた。他方、公共工事の発注件数の減少で、中小企業を中心に再び価格の値下げ競争の兆しがみられ始め、『建設』の景況感が悪化した。
国内景気は、一部業種で景況感が過去最高を記録しているものの、同じ業界内においても景気回復には格差がみられ、上昇基調のなかでまだら模様の状態となっている。
< 今後の見通し : 緩やかに改善 >
大手企業が中心だったベアの実施が中小企業へと徐々に広がっているなか、賃金やボーナスの増加が期待されるほか、9月にはシルバーウイークによる需要拡大もあり、個人消費は緩やかに拡大すると見込まれる。建設需要は震災復興のほか、整備新幹線や東京五輪などの大型インフラ投資が高水準で続くとみられる。また、マイナンバー制度への企業の対応遅れが指摘されるなか、新たなコスト負担懸念の一方でビジネス機会の拡大も期待される。
今後の国内景気は、円安進行が輸入価格上昇など中小企業の業績に再び悪影響を与えることが懸念されるものの、所得環境の改善にともなう個人消費の回復がけん引役となり、緩やかに改善すると見込まれる。
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