■調査結果のポイント
- 5月の景気DIは前月比0.6ポイント減の41.8となり2カ月連続で悪化した。熊本地震による操業停止の影響が部品調達などで表れたほか、企業の設備投資意欲は慎重姿勢が続き、個人消費停滞の影響が広がるなか、国内景気は悪化した。今後の景気は、生産・消費の回復に向けた好材料も乏しく、弱含みで推移するとみられる。
- 業界別では『金融』『製造』『小売』『サービス』など7業界が悪化、『不動産』など2業界が改善、『運輸・倉庫』が横ばいとなった。家計所得が伸び悩むなか、消費者の節約志向、選別志向が高まり価格競争も激しさを増しており、個人消費関連の悪化が目立った。
- 『北海道』『北関東』『北陸』を除く7地域が悪化。特に、大手自動車メーカーの燃費データ不正問題の影響を受け前月比4.8ポイント減少した。「岡山」を含む『中国』、地震被害から同6.8ポイント減少した「熊本」を含む『九州』で大幅に景況感が悪化した。
< 2016年5月の動向 : 悪化 >
2016年5月の景気DIは前月比0.6ポイント減の41.8となり2カ月連続で悪化した。
5月は、熊本地震による操業停止の影響が部品調達などで表れたほか、家計所得の伸び悩みにより個人消費関連が弱含みで推移した。また、マイナス金利導入で住宅ローン金利や企業の借入金利は低下したものの、経済の先行き不透明感が高まるなかで、企業の設備投資意欲には慎重な姿勢が続いた。さらに、大手自動車メーカーによる燃費データ不正問題の影響が長引くなか、主要な工場等を抱える地域や取引先の景況感が悪化する要因となっている。消費税率引き上げ延期に向けた動きや、公共工事や住宅着工戸数は増加傾向が続いたことは好材料となるものの、悪材料は多く総じて停滞感が漂っている。
個人消費停滞の影響が広がるなか、熊本地震による生産や観光関連への影響も加わり、国内景気は悪化した。
< 今後の見通し : 弱含みで推移 >
今後の国内景気は、消費税率引き上げ延期や熊本地震からの早期の復旧・復興、新興国の経済動向に影響されるとみられる。国内要因では、マイナス金利政策の効果が徐々に住宅投資や設備投資に波及すると期待されるほか、訪日旅行客の増加による観光消費の拡大は引き続き好材料となる一方、消費税率引き上げ延期で駆け込み需要は期待できなくなる。しかしながら、個人消費は、消費の基盤となる家計の実質所得が上昇することで、消費の回復に向けて歩みを進めるべきであろう。他方、海外要因では、中国経済の下振れに加え、米国の利上げにともなう新興国市場の不安定化などがリスク要因となる。
今後の景気は、生産・消費の回復に向けた好材料も乏しく、弱含みで推移するとみられる。
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