■南関東ブロック
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
46.2 | 0.2 | 全国トップに返り咲くも、根強い警戒感 |
・概況
『南関東』の景気DIは46.2で、5カ月ぶりに全国トップとなった。とはいえ、昨年来の足踏み状態に変化はなく、依然として停滞が続いている。業界別では、『製造』のDIが41.1と低く、『卸売』『小売』も低水準だ。企業からは「あらゆるコストの上昇に価格転嫁が追い付かない」(製造業)、「消費者の節約志向が進んでいる」(サービス業)など警戒感は根強い。食品の値上げラッシやトランプ関税の影響などさらなる不透明感と不確実性によって、今後の景気は一進一退、もしくは弱含みで推移するものとみられる。
・景気DI
『南関東』の景気DIは46.2で前月から0.2ポイント改善。全国順位では、『九州』を抜いて、5カ月ぶりに2位からトップへ返り咲いた。都県別では「東京」は横ばい、「神奈川」「千葉」「埼玉」は改善した。なかでも「千葉」のDIは0.8ポイントの改善となった。
・規模別DI
「大企業」は50.1で前月比横ばい、「中小企業」は45.3で同改善となったが、「小規模企業」は44.5で悪化に転じた。DIが50を超えたのは「大企業」のみで、規模間格差は4.8ポイントとなり、前月から0.3ポイント縮小した。
・業界別DI
業界別では7業界で改善、3業界で悪化した。改善幅が大きかった業界は『金融』(47.1、前月比2.4ポイント増)、『小売』(42.7、同1.7ポイント増)、『運輸・倉庫』(44.5、同1.5ポイント増)。悪化幅が大きかった業界は、『農・林・水産』(50.0、同1.1ポイント減)だった。
・先行き見通しDI
「3カ月後」は46.7(前月47.5)、「6カ月後」は47.1(同47.8)、「1年後」は47.7(同48.4)となり、全てで前月を下回った。業界別では「3カ月後」は『農・林・水産』(53.0)、「6カ月後」は『サービス』(50.2)、「1年後」は『建設』(49.6)が最も高い。
■埼玉県
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
43.6 | 0.3 | 2カ月連続で改善 |
・概況
埼玉県の景気DIは前月比0.3ポイント増の43.6となり、2カ月連続で改善した。回復傾向とはいえ上昇幅は相変わらず小さく、テンポは緩慢。足下の物価高や人手不足といった課題は落ち着く気配がなく、引き続き企業収益のマイナス要因。加えて、先行き見通しの方も慎重な見方が多く、大きく改善を見込む企業は少ない。米国トランプ政権の政策、とりわけ、関税引き上げによるダメージを重くとらえる先は非常に多く、慎重姿勢の最たる背景といえる。金利動向や賃上げが不十分な現状も企業心理を冷え込ませる一因に。
・景気DI
景気DIは43.6となり、前月比0.3ポイント増で2カ月連続の改善。『南関東』は改善し全国は横ばい。管内都県は「東京」が横ばいで他の県は改善。ただし、いずれの地域も改善幅は小さく1.0ポイント未満で近々の傾向と同様。「埼玉」の全国順位は15位となって前月(17位)から2つ上昇。
・規模別DI
「大企業」は前月比2.5ポイント減の44.7、「中小企業」は同0.6ポイント増の43.4、「小規模企業」は同0.4ポイント減の42.3となった。「大企業」は悪化し、「中小企業」が改善したことから、規模間格差は1.3ポイントとなり前月から3.1ポイント減少。2カ月連続で格差が小さくなっている。
・業界別DI
前月と比較可能な9業界中、前月比改善は4業界、悪化が5業界。『金融』と『運輸・倉庫』が大きく改善し各々4.8ポイント増。悪化業界では『農・林・水産』が16.7ポイント減と最大幅。DI30台のうち、『製造』は前月比で1.4ポイント増を果たし40台目の前。『卸売』の38.3は9業界中2番目の低水準。
・先行き見通しDI
「3カ月後」44.7、「6カ月後」45.4、「1年後」46.8となり、前月(44.8、46.0、47.9)と比較して3指標とも下回った。この4カ月間は、3指標ともに改善して悪化、また改善して悪化という流れ。先へ行くほど上昇していく傾向だが、上昇幅は小さく、DI50までの改善見通しは管内含めゼロ。
■千葉県
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
44.5 | 0.8 | 2カ月連続で改善 |
・概況
「千葉」の景気DIは44.5となり2カ月連続で改善した。企業からは、「年度末工事で忙しい」(建設)、「転勤にともなう賃貸需要がコロナ禍前の水準に回復した」(不動産)、「各種イベントが盛況である」(娯楽サービス)などの声が聞かれた。一方で、「物価上昇で顧客が減っている」(食品小売)、「経費を価格転嫁できない」(紙類・文具卸)などの声も寄せられた。年度末の季節的な需要拡大があったものの、物価上昇やトランプ関税などを背景に、先行きの不透明感が広がり、企業の景況感は引き続き一進一退で推移するとみられる。
・景気DI
