レポート北海道洞爺湖サミットで求められる環境問題への具体的ビジョン

2008/07/03
環境  コラム

なんとか王子

全地球的な問題に対するシンクタンクであるローマクラブが報告書『成長の限界』を出版したのは1972年のことである。以来、資源枯渇や環境破壊、人口増加問題への対策がさまざまな機会を通じて議論されてきた。1991年には「持続可能な発展のための経済人会議(BCSD)」を組織し、"環境効率"という考え方を提唱、1992年にリオデジャネイロで開催された地球サミットでも取り上げられることとなった。


"環境効率"は「持続可能な発展」のための戦略である。つまり、より少ない天然資源からより多くの利益を生み出すことを目的とし、それにより地球環境にかかる負荷を軽減、同時に新しいビジネスチャンスを作ることができるというものだ。


環境問題を語るとき、企業の社会的責任や将来世代にツケをまわすべきでないといった意見など、企業や個人が高い環境意識を持つことは非常に重要である。とはいえ、個々の倫理観に頼るだけではやはり限界がある。そこには、市場メカニズムを通じた企業活動抜きには考えられない。


その意味で、排出量取引は具体策として実効性が高いといえよう。排出量取引は政府が各企業に排出枠を割当て市場で取引する"キャップ&トレード方式"や、排出枠の分配そのものも市場に委ねる"オークション方式"などがある。これらは排出量の削減が経済的利益に結びつくため、企業は排出量削減に対するインセンティブを持つことになる。


逆に最も避けるべきは、問題が生じるたびに場当たり的な対応に終始することだろう。市場が歪み、効率的な資源配分をも歪める結果になってしまうであろう。


BCSDは環境マネジメントに関する規格をISOに提言し、のちのISO14001につながった。7月7日に始まる北海道洞爺湖サミットでは、環境問題に関する実効力のあるビジョンがまとまることを期待している。

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