レポートゼロ金利解除に不可欠な地域経済の底上げ

2006/04/07
マーケット  コラム

大和

2006年3月9日、日銀は量的金融緩和政策の解除を決定し、5年ぶりに金融政策を転換した。


その背景には、全国消費者物価指数(CPI)が2005年10月以降、ゼロ%以上で浮上を続け、公示地価では都市部での上昇反転が鮮明となるなど脱デフレの動きがある。そして、なにより、景気が堅調に回復していることが、市場の予想よりも1カ月早い緩和解除へと向かわせた。


量的金融緩和政策の導入(2001年3月)が初めてのことであり、もちろん、その解除も初であったため、解除には非常に慎重な判断が求められたわけだが、日銀は配慮を示して市場への説明を重ね、政府も最終的には解除に同意を示すなど、環境を整える努力をしたと言える。


そして、解除後、景気の底堅さから日経平均株価は一段と上昇し、為替も急激な円高に振れることもなく、懸念された景気への下押しは杞憂に終わった。景気回復の実感に乏しいなか、今回の政策判断でひとつのヤマ場を乗り切った感がある。


しかし、日銀はすでにゼロ金利政策の解除を視野に入れた発言を繰り返している。市場でも長期金利が緩やかに上昇し始めるなど、ゼロ金利解除を織り込む動きを見せている。


だが、今回のTDB景気動向調査結果(2006年3月)では、2006年内のゼロ金利解除に対して中小企業や地方圏からの懸念が強かった。


景気DIにおいても、地域間・規模間・業界間格差が高水準ななか、ゼロ金利解除が大企業と中小企業、都市圏と地方圏の格差拡大を引き起こす可能性を、現在の景気回復基調が排除できる段階にはない。


政府や自治体は歳出削減をそろって唱えているが、景気対策は絞っても自らのスリム化を図れないようでは、国民が納得できるはずはない。


日銀がゼロ金利解除を判断するには、今後、政府・自治体がまずは自らの襟を正して、そのうえで、地域経済への底上げ策を積極的に推進していくことが不可欠だ。

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