「千葉」の景気DIは44.5となり前月比0.8ポイント増加、2カ月連続で改善した。全国は前月と同様に43.5となったことから、「千葉」は全国を1.0ポイント上回り、全国順位は10位で前月(13位)から順位を上げた。
・規模別DI
「大企業」は48.7となり前月比1.5ポイント増加、3カ月連続で改善した。「中小企業」も同0.8ポイント増の43.9となり改善した。「大企業」と「中小企業」との規模間格差は4.8ポイント(前月4.1ポイント)へと0.7ポイント拡大した。
・業界別DI
『その他』を除く9業界のうち、『金融』『建設』『不動産』『製造』『卸売』『運輸・倉庫』『サービス』の7業界は前月比改善、『農・林・水産』『小売』の2業界は悪化した。『製造』と『サービス』が2カ月連続で改善したが、そのほかは一進一退の展開で、『小売』は7カ月連続で30台にとどまっている。
・先行き見通しDI
「3カ月後」は45.9(前月45.7)、「6カ月後」は46.0(同46.3)、「1年後」は47.0(同46.4)となり、「6カ月後」は悪化、「3カ月後」「1年後」はともに前月比改善した。3指標は先へ行くほど高くなっているとはいえ、「先行きが読めない」とする声が多く寄せられた。
■東京都
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
47.2 | 0 | 3カ月ぶりに悪化に歯止め |
・概況
「東京」の景気DIは47.2で、前月比横ばいとなった。企業からは「物価高が続いているなかで、所得増の実感がともなわず、財布のひもが固くなっている」(飲食店)、「輸出入の荷動きが、中国の景気低迷の影響で低調に続くなか、今後のトランプ関税の影響が不透明」(運輸・倉庫)などの声が聞かれた。一部ではインバウンド需要を背景とした明るい声があがったものの、従前からの物価高、加えてトランプ政権の関税施策による不安感など、企業が直面している課題は多様化している。
・景気DI
「東京」の景気DIは47.2(前月47.2)で、前月比横ばいとなった。一方で、全国(43.5)を3.7ポイント上回り、都道府県別順位は4位となり、前月(5位)から1ランク上昇し、『南関東』の1都3県で突出した数値となっている。
・規模別DI
「大企業」(51.1)は前月比0.2ポイント増加、「中小企業」(46.0)は同0.1ポイント減少、「小規模企業」(46.0)も同0.1ポイント減少した。規模間格差は5.1ポイントとなり、前月より0.3ポイント拡大した。
・業界別DI
全10業界中、7業界が改善し、2業界が悪化、1業界が横ばいとなった。『小売』(44.7)は前月比で2.9ポイント増となり、3カ月ぶりに改善。また、『金融』も同2.2ポイント増となり、2カ月ぶりに改善した。一方で、『サービス』(50.3)は同0.9ポイント減と3カ月連続で悪化した。
・先行き見通しDI
「3カ月後」(47.5、前月48.7)、「6カ月後」(47.7、同48.8)、「1年後」(47.9、同49.0)となり、すべての指標で悪化した。しかし、『南関東』の域内1都3県で、いずれも最高値となっている。
■神奈川県
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
45.3 | 0.5 | 4カ月ぶりの前月比改善 |
・概況
「神奈川」のDIは4カ月ぶりの前月比改善となった。しかし、「市場価格に仕入原価・経費高騰などが反映されず予定利益が出せない」(建設)、「受注減少・人材不足・賃金高騰・仕入れ価格の上昇」(製造)といった足元の厳しさを口にする中小・小規模企業は多く、自動車業界の動向やトランプ関税の影響を懸念する声も多い。「製造コスト、物流コスト、賃金コストの上昇をカバーする方策が見つからない」(不動産)など、2025年度もさまざまなコストの高止まり・上昇が見込まれるなか、当面は厳しい景況感が続くと見込まれる。
・景気DI
「神奈川」の景気DIは45.3と前月(44.8)から0.5ポイント増加し、4カ月ぶりの前月比改善となった。全国順位は6位で、前月の7位から上昇した。2024年度の景気DIの平均は45.5と2023年度の平均(47.1)を下回り、停滞したまま2025年度を迎えることとなった。
・規模別DI
「大企業」は48.7(前月比0.2ポイント増)、「中小企業」は45.0(同0.8ポイント増)と改善したのに対し、「小規模企業」は43.5(同横ばい)と膠着状態が続いた。「大企業」と「中小企業」の格差は3.7ポイントで、乖離幅は2カ月連続で縮小した。
・業界別DI
9業界中、5業界で前月比悪化となった。『建設』と『製造』が2カ月連続で悪化したほか、『不動産』は3カ月連続で悪化した。特に、『製造』は建材や機械製造で悪化している。一方で、『運輸・倉庫』は2カ月連続の改善でこの1年で最高値となった。『小売』は3カ月連続で改善したが、40.0を下回る低水準にとどまった。
・先行き見通しDI
「3カ月後」は45.8(前月46.1)、「6カ月後」は46.6(同46.7)でそれぞれ前月比悪化したのに対し、「1年後」は47.8(同47.6)で小幅ながら改善した。3指標とも『金融』を除くすべての業界で50.0を下回っており、また『建設』『サービス』はいずれも当月の景況感を下回っている。