レポートF1日本グランプリの消滅危機

2009/09/03

Caddis

モータースポーツの最高峰であるFormula1世界選手権(F1)日本グランプリ(以下、日本GP)開催予定サーキットであるトヨタ傘下の富士スピードウェイが、財政難を理由に2010年以降の日本GPの開催を中止すると発表した。日本GPは、今回中止を発表した富士スピードウェイとホンダ傘下の鈴鹿サーキットでの隔年開催が決まっており、2009年の日本GPは鈴鹿サーキットで予定通り開催される。


富士スピードウェイの撤退により、一時、2010年の日本GPの消滅が懸念されたが、急遽、鈴鹿サーキットが2年連続開催となる2010年の日本GPの開催を表明したことで、歴史ある日本GPの消滅は現段階では回避されることとなった。


一部の新興国を除き世界的な販売不振が続く自動車業界と同様に、F1を取り巻く環境も厳しくなっている。今シーズンからホンダがレース参戦から撤退、また、来シーズンからはBMWも撤退を予定しており、今後、他のチームが追随することも予想されている。


F1は自動車離れが進む若年層に車の魅力をアピールできる場であるほか、自動車の性能や安全性を向上させる新たな技術開発やテストを行う場でもあり、これまで自動車産業の発展に大きく貢献してきた。また、F1のように世界的に注目されるレースともなれば、海外からの来訪者を含めた観戦客の飲食や宿泊などの多くの消費が生まれ、開催地を中心とした国内経済に与える効果も大きい。三重県鈴鹿市によれば2006年に鈴鹿サーキットで開催された日本GPの国内経済への波及効果は約300億円と推計されている。 


一部のエコカーの販売が好調で、最悪期を脱しつつある日本の自動車業界であるが、今後の業況回復如何によっては、富士スピードウェイに続き、鈴鹿サーキットも日本GPの開催を見直さざるを得ない状況に陥る恐れがある。


日本GPの開催が消滅するようなことは、自動車大国の日本としては何とか避けるべきである。政府や自治体、自動車関連業界団体は、日本GPの歴史が途絶えることがないよう、日本GPが単なる一事業者によるイベントではなく、国内産業や地域振興の重要な資源と認識し、国内開催の安定継続に向けた支援、協力を検討すべきではないだろうか。

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