大和
内閣府は、今回の景気後退が2007年11月から始まっていたと発表した。2009年2月現在、後退局面に入りすでに16カ月が経過していることになるが、世界的な経済危機は依然として収束する見込みがなく、各国の内需も弱いことから、今回の景気後退は戦後の後退局面の平均期間16カ月を大きく上回ることになりそうだ。
戦後初となる今回の日米欧同時の景気後退は、2007年の夏に顕在化したサブプライム問題がきっかけとなったわけだが、2009年9月のリーマン・ショック以降は、一段と景気が悪化し、各国とも緊急経済対策として財政出動の動きを強めている。
しかし、右肩上がりを続ける中国など発展途上国は別としても、先進国が財政出動を強めることに問題はないのか。
今回の景気後退で、各国ともサブプライム問題をはじめとして、過大な借入に支えられた経済構造の危険性を十分に認識したはずである。しかし、今度は国家が過大な借入に頼ろうとしている。すでに高成長が見込めない成熟した先進諸国が巨額の財政出動を実施することは、将来の国民負担をテコにして大きな負債を抱えるようなものである。
現に、巨額の財政出動によって、国債の値下がりやそれに伴う長期金利の上昇、将来の負担増を嫌気した消費マインドの委縮などマイナス面を露呈させ始めている。こうしたなかでのさらなる国債の増発は、国家そのものへの信頼が揺らぐ可能性もある。
もちろん、未曾有の経済危機に陥ったいま、巨額な財政出動が見込み以上の効果を発揮して欲しいとの願いはある。金融政策を柱に、並行して政府や自治体が行政面から経済活動や雇用環境の整備を後押しするだけでは乗り越えられない危機に直面しているとも言える。のちのち、巨額な財政出動の決断ははやり正しかったと結論づけられる日がくるかもしれない。
各国政府は、国民に大きな負担を強いる以上、成熟国家の景気対策として巨額な財政出動がどれほどの効果をもち、一方でどのような問題が起こるのかを今後しっかりと検証し、新しい時代の政策手法を確立していく好機としていかなければならない。
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