大和
日銀による量的金融緩和政策の解除が迫っている。
政府内にも解除容認論が出始めており、早ければ、3月8日、9日に行われる日銀の金融政策決定会合において、緩和解除となる可能性も現実味を帯び始めてきている。
だが、最近の報道を見ると、量的金融緩和の解除に対してあまりに楽観的な見解が多くなっていることに驚かされる。
もちろん、量的緩和の解除により、正常な金融政策への振り戻しや不動産・株式などで起こっているインフレ懸念の台頭を排除することは必要だ。
しかし、報道で目に付く緩和解除の容認論を見ると、解除後の金利動向によっては、景気回復を実感できない多くの企業に多大な悪影響を及ぼす懸念があるということから意識的に目をそむけ、世論に対する解除容認の地ならしを行っているようにさえ感じる。
2006年1月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は、前年同月比+0.5%、4カ月連続でゼロ%以上となっているが、この物価上昇は原油や素材価格の高騰を主因としたものであり、輸入品価格の直接的な影響を排除したGDPデフレーター(2005年度第3四半期:-1.6%)がマイナスであることからも、需要に裏付けられた物価上昇がいまだ浸透していないことがうかがえる。
日銀は、量的緩和の解除後も公約どおり、一定期間はゼロ金利を維持して、景気回復基調の推移を注意深く観察する必要がある。
そして、都市部の大企業を中心とした景気回復が、地方や中小にも波及し、全体的な底上げが進んでいることを確認してから、金利機能の復活を図るべきである。
しかし、景気を底上げしようにも、政府による施策はなにも期待できない状況だ。
早まった金利機能の復活は、疲弊したままの地方経済に追い討ちをかけるようなものであることを、政府・日銀は十分に認識して、今後の政策判断を行っていかなければならない。
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